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平和論・戦争論・文明論
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2024/06/06

私たちは「いつ」戦争に反対するのか -軍事大国化を止めよう-

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※webマガジン『Lapiz』夏号からの転載です。
*************
 
                                                                      渡辺幸重
                                                                                
 岸田政権の内閣支持率が低空飛行を続けているなかで、安倍政権時から続いている日本の軍事大国化が後戻りのできない状態にまで進んでいる。

■民主主義が破壊され「全体主義体制」が進む

 教育の場で日の丸・君が代を強要し、軍事施設の撮影や記録を禁止し、周辺の土地の利用を制限し、港湾や運搬手段を自衛隊・米軍に提供することを自治体や企業が拒否できないようにし、民間用の空港や港湾を軍事利用できるように整備し、特定機密保護法やスパイ防止法で国民を監視しようとしている。国の監視・干渉は経済活動にまで及び、しんぶん赤旗が「戦争する国づくりを進める法案」と呼んだ経済安保秘密保護法(重要経済安保情報保護・活用法)が2024年5月10日、国会で審議が尽くされないまま可決成立した。日弁連や日本ペンクラブなど多くの団体が法案成立に強く反対したが、立憲民主党まで賛成に回るなど国会の機能不全(大政翼賛会化)は目も当てられない。5月30日には非常時に国が法律に規定のない事項でも自治体に指示ができる地方自治法改正案が衆議院で可決した。

 一方、岸田政権は国内の兵器開発や軍事研究を推進し、殺傷能力のある武器の輸出を解禁し、米国から旧式の武器を爆買いし、沖縄の辺野古新基地建設をごり押しし、琉球弧にミサイル基地や自衛隊基地を新設し、自衛隊は米国や韓国だけでなく、インドやオーストラリア、カナダ、ヨーロッパの国々とも大規模な軍事演習を繰り返している。
 これらの日本政府の政策は多くが閣議決定で行われ、国会での審議が不十分なまま、国民の目をそらしつつ進められている。権力を監視すべきマスメディアは国家権力に抱きかかえられて国の広報機関と化している。

 これでは「全体主義国家」ではないか。いま自民党の裏金問題が話題になっているが、このような腐敗した政治風土がこの「全体主義体制」を作っていることを忘れてはならない。それを許しているのはこの日本列島に住む私たちではないのか。
 私たちはあらゆる選挙で戦争に反対し民主主義を取り戻す候補者を応援し、次の総選挙では政権交代を実現することに全力を尽くすべきだ。現実を変えることしか私たちの人権と平和を取り戻す道はないと私は思う。

■米国に“魂”を売った岸田首相

 今年の4月8日から14日まで岸田文雄首相は米国を国賓待遇の形で訪問した。報道では米議会や晩餐会で英語でスピーチし、ジョークで笑いを取り、大いに受けたということだ。バイデン米大統領は「私は岸田首相を称賛したい、彼は大政治家である」と褒めちぎった。米政府が岸田首相をこれほどまでに持ち上げるのは、「(米国のために)安倍晋三元首相でもできないことを実現した」からだという。すなわち、安倍元首相はトランプ前大統領の要請に応じて武器を爆買いし、安保法制の制定などで日本を“戦争ができる国”にしたが、岸田首相は防衛費(軍事費)倍増や安保関連3文書の閣議決定、自衛隊を米軍指揮下に置く日米軍の一体的運用、武器輸出解禁、軍事研究や経済安保、ウクライナ支援などの政策を進め、日本を実際に“(米軍と一緒に)戦争をする国”にした。それらはすべて米国の世界戦略の中に組み込まれ、結局は米本土を守るために日本列島が軍事要塞になることでもある。米国にとっては最上の“グローバルパートナー”である。

 今回の岸田訪米で象徴的だったのは、岸田首相のスピーチの作り方だ。米議会上下両院合同会議での演説はレーガン元米大統領のスピーチライターが書いたものだ。また、晩餐会でのあいさつは米大統領の現役スピーチライターが書いたともいう。米国政府が日本にやらせたいことを日本の首相が代理で読んだと見える。日本側にとっては屈辱的な形だ。「日本は植民地、米国は宗主国」「日本は米国の属国」と言われることを自ら証明しているようで、情けなく思うのは私だけではないだろう。

