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動画<第2期「島々シンポジウム」馬毛島ー種子島編>
「自衛隊馬毛島基地(仮称)の設置に伴う市民の不安と期待に関する確認事項について(回答)」kaitou.pdf
石垣市国民保護計画(本編)【PDFファイル】 (PDFファイル: 3.5MB)
■【最新パンフ】「STOP!敵地攻撃 大軍拡!~2022年度防衛予算批判」発売中!
【YouTube】『オンライン連続講座Part2第一回/軍事要塞化される奄美・沖縄の島々 与那国島から  猪股哲さん」2022.1.18
【YouTube】2/23シンポジウム「馬毛島問題を県民目線で再検討する」(講演編
■【YouTube】■先行施行まで4ヶ月 見えてきた土地規制法の狙い
2月22日(火)11時~13時 参議院議員会館B109
・政府担当者への市民と野党の共同ヒアリング
・各地・各団体からの発言と立憲野党への要請
■【YouTube】島々シンポジウム第1回~第6回

【Youtube】12/7土地規制法ヒアリングZoom報告会動画
海渡雄一弁護士、仲松正人弁護士、福島みずほ議員、山添拓議員らが問題点を解説。
◎まんが

『自衛隊は敵基地攻撃が可能に!!』
【YouTube】「日本を"死の商人"にしてはいけない!!」パート2

『日本の武器輸出&輸入の実態!!』(約20分)

【YouTube】「日本を"死の商人"にしてはいけない!!」パート1

【YouTube】島々シンポジウム3  奄美-種子島から琉球弧の要塞化を問う!

狙いは住民監視か 強行採決!?土地取引規制法案

 【半田滋の眼 NO.35 】20210615/デモクラシータイムス.
■【YouTube】伊波洋一講演「(沖縄を)再び戦場の島とさせないために」

https://www.youtube.com/watch?v=M9fgzjuo4I4

■PDF「沖縄から伝えたい。米軍基地の話。Q&A Book 令和2年版」

■【Youtube】【沖縄から伝えたい。米軍基地の話。】全6話(沖縄県公式チャンネル)

【第1回動画】

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 【第2回動画】
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【Youtube】木元茂夫が語る「首都圏に広がる軍事基地」

Part「首都圏からも敵地攻撃が!

Part「首都圏に広がる軍事基地」

YouTube伊波洋一さん講演「敵基地攻撃論と沖縄」

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◎【YouTube】 軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢アメリカのアジア戦略と日米軍の「島嶼戦争(part6・10分)

◎【YouTube】 軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢(水陸機動団・陸自の南西諸島動員態勢編・13分・part5

【YouTube】軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢(沖縄本島編・10分・part4)
【YouTube】軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢(part3、奄美大島・馬毛島編16分)

【YouTube】軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢(宮古島編(part2・17分)

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2023/01/22

【政策提言】戦争を回避せよ

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   2022/11/28
            ※PDFはこちら
柳澤 協二 (ND評議員/元内閣官房副長官補)
マイク・モチヅキ(ND評議員/ジョージ・ワシントン大学准教授)
屋良 朝博 (ND評議員/前衆議院議員〈沖縄選出〉)
半田 滋  (防衛ジャーナリスト/元東京新聞論説兼編集委員)
佐道 明広 (中京大学国際学部教授)
猿田 佐世 (ND代表/弁護士〈日本・米ニューヨーク州〉)

========= 提言 =========
● 安全保障政策の目標は、戦禍から国民を守ること、即ち、戦争回避でなければならない。抑止力強化一辺倒の政策で本当に戦争を防ぎ、国民を守ることができるのか。
 軍事力による抑止は、相手の対抗策を招き、無限の軍拡競争をもたらすとともに、抑止が破たんすれば、増強した対抗手段によって、より破滅的結果をもたらすことになる。抑止の論理にのみ拘泥する発想からの転換が求められる。
 戦争を確実に防ぐためには、「抑止(deterrence)」とともに、相手が「戦争してでも守るべき利益」を脅かさないことによって戦争の動機をなくす「安心供与(reassurance)」が不可欠である。

● 台湾有事にいかに対処するかは、戦争に巻き込まれるか、日米同盟を破綻させるかという究極の選択を迫る難題である。それゆえ、台湾有事を回避するために、今から、展望を持った外交を展開しておかなければならない。
 例えば、米国に対しては、過度の対立姿勢をいさめるべく、米軍の日本からの直接出撃が事前協議の対象であることを梃子として、台湾有事には必ずしも「YES」ではないことを伝えることができる。台湾に対しては、民間レベルの交流を維持しながら、過度な分離独立の姿勢をとらないよう説得することができる。中国に対しては、台湾への安易な武力行使に対しては国際的な反発が中国を窮地に追い込むことを諭し、軍事面では米国を支援せざるを得ない立場にあることを伝えながら、他方で台湾の一方的な独立の動きは支持しないことを明確に示すことで、自制を求めることができる。また、日本は立場を共にする韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)を含む多くの東アジア諸国と連携して、戦争を避けなければならないという国際世論を強固にすることもできる。
 台湾有事は、避けられない定められた運命ではない。日本有事に発展するかどうかも、日本の選択にかかっている。回避する道のりがいかに困難であっても、耐えがたい戦争を受け入れる困難さは外交による問題解決の困難を上回る。政治は、最後まで外交を諦めてはならない。

● 「抑止」としても「対処」としても、必要な条件を満たさず、戦争拡大の契機ともなる敵基地攻撃を、政策として宣言するのは愚策である。

● 政治は、戦争を望まなくとも、戦争の被害を予測し、それを国民と共有するべきである。それは、防衛のための戦争であっても、戦争を決断する政治の最低限の説明責任であり、それなしに国民に政治の選択を支持させるのは、国民に対する欺罔行為である。

======================

■ 戦争の危機の時代における政治の課題
戦後日本は、70年以上にわたり、戦禍に巻き込まれることがなかった。その背景には、米ソ両大国間の安定的な相互抑止関係が存在したこと、および、日米同盟の下にありながらも日本国憲法のもとで抑制的な防衛姿勢を維持し、米軍の行動と一線を画してきたことがあった。結果として、ミサイルが日本に着弾することなく、また、海外に派遣された自衛隊が一発の弾を撃つこともなく、一人の戦死者もなく今日に至っている。

今日、米ロ、米中という大国の間に安定的な相互抑止関係があるとは言い難い。今年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻に加え、台湾海峡における軍事的緊張の高まり、北朝鮮によるたび重なるミサイル発射は、日本国民のなかに戦争の不安を増大させている。その状況を受け、政府は、日米同盟による抑止力の強化、敵基地攻撃能力の保有を含む防衛力の大幅な増強を目指すとともに、2015年の安全保障関連法に基づく日米の軍事的な一体化を加速させている。

