造成工事を中断 カンムリワシの営巣活動確認
2020年05月22日八重山毎日新聞
平得大俣での陸上自衛隊配備計画をめぐり、沖縄防衛局は21日、造成現場周辺の山林でカンムリワシの営巣活動を確認したとして20日に工事を中断したと公表した。今後について「いつまで中止するかを含め、現時点で確定的なことは言えない。市や有識者の意見を踏まえながら必要な保全対策を検討したい」としている。20日午後2時ごろまでは、重機による破砕音が確認されていたたため、工事中断はそれ以降とみられる。
防衛局によると、20日の調査で、つがいと思われるペアの雄が特定の場所に出入りし食べ物を運ぶなど営巣活動を、石垣市教育委員会文化財課とともに確認した。具体的場所については、保護を目的に公表していない。
同局は「カンムリワシは、地表に出てきた昆虫類などを餌とする爬虫(はちゅう)類を捕食するために造成工事の範囲内に飛来する可能性がある。このため、造成工事に当たっては、工事関係者に保護対策にかかる教育を徹底し、特に工事車両との接触やロードキルが発生することがないようにするなど、カンムリワシの保全に努めていく」としている。
市教委文化財課は「防衛局が立案した保全策が妥当か、地域のカンムリワシの専門家の意見を踏まえて確認し、協議を行っていく」としている。
カンムリワシをめぐっては、石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会(共同代表・上原秀政氏ら5人)や周辺4地区公民館がことし2月、営巣活動が始まる同月以降、工事の中断を求めていた経緯がある。
於茂登地区在住の農家で、周辺のカンムリワシを見続けている連絡会の嶺井善共同代表は「本来は巣作りが始まる2月の時点で工事を中断すべきだ。カンムリワシなど希少動植物や水の問題など自然環境への影響について公的機関である国がきちんと環境アセスメントをしなければならない。そうでなければ、何か起きたときに誰が責任を負うのか」と批判する。
島内のカンムリワシを調査しているカンムリワシ・リサーチの小林孝代表は「これまで要請を行ってきたが、何の反応もなかったので、今回の工事中断にはありがとうと言いたい。工事中断は、子育てが終わる9月までは継続すべきだ。あそこがカンムリワシなど他の貴重動植物の重要な生息場所となっている」と強調した。