 岸田首相は、米議会演説で「日米は『自由と民主主義』の仲間」であり、「日本は米国と共にある」と高々と宣言した。しかし、日本国内では民主主義が破壊されている。また、岸田首相は「広島出身」として「核兵器のない世界」の実現という目標にささげてきたとPRし、「核拡散防止条約(NPT)体制の再活性化と、国際的機運の向上」に取り組んできたと言うが、ならなぜ核兵器禁止条約に賛成しないのか。「東京育ち」の岸田首相が日本を全体主義国家にし、「米国の下に」自らの権力を維持しようとしているだけではないのか。

 軍事、原発、リニア、万博、戦争...と現在日本が抱える問題を考えると、この国が亡びるという危機感しか出てこない。岸田首相が帰国したあとの4月26日、ブリンケン米国務長官は北京で中国の王毅共産党政治局員兼外相と会談した。昨年11月にはバイデン大統領と習近平国家主席が約1年ぶりに米中首脳会談を行った。米国にはいくつもの顔があり、したたかな外交を繰り広げているのだ。岸田首相が「米国は独りではない」と言っているうちに「日本が独り」になり、日本は亡びるのではないだろうか。

■平和憲法を生かす「政権交代」を

 第二次世界大戦後に成立した日本国憲法は、憲法違反を繰り返す日本政府によって死文化され、改憲の危機にさらされている。しかし、軍事大国化が進み、戦争の足音が聞こえるいま、私たちが拠るべきものはやはり日本国憲法だ。1947年8月に刊行された中学1年生用の教科書『あたらしい憲法のはなし』(文部省)は、憲法前文の「民主主義」「國際平和主義」「主権在民主義」の大原則を示したあと「前文にある考えと、ちがったふうに考えてはならない」「この憲法をかえるときに、この前文に記された考え方と、ちがうようなかえかたをしてはならない」と明言している。改憲論者を含め私たちはこの意味を正確に受け取り、権力者の護憲義務を主張すべきだ。
 同書には戦争放棄について、「みなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの國よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません」とはっきり“正しいこと”を示している。日本国民は日本憲法で「けっして戰爭によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしない」「國の力で、相手をおどすようなことは、いっさいしない」ことを決めたとし、「よその國となかよくして、世界中の國が、よい友だちになってくれるようにすれば、日本の國は、さかえてゆける」という道を憲法が示しているとする。

 私たちは亡びる道を選ぶのか、栄える道を選ぶのかの「覚悟」が必要だ。それは岸田首相がアメリカで語ったような「アメリカにこびた覚悟」ではない。決してアメリカのスピーチライターが書いた“軍事大国への道”ではないことは明白だ。私たちは自らの意思で国際平和を実現するための行動を示すべきだ。次の総選挙ではっきりと示さなければならない。
 国内では自民党の「裏金問題」が大きく取り上げられ、政治不信が拡大している。世論調査では「政権交代を望む」という国民の声が大半を占めるという。文字通り信じるわけにはいかないが、いまこそ自公政権に鉄槌を下し、政治を変えるときであろう。野党候補者も含め、一人ひとりの政治家の意識や政策を見定めて民主主義を取り戻し、軍備増強を止めるための国民的大運動を起こし、政権交代を果たさなければならない。

 『あたらしい憲法のはなし』は「みなさん、あのおそろしい戰爭が、二度とおこらないように、また戰爭を二度とおこさないようにいたしましょう」と呼びかけている。


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2023/09/16

民間外交・自治体外交で「平和な国際社会」を

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「静か・沖縄を語る会」会報2023年9月号からの転載です。
***********       
民間外交・自治体外交で「平和な国際社会」を
      ~日本政府・大手メディアのキャンペーンに抗し、“戦わない覚悟”を~
               渡辺 幸重(静岡・沖縄を語る会会員)

 麻生太郎元首相(自民党副総裁)が台湾で「戦う覚悟」を強調したことが大きな話題になりました。メディアによってニュアンスが異なりますが、台湾で戦争を起こさせないためには「日本や台湾、アメリカなどが協調」して「いざとなったら防衛力を使うという明確な意思を相手に伝える」ことで「非常に強い抑止力」を機能させるのだそうです。戦争を抑止するための「戦う覚悟」とはどういうものなのでしょうか。
 8月6日の広島原爆の日に松井一實・広島市長は「世界中の指導者は、核抑止論は破綻しているということを直視」することを呼びかけ、核抑止論からの脱却を促しました。また、8月9日の長崎原爆の日でも鈴木史朗・長崎市長は「核抑止に依存していては、核兵器のない世界を実現することはできない」と訴えました。核兵器を頂点とする軍事力で戦争を抑止することはできないことは明らかです。
 にもかかわらず岸田・自公連立政権は軍事力増強路線を突っ走っています。麻生発言はその日本政府の意向を背景に“暴言”をよそおって日本国民に「戦う覚悟」を迫っているのです。しかし、台湾有事に参戦することは、台湾を中国の領土の一部と見なし、「すべての紛争を平和的手段により解決する」とした日中共同声明・平和条約に違反します。もちろん明白な日本国憲法違反です。
 TBS『サンデーモーニング』でジャーナリストの青木理さんが「かつては内閣が吹っ飛んだようなことが平気でまかり通っている」という意味の発言をしていました。安倍政権以降そのようなことがいくつもありました。それを許してきた日本国民はどうしてしまったのでしょう。私たちは日本政府や大手メディアの反中意識を煽るキャンペーンに流されず、国内に冷静な議論を作ると同時に民間や自治体レベルでの平和外交を模索し、海外との交流や対話を続ける必要があるのではないでしょうか。