一方、連日報道されるウクライナの状況は、始まった戦争を終結させることが困難であること、ミサイルから安全な場所はなく、民間人の犠牲を防げないことを示している。台湾有事が起きれば、沖縄を含む日本の各地域で同じことが起きる。戦争は回避しなければならない。これが、ウクライナ戦争の最大の教訓である。

防衛政策の目標は、何よりもまず、戦禍から国民を守ることである。抑止力強化一辺倒の政策で本当に戦争を防ぎ、国民を守ることができるのか。その代替策を含め、いかにして戦争を回避するかを活発に論じることこそ政治の使命であり、政治の対抗軸であるべきである。

同時に、国連安保理常任理事国であるロシアによる侵略行為は、戦後国際秩序をかろうじて支えてきた国連そのものの危機でもある。このままでは、世界は再びルールなき戦争の時代になってしまう。

国際社会は、戦争を契機としながら戦争を規制する国際システムを模索してきた。それを維持するために必要なのは、世界を滅亡に導きかねない戦争を避けることである。そのためには自国の利益より共通の秩序を優先する大国の自制が欠かせない。自制が失われたところに、ロシアのウクライナ侵攻があった。そして今、中国について、同じ懸念が生じている。

日本は二つの大きな課題に直面することになった。一つは、台湾有事という目前にある米中の戦争の危機をいかに防ぐかという課題であり、もう一つは、国連をはじめとする世界秩序をどう再構築するかという課題である。

日本の安全保障をめぐる論議は、もっぱら同盟と抑止力の強化に焦点を当てている。その背景には、日米の抑止によって、日本を脅かす戦争が防がれてきたという成功体験がある。だが、大国間の相互抑止が安定していない今日、軍事力だけでは戦争の恐怖から逃れることはできない。同盟国から見捨てられるか、同盟国の戦争に巻き込まれるかという「同盟のジレンマ」が顕在化する。

ロシアのウクライナ侵攻に際して、米国はウクライナへの米軍派遣を否定したが、それは、米国がロシアと直接衝突すれば、世界戦争になるという懸念があるからである。大国を抑止するためには大国間の戦争を覚悟しなければならず、また大国間の戦争を避けようとすれば大国の暴走を止められない。これが、ウクライナ戦争が突き付けた抑止の現実である。我々は、大国の武力行使も、世界戦争も、選択することはできない。

戦争回避が日本の安全保障政策の目標でなければならない。そのためには、抑止の論理にのみ拘泥する発想からの転換が求められる。

残念ながら国会やメディア報道における議論は、「敵基地攻撃の要件をどうするか」といった技術論に終始している。日本が内向きの理屈で自問自答しても、軍事的な能力には限界があり、米中の大国間戦争を止める力にはなり得ない。

岸田文雄首相は、2021年の自民党総裁選挙に当たって、「まずは外交努力をするが、有事となれば平和安全法制(安全保障関連法)に従って対応する。」旨述べた。そこには、「何としても有事にしない」という強い信念は見えない。

「外交には一定の力の裏付けが必要だ」という主張もある。この点、まずは、日本の自衛隊が、既に世界有数の軍事力をもつ存在となっていることを忘れてはならない。さらには、外交の目標とは何であるのか。相手を説得することであるなら、必要な力は強制手段としての軍事力だけではなく、国際世論と協調した道義的な説得力や、日本の善意と魅力を伝えるソフト・パワーが必要となるはずだが、今、外交の目標とそれに見合う力をどう調和させるかの議論は行われていない。

政治が考えるべきことは、米中の軍事衝突をどのように防ぐか、そして、安定した国際秩序をいかに構築するか、そのために日本に何ができるのかという問いかけに答えることである。我々は、まずこのことを、与野党を問わず、日本の政治に求めたい。

■ 台湾有事に巻き込まれるか、回避するか
戦争は、ウクライナ侵攻におけるロシアがそうであったように、楽観的見通しによって始まる。それゆえ、勝利を楽観視させないための防衛の意思と能力は必要である。同時に、戦争は、他の手段では目的を達成できないという「外交への悲観」によっても始まる。それゆえ、戦争を防ぐためには、外交による解決の余地を残す政治的柔軟性が必要となる。

抑止とは、戦争を企図する者に対して、戦争による利益を上回る損害、あるいは、耐え難い損害を被ることを認識させて、思いとどまらせることである。抑止のためには、相手がこちらの反撃の能力と意思を疑わず、手痛い損害を被ることを確信する必要がある。だが、そこには多くの誤算や認識の齟齬が生まれる。

相手は、こちらの意思を軽視するかもしれない。あるいは、損害を過小に見積もるかもしれない。さらに、「いかなる反撃を受けても断じて譲歩できない」と考えるかもしれない。これらは、ロシアがウクライナ侵攻で示した侵略する側の心理である。

反撃を図ろうとする側も、どの程度の武力を加えれば相手が侵攻を断念するか、正確には理解できない。そこで、反撃力が大きいほどよいと考える。その究極には、核兵器がある。一方、反撃が大きいほど、相手の再反撃も大きくなる。やがて武力によって抑止しようとする側も、大きな損害を覚悟しなければならなくなる。

大国を抑止するには世界戦争を覚悟しなければならない。それは、ロシアだけではなく中国についても同じである。

今日、台湾をめぐる米中の対立は、民主主義対専制主義というイデオロギー対立の焦点となっており、双方が判断を誤れば取り返しのつかない戦争に至るおそれがある。米軍の前線拠点である日本が米国に加担すれば、中国との戦争に巻き込まれる。一方、米国に加担せず、中立の姿勢をとれば日米同盟は崩壊する。台湾有事にいかに対処するかは、「安全保障関連法に従って対応すればよい」という単純な問題ではなく、戦争に巻き込まれるか、日米同盟を破綻させるかという究極の選択を迫る難題である。

それゆえ、戦争を回避し、戦争の危機があれば早期に収拾するために、今から、展望を持った外交を展開しておかなければならないのである。

軍事力による抑止は、相手の対抗策を招き、無限の軍拡競争をもたらすとともに、抑止が破たんすれば、増強した対抗手段によって、より破滅的結果をもたらすことになる。

戦争を確実に防ぐためには、「抑止(deterrence)」とともに、相手が「戦争してでも守るべき利益」を脅かさないことによって戦争の動機をなくす「安心供与(reassurance)」が不可欠である。しかし、日本においては、専ら抑止の観点からのみ安全保障を論じる傾向が強く、安心供与の概念はほとんど認識されていない。

