コスタリカはなぜたったの1か月でコロナ患者を半減させられたのか?
ハーバー・ビジネス・オンライン 2020/05/17 08:31
コスタリカの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策が、功を奏しつつある。台湾や韓国、ドイツなどが「成功例」として世界的に紹介される中、この中米の小国は、あまり注目されることもなく、密かにCOVID-19との闘いをうまく導いている。
新規に陽性が確認された数は、この1か月平均で1日あたり10人を切っている。一方で回復者の数は順調に増え、4月18日以降は回復者数が新規感染確認者数を上回っている。つまり、実質的な患者数が減り始めたのだ。
なぜ、コスタリカはCOVID-19を抑え込めているのだろうか
(中略)
「丸腰国家」だからこそ、この危機を乗り越えられるという「愛国心」の発露
コスタリカは、たとえば韓国のように、のべつまくなしに検査をしているのではない。これまでに検査をした人の数は約1万人で、人口の0.2%にすぎない。あくまで「症状が出た人」のみに対して検査をし、無症状者を対象にした検査はしていない。
その他の圧倒的大多数は、ひたすら「ステイホーム&手洗い作戦」である。
それにつけても、観光立国であるコスタリカの経済に対するダメージははかり知れない。仕事を失う人も10万や20万では済まなくなる。すでに休失業補償金の振り込みが始まってはいるが、必要とする人たち全員にはまだまだ行き届いていない。労働者の不満が噴出してもおかしくない。
それでも、外出を控え、仕事がなくなっても乗り越えようとする市民一人ひとりの意識の底には、軍隊を持たないコスタリカ=「丸腰国家」に対する強い愛国心がある。
この災禍を乗り越えることは、「丸腰国家」こそがあるべき社会像であることの「証明」となるからだ。「軍隊をすて、教育や医療、福祉に投資してきたからこそ、このパンデミックも他国より少ない被害で乗り越えられた」というロジックだ。
コスタリカに特徴的なことはまだまだたくさんあり、以上は網羅すべき全体像のほんの一部に過ぎないことを申し添えておきたい。制度面以外の要素を解説する機会があれば、追加的に出稿したい。
また、読者諸賢には言うまでもないかもしれないが、他の国や地域と単純な数字の比較はできないということも、一応申し添えておきたい。そのため、数値的比較考察には立ち入らず、純粋にコスタリカの状況を伝えるにとどめておく。これが、まだわからないことだらけの「コロナ(から派生する)議論」の一助になれば幸いである。
「持続可能国家」コスタリカ 第12回
<文・写真/足立力也>
【足立力也】
コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。