平和外交と対話によって相互の信頼関係を築く玉城知事の訪中

 沖縄県は以前から米軍基地問題を広く国内外に知ってもらうための活動を展開しています。アメリカの政府や議会、有識者とも交流し、ロビー活動や情報収集を行ってきました。それは日本政府が沖縄の声を理解せず、アメリカ政府にその主張を伝えないばかりか逆に率先してアメリカの世界戦略に沿った政策を進めてきたからです。玉城知事は対外活動を台湾や中国などにも広げ、「沖縄は戦わない」「沖縄を戦場にしない」という姿勢を伝えようとしているのです。
 外交と軍事は国の専管事項と言われますが、民主主義社会では外交や軍事を含め国の方向性を決めるのは国民の権利です。民間や自治体が経済や文化面だけでなく国の将来についても交流を深める外交は私たちの平和を守るために大変重要なことです。
 玉城デニー沖縄県知事は今年7月3日から日本国際貿易促進協会の訪中団の一員として中国を訪問し、5日には河野洋平元衆院議長らとともに北京の人民大会堂で中国の李強首相と会談しました。これは沖縄県が掲げる平和構築と相互発展のための「地域外交」の一環で、知事は「確かな手応えがあった」と述べました。
 今回の知事訪中に関して、残念ながら日本の中央メディアの報道は玉城平和外交への積極的な姿勢を伝えたとは言えませんでした。知事訪中に先立って中国の習主席が述べた「琉球と中国の交流」に関する発言を「中国政府の日本に対する揺さぶり」と捉え、知事訪中はそれに利用されると疑問を呈した報道さえありました。
 Webでは習主席の発言を「台湾有事に日本が介入すれば沖縄を取るという『恫喝』」「黒を白と言う国とは仲良くする必要無し」とするコメントも見られました。これらの発言は何回も流されるテレビやネットでのニュースや解説も影響しています。視聴者に“日本に対する脅威”と“外国不信”を植え付ける報道番組にはうんざりさせられますが、それが政府発表を無批判に垂れ流す大メディアの現状です。玉城知事および沖縄県民の平和を求める立場を理解せず、アメリカ政府や日本政府の意向に忖度して世界をすべて対立構造(専制国家対民主国家など)で理解させようとしているようです。
  私たちは政府の言論統制やマスコミの世論操作に洗脳されないように気をつけなければなりません。平和な国際社会を作るためにはどこの国とも「相互によく知り認め合う」のが大事で、国民同士が敬意を持ち、根気よく信頼を醸成する努力が必要です。
 玉城知事は『環球時報』のインタビューで「平和外交と対話を通じて、緊張した情勢を緩和し、相互の信頼関係を築くことは、非常に重要なことだ」と語りました。「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」は「国同士の関係が冷え込む中で、中国との歴史・文化の関係が深い沖縄県知事が中国要人とエールを交換した意義は大きい」と高く評価しています。