安心供与は、一方的に譲歩することではない。和解が困難な相手であればあるほど、互いに譲れない最低限の要求を認識し、それを両立させる道筋を見出すことである。それは、過大な要求を相互に排除し、利害対立の緩衝領域を確保する外交のアートである。そこには、抑止と同様、誤算や齟齬が存在する余地があり、長引く不快な交渉も余儀なくされるだろう。それを支えるものは、戦争を回避する強固な意志である。

70年を超えて日本が戦争に巻き込まれなかった時代の条件が大きく変化している今日、外交本来の力が試されている。政治は、軍事力に頼った抑止にのみ目を奪われることなく、戦争を回避するための外交を展開しなければならない。

■ 台湾を次のウクライナにしないために
米国は、ウクライナに大規模な武器支援を行い、ロシアの戦争プランを誤算に導いている。仮にロシアがこれを予測していれば、2月の侵攻はなかったかもしれない。だがそれは後になって初めてわかる予測困難な産物である。一方、中国は、これを予測できる。それゆえ、台湾への武力行使には慎重になるとともに、米国の武器支援に対抗する手段を周到に準備するだろう。本年8月の台湾を包囲する軍事演習は、米国からの支援を阻止する能力を示すものであった。

安心供与の観点から言えば、NATOの拡大や兵力配備について交渉の余地はあったとしても、ウクライナの全土又は一部を支配下に置くというロシアの主張は、国家主権の原則に反し、安心供与を読み取る余地はまったくない。

他方、「台湾が中国の一部である」という中国の主張は、米中・日中の国交樹立時の共同声明にも示され、これまで、国際的に否定されたことはなかった。問題は、中国が武力による統一に踏み切るかどうかということにある。

中国は、「外国の干渉や台湾独立勢力に対する武力行使を放棄しない」と言っている。米国は、「中国の武力行使を容認せず、台湾防衛を支援する」との立場である。台湾の立場は、「中国本土との統一を望まないが、戦争につながる独立宣言をしようとは思わない」というところに集約できるだろう。三者は、それぞれ異なった思惑を持ちつつも、「現状維持」を最低限の目標としている。同時に、いずれの当事者も、戦争を望んでいない。

他方、2019年の中国による香港弾圧を経た結果、台湾では「一国二制度」への共感が失われ、分離を志向する傾向が強まっている。米国も、「一つの中国」政策を維持すると言いつつ、「台湾関係法」による台湾防衛を重視する傾向を強め、かつてのように台湾の分離思考をいさめることはしない。こうした米台の姿勢が、中国の不満を煽っている。こうして、中台の思惑の違いが明白となり、そこにイデオロギーによる米中の覇権争いが重なって、政治的な妥協を難しくし、戦争の要因を高めている。

ロシアのウクライナ侵攻では、日本は当事者になっていないが、地理的に近い台湾有事は別である。まず、日本は戦争となれば最も影響を受ける国であり、そして、日本は米中双方と緊密な関係があり、双方と対話できる立場にあるからである。その日本が、台湾有事の回避のために何もしないという選択肢はない。だが、そのための日本独自の外交戦略が見えないことが問題である。

例えば、米国に対しては、過度の対立姿勢をいさめるべく、米軍の日本からの直接出撃が事前協議の対象であることを梃子として、台湾有事には必ずしも「YES」ではないことを伝えることができる。台湾に対しては、民間レベルの交流を維持しながら、過度な分離独立の姿勢をとらないよう説得することができる。中国に対しては、台湾への安易な武力行使に対しては国際的な反発が中国を窮地に追い込むことを諭し、軍事面では米国を支援せざるを得ない立場にあることを伝えながら、他方で台湾の一方的な独立の動きは支持しないことを明確に示すことで、自制を求めることができる。これらは、日本の率直な立場の表明であり、それなりの信憑性をもって受け止められるだろう。その立場は、韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)を含む多くの東アジア諸国の立場と共通している。日本は、これらの諸国と連携して、戦争を避けなければならないという国際世論を強固にすることができる。

台湾有事は、避けられない定められた運命ではない。日本有事に発展するかどうかも、日本の選択にかかっている。回避する道のりがいかに困難であっても、耐えがたい戦争を受け入れる困難さは外交による問題解決の困難を上回る。政治は、最後まで外交を諦めてはならない。

また、こうした外交のプロセスは、その成否にかかわらず、大国の戦争を規制する新たな国際的ルール作りのモデルとして、歴史的な意義を持つことになるだろう。

■ 「敵基地攻撃論」における政治の役割
日本政府は、抑止力と対処力の強化のため「敵基地攻撃能力」を始めとする防衛力の抜本的強化の方針を打ち出している。それにより戦争を抑止し、場合によっては軍事力を行使する、という論理である。

敵基地攻撃が抑止として機能するためには、相手が攻撃による目的を達成できないと認識するほどの損害を与える必要がある。相手が中国であれば、沿岸部の数か所の基地を攻撃するだけでは不十分で、内陸部にある基地や堅固に防護された司令部を含め、致命的なダメージを与えなければならない。日本がそれだけの能力を持てると考えるのは、現実的ではない。

そこで、足らざるところは米国が補ってくれるという前提で、日本の反撃能力が限定的でも抑止に役立つ、という論理がある。だが、米国が参戦すれば、世界戦争になるリスクは否定できない。

飛来するミサイルから防御する観点で言えば、ミサイル基地を破壊すれば、発射されるはずであったミサイルを防ぐ効果はあるだろう。だが、すべてのミサイル施設を破壊することは不可能であり、必ずミサイルによる報復がある。最も重要なことは、自衛隊や在日米軍基地と基地周辺の民間人を相手の再反撃から守ることである。だが、被害局限や住民保護については語られていない。

また、敵基地攻撃とは、敵基地がある相手国本土を攻撃することである。相手もこちらの本土に報復して戦争が拡大する。こちらの被害も拡大し、早期終結を困難にする。

軍事技術の進展を考えれば、自衛隊がスタンドオフ防衛能力を持つことを否定するのは困難だろう。だからこそ、その運用には慎重でなければならない。「抑止」としても「対処」としても、必要な条件を満たさず、戦争拡大の契機ともなる敵基地攻撃を、政策として宣言するのは愚策である。こうした政策を持つことで防御を楽観視し、かえって戦争回避のための外交がなおざりになることが懸念される。

