第112回:南西諸島はすでに戦場なのか?―日米軍事演習キーン・ソード始まる(三上智恵)
By 三上 智恵 2022年11月16日
今月10日から、過去最大規模の日米共同軍事演習「キーン・ソード23」が始まっていることを、いったいどのくらいの日本人が意識できているだろうか? 日米合わせて3万6千人が参加、艦艇約30隻、航空機約270機が投入され、宇宙・サイバー・電磁波作戦も実施する、かつてない臨戦態勢を思わせる大演習だ。
今回は、日米のみならず、カナダ、イギリス、オーストラリアも艦艇や戦闘機を送り込み、共同訓練に初参加している。これだけの国々が「海洋進出をもくろむ中国をけん制する」として沖縄県や鹿児島の島嶼部と近海で中国を威嚇しているのだ。それを受けて、12日には中国海警局の船が領海侵犯したとか、14日には中国の無人偵察機と哨戒機などが沖縄本島と宮古島の間を飛行し自衛隊がスクランブル発信をしたとか、騒々しくニュース速報となり国民を驚かせているようだが、これだけあからさまに中国を敵視した軍事包囲示威行動をこちらがやっているのだから、中国も「舐めるな」と対抗するのは織り込み済みのはずだ。
しかし国民はわかっているだろうか? どちらが先に脅しを始めたのか。今、大演習中と知らずに速報だけ聞けば見誤るだろう。それだけではない。これは南西諸島が「アメリカの中国封じ込め作戦」の舞台となる演習なのだ。今回、沖縄県内では民間の空港や公道を軍用車両が我が物顔で走り、ウクライナで注目を浴びた高機動ロケット砲システム、ハイマースの共同運用も沖縄本島で実施された。与那国島では、初めて米兵が乗り込んで日米共同訓練が行われる。そして島嶼戦争用に開発された、タイヤを履いた戦車「16式機動戦闘車(MCV)」が県内初、与那国島に上陸する予定だ。
まさに、沖縄県の島々はどこも戦場になるんですよ、と言わんばかりの状況に陥っている。今回の「演習」は「訓練」とは違う。演習というのは練習ではない。いざとなったらここで、こんな国々と、こんな軍事力を使いますよ、というフォーメーションを敵国に見せびらかす行為といった方がいい。それを抑止力と解釈し、国防に不可欠と頼もしく思う人もいるだろう。しかし、相手国はどう見るだろうか。少し考えればわかるだろう。これが戦争を防ぐ行為なのか、煽る行為なのか。私たち沖縄で暮らすものから見れば、日本とアメリカが中国・台湾に最も近い私たちの県土に次々にミサイルを置いていく行為が、強力に戦争を呼び込んでいるようにしか見えない。私たちがいることを忘れてミサイル戦争の準備に入ったとしか思えない。もはや辺野古などの「基地負担の増加」というフェーズは超えてしまい、「お願いだから、ここで戦争をするなんて言わないで」と泣いて懇願するような局面にまで進んできてしまった。そのことが、実感を伴って本土の皆さんの所に伝わっているだろうか?(以下略)