シンポ開催などで台湾や中国の人と対話交流、外交努力で成果も

 アメリカの2016年度国防予算を決める国防権限法案の審議で、米軍普天間飛行場の移設先として「辺野古が唯一の選択肢である」とする条項が入った案が下院を通過したことがあります。上院通過の議案にはその条項が入っておらず、両院協議会の法案検討作業の結果、その条項は削除されました。
 実は当時の翁長雄志・沖縄県知事は2015年5月に訪米し、辺野古の新基地建設に反対する民意や沖縄の現状を訴えました。また、同年9月には現職の行政首長として日本で初めて国連人権理事会に出席、米軍による土地の強制接収や日米政府による辺野古新基地建設強行を批判しました。また、新外交イニシアティブ(ND)代表の猿田佐世弁護士も米国議会に辺野古条項の削除を求めてロビー活動を展開したそうです。新外交イニシアティブは議員外交、知識人外交、民間経済外交、市民社会外交などの新しい外交を推進することを目的として設立された日本のシンクタンクです。米国議会における条項削除は沖縄県や猿田弁護士らの活動の積み重ねが影響したと言われており、自治体外交や民間外交が成果を上げた例と言えるのではないでしょうか。
 今年の4月29日、那覇市で「『台湾有事』を起こさせない・沖縄対話プロジェクト」の第二回シンポジウムが開かれました。台湾の与野党系の研究者、沖縄県の保守・革新双方の立場の論者による対話を行った第一回シンポジウムに続いて、第二回目の対話セッションでは台湾で漁民や労働者の支援活動をしている人や石垣島で住民投票活動をしている人、沖縄出身の自治体外交の研究者らが「地域の対話で戦争を起こさせない」という立場から議論しました。9月9日には「大陸(中国)との対話 率直に聞こう!率直に語り合おう!」をテーマに第三回目のシンポジウムが行われます。
 また、6月24日には那覇市でシンポジウム「沖縄を平和のハブとする東アジア対話交流プロジェクト」が開かれました。第1部「沖縄平和ハブ構築に向けて~安全保障、文化、経済、外交交流の拠点化を考える~」第2部「経済トーク 福建・台湾・沖縄」第3部「次世代トーク」というプログラムを見ればこのイベントの狙いがわかります。
 辺野古では米軍の退役軍人や海外の環境保護団体なども関わり、国際的な広がりが見られますが、琉球弧の軍事要塞化が進み、“台湾有事”が喧伝される中で台湾や中国の人たちとの対話や交流によって平和を目指す動きが高まっています。

台湾有事があっても日本の米軍基地を使わせず、台湾・中国に自制を求める外交を  

 新外交イニシアティブは2022年11月、政策提言「戦争を回避せよ」を公表しました。それによると、台湾有事を回避するためには展望を持った外交展開が必要とした上で、
・アメリカに対しては、事前協議において米軍の日本からの直接出撃に必ずしも「YES」ではないことを伝える
・台湾に対しては、過度な分離独立の姿勢をとらないよう説得する
・中国に対しては、台湾への安易な武力行使は国際的な反発を招くこと、軍事面では日本は米国を支援せざるを得ない立場にあるが台湾の一方的な独立の動きは支持しないことを明確に示すことで自制を求める
などを例示し、「政治は、最後まで外交を諦めてはならない」と強調しています。
 あるシミュレーションによると、台湾有事が起きてアメリカが参戦した場合、アメリカが中国を抑えるためには日本の米軍基地の使用が必須となっています。日本政府がアメリカ追随ではなく毅然として「戦争反対」を貫いて事前協議で米軍基地使用を拒否し、中国と台湾に自制を求めれば道は開けてきます。日本政府にそれを求めるのは一人ひとりの日本国民です。それが平和外交を支えることになります。

あらゆる手段を駆使して、戦争をさせない世論を広げよう       

 今年の8月18日、アメリカのキャンプ・デービッドで日米韓の首脳会談が開かれ、3カ国が連携して北朝鮮のミサイルの脅威に対抗する弾道ミサイル防衛協力の拡大、日米韓の共同軍事演習の実施、北朝鮮の不法なサイバー活動に対抗する取り組みなどを行うことに同意しました。これに反発した北朝鮮は海軍に核兵器を配備する意志を示したとされます。「核抑止力」を強化しようというのです。軍事力で戦争を抑止しようとすると軍拡競争が起き、核兵器レベルまで達することを示しています。
 ロシアのプーチン大統領がウクライナ戦争で核兵器の使用をちらつかせているように、核抑止論はすでに破綻しています。これは広島・長崎の両市長が指摘した通りですが、日本政府はアメリカと核兵器を共有する「拡大抑止論」まで主張するようになりました。私たちは日本政府の軍拡路線を止め、隣国はもちろんのこと世界各国と仲良くしなければなりません。
 新外交イニシアティブの猿田弁護士は「戦争を回避するための外交努力が尽くされていないことが問題」と指摘しています。日本政府はアメリカの属国かと思わせるぐらいアメリカのいうことを聞いていますが、東南アジアの国々は、米中の間でうまくバランスをとる外交努力を続けています。たとえばアメリカの同盟国・フィリピンでさえ、米国が台湾防衛のための作戦に使用する武器を米軍基地に備蓄することを認めず、米軍がこれらの基地で給油、修理、再装填することを認めないと外務長官が明らかにしています。
 猿田弁護士は「今こそ、国際協調による平和を謳った日本国憲法の精神を活かすべき時です。SNSでつぶやく、国会議員にファックスを送るなど、できることはたくさんあります。あらゆる手段を駆使して、戦争をさせない世論を広げましょう」と呼びかけています。
 私たち民間の草の根外交はイベントだけでなく、留学生・旅行者との交流や住んでいる自治体への要求など国内外のさまざまな場面で可能です。どのような輸入品を買うかという日常の行動にも意識が現れるのではないでしょうか。さらにインターネットを利用すれば署名活動や意見交換など活動が広がります。日本政府や大メディア、ネット右翼などのヘイトキャンペーン・脅威キャンペーンに負けることなく、声を上げ続けたいと思います。