政治は、独りよがりの抑止論に終始すべきではない。自国の政策がかえって相手との対話を困難にすることがないよう、外交戦略のなかでの防衛の役割を考えなければならない。

■ 日本に欠けている戦争のリアリティー
台湾周辺の軍事的緊張の高まりは、沖縄に強い危機感をもたらしている。武力衝突があれば、最前線になる沖縄が耐えがたい犠牲を被ることになる。

戦争においては、前線のミサイル部隊などが優先的な標的となる。自衛隊がミサイル部隊を配備する石垣島などの離島では、有事に住民を避難させるシェルター建設が取り沙汰されている。だが、米軍や自衛隊の拠点という意味では、嘉手納や普天間基地がある沖縄本島も同様であり、戦争が拡大すれば、三沢、横田、横須賀、岩国、佐世保などの基地がある本土も例外ではない。基地が真っ先に攻撃されるのは戦争の常識であり、ミサイルの標的となるリスクは、沖縄だけの問題ではないのである。

戦争に備えるのであれば、日本中にシェルターを作らなければならない。それは、現実的な施策と言えるのだろうか。今日のミサイル技術の趨勢を踏まえれば、発射の兆候はもとより、飛翔経路を把握することも困難である。どの地域を対象に、いつ避難するかを正しく決定することは不可能に近い。長期にわたって住民を避難させれば、経済は崩壊する。

問題の本質は、こうした弥縫策で国民の命を守れるのか、ということである。国民の命を守るためには、戦争そのものを回避しなければならない。

戦争となれば、海外に資源を依存する日本において、国民生活が成り立たなくなることは自明である。まして最大の貿易相手国の中国であれば、戦争前から、日本の交易路を妨害する能力があり、レア・アースなどの輸出禁止や日米企業の資産を凍結するなど、多彩な強制手段を持っている。こうした経済的影響が論じられることがないのは、政治の怠慢というほかない。

総じて言えば、日本の安全保障論議は、戦争のリアリティーに基づいていない。戦争は、彼我の相互作用であり、犠牲のない戦争はあり得ない。様々な戦争シミュレーションも行われているが、軍事的な作戦を主なテーマとし、外交的な危機管理をテーマとしていない。また、その取り組みがまじめであればあるほど、「国民保護の壁」にぶつかっている。

政治は、戦争を望まなくとも戦争の被害を予測し、それを国民と共有するべきである。それは、防衛のための戦争であっても、戦争を決断する政治の最低限の説明責任であり、それなしに国民に政治の選択を支持させるのは、国民に対する欺罔行為である。

防衛政策の目標は、何よりもまず、戦禍から国民を守ることである。大国間の抗争が世界を不安定化させるなかで、1発のミサイルの着弾もなく、一人の戦死者もなかった状態を維持することは、容易ではない。大国間の戦争を防がなければ、国民の安全を維持することはできないからである。

「大国間戦争の回避」というテーマは、日本が一貫して考えてこなかった課題であり、「大国に依存する抑止」という思考の枠のなかでは、答えがない課題でもある。その意味で、日本の安全保障は大きな転換点にある。

政治の使命である「国民を守る」という原点に立ち返り、戦争を回避するため日本が何をすべきか、してはならないかを論じなければならない。

14:14 | 投票する | 投票数(0) | コメント(0) | 連絡事項
2023/01/04

玉城デニー知事に聞いた 自衛隊増強をどう見る? 辺野古の新基地...

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   2023年1月1日 10:24沖縄タイムス

 玉城デニー知事は1日までに、報道各社のインタビューに応じた。台湾有事を念頭に、南西諸島で進められている自衛隊の防衛力強化に「県民の不安が募っている」と懸念を示した。一方、東アジアの緊張緩和に向け、知事が台湾や中国などを訪問する「自治体外交」へも意欲を示し、経済振興のために引き続きアジアのダイナミズムを取り込む政策に取り組む考えを強調した。

 -米軍基地に加え、台湾有事を念頭に南西諸島で自衛隊強化が進んでいる。

 「日米安保体制は東アジアの平和と安定の維持に一定寄与してきた。ただ、戦後77年、日本復帰50年を経ても依然として沖縄に国内の米軍専用施設の約70%が存在する状況は異常としか言えない。大多数の国民が日本の安全保障が大切と考えるなら、当然、負担も全国で分担するのが筋だ」

 「自衛隊に関しては、多くの県民は離島の急患搬送や不発弾処理などの活動に理解を示している。しかし、米軍基地の整理・縮小が進まない中、自衛隊の配備増強が重なることには多くの県民が不安を抱かざるを得ない。さらに自衛隊を増強するのであれば、まずは国政の場でしっかり議論することが重要だ」

 -アジア諸国と歴史的に関係を築いてきた沖縄が取り得る衝突回避に向けた動きは。

 「沖縄県は琉球王国時代から600年以上にわたり地域間交流を続けてきた。沖縄から交流を促進し地域間の信頼醸成や緊張緩和に貢献したい。新型コロナの感染状況を注視しながら中国や台湾、韓国をぜひ訪問したい。(以下略)


15:44 | 投票する | 投票数(0) | コメント(0) | ニュース
2022/12/30

【動画】ミサイルを買っても日本の安全性は高まらない/田岡俊次さん

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ゲストの田岡俊次さんは、「トマホークを買えば日本は安全になる」と思っているとしたら大きな間違いだと指摘。中国に対する安全保障という意味では、中国のほうが軍事力でも経済力でも上なのだから長期戦で勝ち目はないうえ、そもそも核保有国に対してトマホークが抑止力になると思うのは「砲撃戦にピストル持って参加するようなもの」であり、話にならないと解説しました。


11:25 | 投票する | 投票数(0) | コメント(0) | ニュース
2022/12/29

<報告>中国のシンクタンクとのズーム会議

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***************
中国のシンクタンクとのズーム会議で、発議者を務めました。
 現在の国際情勢を念頭に軍事外交を使った緊張緩和策を提案しました。米国を中心に中国軍も積極参加している多国間訓練で、人道支援、災害救援訓練の分野でさらに軍事交流を拡充していくこと。そしてその連絡調整機関(国連機関でも)を沖縄に置こう、と提案しました。
 すると日中双方の識者から「平和主義者」「理想主義者」と指摘されました。
 現状はあまりにも厳しいので、”理想主義”であることをむしろ誉め言葉と受け止めます、と伝えて、「現実主義的な解決策はどのようなものか教えてください」と返したのですが、具体的な答えはありませんでした。
 私は、ペロシ米下院議長の訪台は品がなく、中国側のミサイル発射もまた品がない、見られ方も大事だ、と指摘しました。しかし、中国の識者から、台湾問題で強く主張することは正しい、とミサイル発射を正当化する意見が出たのは驚きでした。
 おそらくこれから米議員らの訪台は増えるだろうし、日本の政治家も流行を追いかけるかのように台湾へ向かうかもしれません。どうなることやら。
 感情論を排除した現実的な対応は、あなたは戦争できると思いますか、という問い掛けの中からひねり出せるのではないでしょうか。すべてを失う戦争なんてできっこないし、回避するための知恵を出し合うしかない、というのが唯一の答えのはずです。
 敵基地攻撃能力のチキンレースに日本国民は増税で付き合わされます。この物価高で増税です。ミサイルの足を長くすることがどのような効果を生むのでしょうか。中国にもタカ派がおり、反発を招きます。
 ミサイル配備先の沖縄はたまったもんじゃない。こんな現実なんてうんざりです。

10:37 | 投票する | 投票数(0) | コメント(0) | 報告事項
2022/12/21

<琉球新報社説>安保関連3文書決定 「戦争する国」を拒否する

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  2022年12月17日 05:00琉球新報

 政府は外交・安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」など新たな安保関連3文書を閣議決定した。

 戦後堅持してきた憲法9条に基づく専守防衛から逸脱し、日本が自ら戦争をする国に変貌する決定である。戦後の安保政策を大転換させるにもかかわらず、国会での議論を経ずして閣議決定という手法で決定することは断じて容認できない。
 3文書は、他国領域のミサイル基地などを破壊する敵基地攻撃能力の保有や、長射程ミサイルの増強を明記した。
 政府答弁書(2020年10月)によると「専守防衛」とは「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうもの」と説明し、政府として、「我が国の防衛の基本的な方針である『専守防衛』を維持することに変わりはない」としている。この答弁書からすると敵基地攻撃能力の保持は「専守防衛」を根本から覆す。
 外交・安全保障に関する自民党の提言には、敵基地攻撃能力の保有を求めた上で、攻撃目標として「指揮統制機能等」が含まれている。
 1956年に船田中防衛庁長官は鳩山一郎首相の答弁を代読し「他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれる」との見解を示した。
 しばしばこの部分が取り上げられるが、後段で「侵略国の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らないだろう」と答弁している。「指揮統制機能」への攻撃などは政府答弁の「防衛上便宜である」との考え方であり、政府が説明する「自衛の範囲に入らない」と解釈すべきではないか。
 さらに「他に手段がない」という政府答弁も重要だ。これまで米軍は「矛」で自衛隊は「盾」という役割分担があった。日米同盟を強化している今、「他に手段がない」状態とは言えないだろう。
 3文書では、防衛費とそれを補完する取り組みを合わせた予算水準について、国内総生産(GDP)比2%を目指すと掲げた。財源として法人、所得、たばこ税を増税して防衛費を確保していく方針だ。加えて建設国債の発行による借金で将来世代に負担を先送りまでして軍備を拡大することは許されない。
 台湾有事を口実にして、国会審議も地元自治体・住民への説明もほとんどないまま、南西諸島の軍事要塞化がどんどん進んでいる。米中対立で偶発的な衝突が起きれば、沖縄が再び戦場になりかねない。
 繰り返し主張してきたように、武力に頼らず外交努力で緊張を緩和すべきだ。

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2022/12/16

「相手を脅して抑止するのは幻想だ」 遠藤乾・東大大学院教授

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    2022年12月15日 06時00分東京新聞

<安保政策大転換 私はこう考える>
 日本は隣接する中国、ロシア、北朝鮮が核保有国で非友好的な関係にある上に、独裁国家で現状に不満を持っている点も共通し、厳しい安保環境に直面している。今後10年ほどは日本も軍備拡張をしなければならない局面だ。だが、日本政府が検討する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有は不要だと思う。相手に攻撃を思いとどまらせる抑止として機能するか、怪しいからだ。
 抑止はもともと核兵器とともに練り上げられた概念で、基本的に耐え難い苦痛を与える能力を持ち脅し、相手がそれを脅威と認識しないと成り立たない。相手基地の滑走路に撃っても1日で修復されるような被害しか与えられない通常弾頭のミサイルを仮に1000発持っても、中国のような核保有国が脅しと感じるだろうか。移動式ミサイルを正確に破壊するのも難しい。抑止ではなく制空権の確保の時間稼ぎになる程度だろう。
 逆効果を生む恐れもある。いくら日本が反撃専用で先制攻撃をしないと言っても、相手は信用しない。攻撃力を持てば、相手はそれを上回る攻撃力を持つエスカレーション(事態の深刻化)の階段を上り、際限のない軍拡を誘発する。相手を脅して抑止するというのは幻想だ。
 限られた資源は反撃能力より、抑止が破られて攻撃されてもはね返す能力の強化に充てるべきだ。中国が尖閣諸島(沖縄県)などに侵略してきても、手痛い打撃を与え、拒否できる体制を整えたい。陸上自衛隊などを大幅に再編して水陸両用部隊などを拡充し、最前線で迎え撃つ米海兵隊との連動性を高めて南西方面の防衛強化を図るべきだ。核シェルターなど人命を救える整備も一案だ。
 ロシアの侵略に抵抗しているウクライナが世界的に同情されて武器供与などを受けているのは、おおむね自国領土内で防衛しているからだ。日本も戦後、他国を攻撃しないという専守防衛で培った世界的な信用資源がある。その延長線上で防衛体制を強化する方策があるのに、反撃能力を持って自らその信用資源をかなぐり捨てる必要はない。 
(聞き手・川田篤志)
 えんどう・けん 専門は国際政治、安全保障、欧州連合(EU)。2022年より現職。北海道大教授などを歴任。今年7月、国家安保戦略などの改定に向けた政府の有識者会合に出席。東京都出身。オックスフォード大政治学博士号取得。56歳。

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2022/12/03

(朝日新聞社説)「敵基地攻撃」合意へ 専守防衛の空洞化は許せぬ

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   2022年12月2日 5時00分朝日新聞

 他国の領土に届く「敵基地攻撃能力」を持つことは、専守防衛を旨としてきた日本の防衛政策の大転換である。

 相手に攻撃を思いとどまらせる「抑止力」になる確かな保証はなく、軍事力による対抗措置を招いて、かえって地域の緊張を高めるリスクもある。

 先の戦争への反省を踏まえ、日本自身が脅威にはならないと堅持してきた方針を空洞化させることが、賢明だとは思えない。国民への説明も決定的に不足しており、このまま拙速に結論を出すことは許されない。

 ■歯止め策は示されず

 自民、公明両党がきょう、敵基地攻撃能力の保有について、正式に合意する。政府が年内に改定する安保関連3文書に明記される。

 名称は「反撃能力」だが、攻撃を受けた際の反攻に使われるだけではない。敵が攻撃に「着手」したと認定すれば使用可能だとされる。ただ、その見極めは難しく、国際法違反の先制攻撃になりかねない。

 与党合意では、着手とみなす基準は示されず、「個別具体的に判断する」という。攻撃対象も「個別具体的に判断する」。自民党が政府に提言した「指揮統制機能」は挙げられなかったものの、軍事目標に限る考えも示されていない。これではとても歯止めにはならない。

 日本に対するものだけでなく、日本と密接な関係にある他国への攻撃も、反撃対象となりうる。安倍政権下で成立した安保法制に基づき、日本の存立が脅かされる「存立危機事態」と認定された場合だ。安保条約を結ぶ米国が想定される。

 そもそも日米同盟は、守りに徹する自衛隊が「盾」、打撃力を持つ米軍が「矛」という役割分担できた。自衛隊が矛の一端を担うことで、その関係に変化はないのか。日本が攻撃的な役割を強めることは、専守防衛から一層遠ざかることになる。(以下略)


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2022/11/23

沖縄タイムス社説[日米統合演習]いつか来た道を恐れよ

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2022年11月19日 05:00沖縄タイムス
 南西諸島を主な舞台に10日から始まった日米共同統合演習「キーン・ソード」は、きょう19日で日程を終える。
 演習期間中、沖縄の自衛隊・米軍基地だけでなく、中城湾港や与那国空港など民間の港湾施設・空港も使用され、大量の車両や物資が運び込まれた。
 台湾に近い与那国では、105ミリ砲を搭載する自衛隊の16式機動戦闘車(MCV)が日常生活に欠かせない公道を走り抜け、陸上自衛隊与那国駐屯地に入った。
 物資が次々に運び込まれ軍用車両が行き交う様は、沖縄戦を思い起こさせるものがあり、島が戦場化する不安をかき立てずにはおかない。
 この数年、目立つのは南西諸島のミサイル要塞(ようさい)化だ。
 中国の海洋進出に対抗する形で自衛隊は、南西諸島の島々に地対艦ミサイル部隊を配置し、要塞化を進めてきた。
 今回の演習でも、有事を想定した地対艦ミサイルの展開訓練が行われている。
 日米統合演習が、中国の海洋進出を念頭に、南西諸島を舞台にして、このような規模とこのような形態で実施されるのは、復帰後初めてではないか。
 南西諸島の軍事要塞化と日米の一体化は急速に進みつつあり、沖縄の基地問題の性格を根本から変えるような動きだとみなければならない。
 懸念されるのは、「台湾有事」を巡って日本社会の空気が一段と強硬になり、中国の脅威に対抗するため基地の機能強化を当然視する世論が広がることだ。
■    ■
 今回の日米統合演習を通して浮かび上がってきた根本的な疑問は、いざというとき、住民(非戦闘員)をどのようにして避難させ、あるいは救出するか、という点である。
 在韓米軍は、朝鮮半島有事を想定し、韓国在住の米国民などを対象にした「非戦闘員避難救出作戦」(NEO)の訓練を行っている。
 国民保護法に基づいて県は、沖縄県国民保護計画を策定している。取り組み方針で強調されているのは、「悲惨な地上戦の経験」や「島しょ県」「米軍基地の集中」などの特殊性を抱えていることである。
 住民の命を守るために、いつの時点で、どういう手段で、どこに避難させるつもりか。
 ミサイル要塞化は、有事の際、相手国からのミサイル基地攻撃を誘発する可能性が高い。
 そもそも台湾有事とはどのような事態なのか、それもあいまいなままだ。
■    ■
 日韓、米中、日中首脳会談が相次いで行われた。
 お互いの主張のどこに違いがあるか。相いれない点は何か。共通に取り組める問題は何か。
 首脳同士が対面で話し合い、共通の利益を模索するのは重要だ。対立をエスカレートさせない外交にこそ期待したい。
 「敵基地攻撃能力」に関する十分な議論もないまま、現実には地対艦ミサイルの射程を大幅に伸ばす計画が進みつつあり、専守防衛は風前のともしびだ。そのような事態こそ危うい。

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2022/09/16

新和訳「ラッセル=アインシュタイン宣言」

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     <新和訳「ラッセル=アインシュタイン宣言」.pdf>日本パグウォッシュ会議
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ラッセル=アインシュタイン宣言

 1955年7月9日 ロンドン

人類に立ちはだかる悲劇的な状況を前に、私たちは、大量破壊兵器の開発の結果として生じている様々な危険を評価し、末尾に付記した草案の精神に則って決議案を討議するために、科学者が会議に集うべきだと感じています。

私たちは今この機会に、特定の国や大陸、信条の一員としてではなく、存続が危ぶまれている人類、ヒトという種の一員として語っています。世界は紛争に満ちています。そして、小規模の紛争すべてに暗い影を落としているのが、共産主義と反共産主義との巨大な闘いです。

政治的意識の強い人のほとんど誰もが、こうした問題に思い入れがあります。しかし、できればそうした思い入れを脇に置き、自分自身のことを、こう考えてほしいのです。すばらしい歴史を持ち、その消滅を望む者などいるはずもない、そんな生物学上の種の成員以外のなにものでもないと。

私たちは、ある集団に対して別の集団に対するよりも強く訴えかけるような言葉を、一切使わないようにしたいと思います。すべての人が等しく危険にさらされています。そして、その危険の意味が理解されれば、それを共に回避する望みがあります。

私たちは新しい考え方を身につけなければなりません。私たちが自らに問うべきは、自分が好ましいと思う集団を軍事的勝利に導くためにいかなる手段をとるべきか、ということではありません。そのような手段はもはや存在しないからです。私たちが自らに問うべき問題は、すべての当事者に悲惨な結末をもたらすに違いない軍事的な争いを防ぐためにいかなる手段を講じることができるのか、ということです。

一般の人々だけでなく、権威ある地位にいる多くの人たちでさえ、核兵器が使われる戦争で何が起こるのかを理解していません。一般の人々は今なお、諸都市の消滅という次元で考えています。新型爆弾は旧型爆弾よりも強力であり、原子爆弾が1発で広島を完全に破壊できたのに対し、水素爆弾ならば1発でロンドンやニューヨーク、モスクワのような世界最大級の都市を跡形なく消し去ってしまう、ということは理解されています。

水爆戦争になれば諸々の大都市が消滅することに疑いの余地はありません。しかしながら、これは、私たちが直面しなければならない小さな惨事のひとつにすぎないのです。もしロンドンやニューヨーク、モスクワのすべての人が滅亡したとしても、数世紀のうちに、世界はその打撃から回復できるかもしれません。しかし、今や私たちは、とりわけビキニ実験以来、それ以前に想定されていた以上にはるかに広範囲にわたって、核爆弾による破壊がじわじわと広がっていくことを知っています。

非常に信頼できる確かな筋は、今では広島を破壊した爆弾の2500倍も強力な爆弾を製造できると述べています。そのような爆弾が地上近く、あるいは水中で爆発すれば、放射能を帯びた粒子が上空へ吹き上げられます。これらの粒子は死の灰や雨といった形でしだいに落下し、地表に達します。日本の漁船員と彼らの魚獲物を汚染したのは、この灰でした。

死を招くそのような放射能を帯びた粒子がどれくらい広範に拡散するかは誰にもわかりません。しかし、水爆を使った戦争は人類を絶滅させてしまう可能性が大いにあるという点で最も権威ある人々は一致しています。もし多数の水爆が使用されれば、全世界的な死が訪れるでしょう――瞬間的に死を迎えるのは少数に過ぎず、大多数の人々は、病いと肉体の崩壊という緩慢な拷問を経て、苦しみながら死んでいくことになります。

著名な科学者たちや軍事戦略の権威たちが多くの警告を発してきました。その誰も最悪の結果が確実に起こるとは言わないでしょう。そうした人々が言っているのは、その可能性があるということであり、それが現実のものとはならないと確信できる人は誰ひとりいません。この問題に関する専門家の見解が専門家各自の政治的見解や偏見に左右されるのを、私たちはまだ見たことがありません。私たちの調査で明らかになった限りにおいて、専門家の見解は、専門家各自が有する知識の範囲のみに基づいています。最もよく知る人が最も暗い見通しをもっていることもわかっています。

ここで私たちからあなたたちに問題を提起します。それは、きびしく、恐ろしく、そして避けることができない問題です――私たちが人類を滅亡させますか、それとも人類が戦争を放棄しますか1。人々は、この二者択一に向き合おうとしないでしょう。戦争の廃絶はあまりにも難しいからです。

戦争の廃絶には、国家主権に対する不快な制限2が必要となるでしょう。しかしながら、事態に対する理解をおそらく他の何よりもさまたげているのは、「人類」という言葉が漠然としていて抽象的に感じられることです。危険は自分自身と子どもたち、孫たちに迫っているのであり、おぼろげに捉えられた人類だけが危ないわけでないことに、人々が思い至ることはまずありません。人々は、自分自身と自分の愛する者たちがもだえ苦しみながら滅びゆく危急に瀕していることを、ほとんど理解できないでいます。だからこそ人々は、近代兵器が禁止されれば戦争を継続してもかまわないのではないかと、期待を抱いているのです。

このような期待は幻想にすぎません。たとえ平時に水爆を使用しないという合意に達していたとしても、戦時ともなれば、そのような合意は拘束力を持つとは思われず、戦争が勃発するやいなや、双方ともに水爆の製造にとりかかることになるでしょう。一方が水爆を製造し、他方が製造しなければ、製造した側が勝利するにちがいないからです。

軍備の全般的削減3の一環として核兵器を放棄するという合意は、最終的な解決に結びつくわけではありませんが、一定の重要な目的には役立つでしょう。第一に、緊張の緩和をめざすものであるならば何であれ、東西間の合意は有益です。第二に、熱核兵器の廃棄は、相手がそれを誠実に履行していると各々の陣営が信じるならば、真珠湾式の奇襲の恐怖を減じるでしょう。その恐怖のため現在、両陣営は神経質で不安な状態にあります。それゆえに私たちは、あくまで最初の一歩としてではありますが、そのような合意を歓迎します。

私たちの大半は感情的に中立とはいえませんが、人類として、私たちには心に留めておかねばならないことがあります。それは、誰にとっても――共産主義者であろうと反共産主義者であろうと、アジア人、ヨーロッパ人またはアメリカ人であろうと、あるいは白人であろうと黒人であろうと――なにがしかの満足をもたらすような形で東西間の諸問題を解決しようというなら、これらの問題を戦争によって解決してはならない、ということです。私たちは、このことが東西両陣営で理解されることを願わずにはいられません。

私たちの前途には――もし私たちが選べば――幸福や知識、知恵のたえまない進歩が広がっています。私たちはその代わりに、自分たちの争いを忘れられないからといって、死を選ぶのでしょうか?私たちは人類の一員として、同じ人類に対して訴えます。あなたが人間であること、それだけを心に留めて、他のことは忘れてください。それができれば、新たな楽園へと向かう道が開かれます。もしそれができなければ、あなたがたの前途にあるのは、全世界的な死の危険です。

決議:私たちはこの会議に、そしてこの会議を通じて、世界の科学者、および一般の人々に対して、以下の決議に賛同するよう呼びかけます。

「私たちは、将来起こり得るいかなる世界戦争においても核兵器は必ず使用されるであろうという事実、そして、そのような兵器が人類の存続を脅かしているという事実に鑑み、世界の諸政府に対し、世界戦争によっては自分たちの目的を遂げることはできないと認識し、それを公に認めることを強く要請する。また、それゆえに私たちは、世界の諸政府に対し、彼らの間のあらゆる紛争問題の解決のために平和的な手段を見いだすことを強く要請する。」

署名者:
マックス・ボルン
P. W. ブリッジマン
アルバート・アインシュタイン
L. インフェルト
F. J. ジョリオ・キュリー
H. J. マラー
ライナス・ポーリング
C. F. パウエル
J. ロートブラット
バートランド・ラッセル
湯川秀樹
 
---------------------------------------------------------------------------------------------------
[注]
1.ジョリオ・キュリー教授は「国家間の紛争を解決する手段として」という言葉を加えることを希望する。
2.ジョリオ・キュリー教授は「これらの国家主権の制限は、すべての国家によって合意され、すべての国家の利益にかなうものでなければならない」と加えることを希望する。
3.マラー教授は「軍備の全般的削減はすべての軍備の同時並行的な均衡のとれた削減」を意味すると解されるべきだとの留保を付ける。

[訳者注]
・以下の第1回パグウォッシュ会議議事録に収録された宣言(英文)及び脚注に基づいて、この和訳は作成された。
Joseph Rotblat, ed., Proceedings of the First Pugwash Conference on Science and World Affairs, Pugwash, Nova Scotia, Canada, 7-10 July 1957. Pugwash Council, 1982, pp. 167-170
https://pugwash.org/1955/07/09/statement-manifesto/.
・2021年5月3日以前のバージョン:「ラッセル=アインシュタイン宣言」(旧和訳)​

本和訳の作成経緯に関する補足説明(2021年11月10日)

本和訳は、日本パグウォッシュ会議が2021年5月3日に本ウェブサイトで発表した「ラッセル=アインシュタイン宣言」新和訳の改訂版である。その新和訳はパグウォッシュ会議のウェブサイトに掲載された宣言(英文)を基に作成された。その後、日本パグウォッシュ会議内部からの指摘を受け、新和訳ワーキンググループが調査した結果、1955年に発表された宣言文と比較すると、同宣言文からは一部の言葉が抜けていること、パラグラフの分け方が一部異なっていることなどが判明した。そのため、1955年の宣言文と同一であり、かつパグウォッシュ会議の公式の議事録に所収されていることを考慮し、第1回パグウォッシュ会議議事録に収録された宣言に基づいて新和訳を改訂することになった。声明本文の変更点は以下の3点である。

・新和訳の第8パラグラフと第9パラグラフを接続する。
・新和訳の第15パラグラフと第16パラグラフを接続する。
・新和訳の第10パラグラフに、パグウォッシュ会議ウェブサイトの宣言文では欠落していた“quite”を訳出する。

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2022/09/16

中国はなぜ日中関係の緊張を緩めようとしているか2022.09.06

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――八ヶ岳山麓から(392)――
 阿部治平 (もと高校教師)

 習近平中国国家主席は8月22日、新型コロナウイルスに感染した岸田文雄首相に見舞いの電報を送った。習氏は電報で「一日も早い回復を望む」と表明し、「今年は中日国交正常化50周年であり、私はあなたとともに新時代の要求に符合する中日関係の構築を推進したいと考えている」と呼び掛けた。

 もともと、政府・自民党の中に9月27日の安倍晋三氏の「国葬」を機に習近平国家主席の訪日を実現させようという動きがあったという。ところが、8月2日にペロシ米連邦議会下院議長が台湾を訪問し、その後岸田首相と親しく会談したことにより、こうした水面下の工作はぶち壊しとなった。
 ペロシ氏の訪台に激怒した中国は、台湾海域でのミサイル試射を含む「合同軍事演習」を始めた。8月4日には中国軍の弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)に5発落下した。
 これに対する日本側の抗議に、中国外交部の回答は、「排他的経済水域は日本が勝手に区画したもので中国は関係ない」とにべもないものであった。
 8月4日、G7外相会議は、「合同軍事演習」について「不要なエスカレーションを招く危険がある、中国による威嚇的な行動、特に実弾射撃演習及び経済的威圧を懸念する。台湾海峡における攻撃的な軍事活動の口実としてペロシ訪問を利用することは正当化できない」という声明を発表した。
 これで日中首脳会談の準備をするはずの日中外相会談は直前に中止となった。

 ところが2週間後の8月17日になって、秋葉剛男国家安全保障局長と楊潔篪・中国共産党政治局員が天津で約7時間にわたって会談した。双方が関係改善への動きを強めて、両国首脳間のオンライン会談か電話協議の実現へ水面下の調整が始まっている(朝日2022・08・22)。習近平氏は岸田氏に見舞電を送ってくる。
 どのような「魚心あれば水心」なのか。日中関係は、いつになく緊張状態が続いていたが、中国はなぜにわかに「軟化」したのか。

 この間の習近平氏をはじめとする中国側の動きを追った記事が台湾の「国防安全研究院ネット」にあった。「中国はなぜ日中関係の緊張を緩めようとしているか」である(2022・08・17)。筆者は同研究所副研究員の王尊彦氏である。
 王氏はまず、軍事演習時「中国が弾道ミサイルを日本のEEZに打ち込んだのは、ほかでもなく習近平が自ら指示したもの」と判断している。「中国の軍事演習は日本政府の神経を緊張させただけでなく、日本社会に広く憂慮の情を引き起こした。NHKの8月9日世論調査の結果によると、日本人の40%が、台湾周辺の海空域での中国軍の演習は日本の安全環境に『重大な影響がある』と認め、42%が『ある程度の影響がある』とした」
 これを見た孔鉉佑中国大使は、8月12日記者会見で「日本は現在の台湾情勢緊張の当事者ではない。また中国側はアメリカの政治的挑発と『台湾独立』勢力を阻止し、その目標は国家主権と領土の一体性を守るものであって、日本とは関係ない」と弁解したという。
 王氏曰く、「中国側が抗日戦勝利記念日(8月15日)の3日前にわざわざ公開の形式で、『軍事演習は日本と関係ない』と弁解したことは、日本に(中国側の)善意を伝える意思があったことを示している」

 王氏は、さらに注目すべきは、習近平氏が北戴河会議終了後、8月16日「遼瀋戦役記念館」で「東北解放戦争の歴史と遼瀋戦役勝利の過程の回顧」を参観したことであるという。
 「(台湾からみると)抗日戦勝利記念日の翌日、習近平が柳条湖など『抗日戦勝利』の意義ある場所へ行かず、かえって国共内戦で中共軍が『国民党軍を打ち破った』記念施設を訪れたのは、現段階で中国が日本と台湾に対する態度には大きな違いがあることを示したものである」
  また、王氏は「共同」の8月15日報道を引用する形で、福建省石獅市・漳州市、および浙江省台州市などの地方政府は、官営ネット上に「敏感な海域への進入禁止」の通知を交付した。さらに漁民には現地政府が口頭で「釣魚台(すなわち尖閣諸島)と台湾近海」へ接近してはならないと指示したという。
 「(軍事演習による)休漁期間は8月16日に終わったが、中国はこの海域を敏感な海域として、引き続き釣魚台海域への接近を禁止している。これもまた北京当局が日本と海上での摩擦、衝突を避けようとしているからである」

 はなしを8月17日の秋葉・楊の天津会談に戻すと、双方は互いに相手に対する抗議と見解を交換したあと、楊潔篪氏が両国は「平和共存・友好協力」でなければならないといい、双方は国際問題と地域問題の意見交換をし、「一定の有益な共通認識に到達した」また「対話と意思疎通を保持しつづける」という。
 これに対する王氏の見解は、「双方が達成した『共通認識』の中身がどんなものかわからないが、『対話と意思疎通』が強調されたことは、岸田内閣に対して、『中国はこれからも日本に対しては、台湾向けに行われたような軍事活動を行うつもりはない』という意思を伝えたことになる」というものだ。(以下略)


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