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2023/08/30

朝日記事★朝日新聞に戦争反対を促す石原莞爾

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*****************8月22日
朝日朝刊。凄い記事。
 「この戦争はだね、このまま行ったら必ず負ける。止めるならまず今のうちだよ。どうだね。朝日新聞は(紙面)全面を埋めて戦争反対をやらんかね。(中略)全面をつぶして戦争反対をやってみろ、歴史上の村山(長挙〈ながたか〉=当時の朝日社長)になるよ。そうおれが言ったと伝えてくれよ」
 「そんなことをしたら、朝日新聞は潰されてしまいますよ」と語る所に、石原は、こう答えたという。
 「なあに、そら潰されるさ、潰されたって、戦争が終わってみろ。いずれ敗(ま)け戦さ。朝日新聞は復活するよ。従業員は帰って来る。堂々とした朝日新聞になる。どうだ。そう伝えて欲しいな」
 社に戻った所は、朝日の重役に伝言したが、「口をつぐんだきり何も言わなかった」という。
 満州事変の首謀者として戦端を開いた石原が、日本の完敗を見定め、今度は朝日に戦争反対を訴えるよう促した、というのは皮肉としか言いようがない。
 もはや朝日も正論を説く機会を逸し、後戻りできなかった、象徴的なエピソードだろう。

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2023/01/22

【政策提言】戦争を回避せよ

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   2022/11/28
            ※PDFはこちら
柳澤 協二 (ND評議員/元内閣官房副長官補)
マイク・モチヅキ(ND評議員/ジョージ・ワシントン大学准教授)
屋良 朝博 (ND評議員/前衆議院議員〈沖縄選出〉)
半田 滋  (防衛ジャーナリスト/元東京新聞論説兼編集委員)
佐道 明広 (中京大学国際学部教授)
猿田 佐世 (ND代表/弁護士〈日本・米ニューヨーク州〉)

========= 提言 =========
● 安全保障政策の目標は、戦禍から国民を守ること、即ち、戦争回避でなければならない。抑止力強化一辺倒の政策で本当に戦争を防ぎ、国民を守ることができるのか。
 軍事力による抑止は、相手の対抗策を招き、無限の軍拡競争をもたらすとともに、抑止が破たんすれば、増強した対抗手段によって、より破滅的結果をもたらすことになる。抑止の論理にのみ拘泥する発想からの転換が求められる。
 戦争を確実に防ぐためには、「抑止(deterrence)」とともに、相手が「戦争してでも守るべき利益」を脅かさないことによって戦争の動機をなくす「安心供与(reassurance)」が不可欠である。

● 台湾有事にいかに対処するかは、戦争に巻き込まれるか、日米同盟を破綻させるかという究極の選択を迫る難題である。それゆえ、台湾有事を回避するために、今から、展望を持った外交を展開しておかなければならない。
 例えば、米国に対しては、過度の対立姿勢をいさめるべく、米軍の日本からの直接出撃が事前協議の対象であることを梃子として、台湾有事には必ずしも「YES」ではないことを伝えることができる。台湾に対しては、民間レベルの交流を維持しながら、過度な分離独立の姿勢をとらないよう説得することができる。中国に対しては、台湾への安易な武力行使に対しては国際的な反発が中国を窮地に追い込むことを諭し、軍事面では米国を支援せざるを得ない立場にあることを伝えながら、他方で台湾の一方的な独立の動きは支持しないことを明確に示すことで、自制を求めることができる。また、日本は立場を共にする韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)を含む多くの東アジア諸国と連携して、戦争を避けなければならないという国際世論を強固にすることもできる。
 台湾有事は、避けられない定められた運命ではない。日本有事に発展するかどうかも、日本の選択にかかっている。回避する道のりがいかに困難であっても、耐えがたい戦争を受け入れる困難さは外交による問題解決の困難を上回る。政治は、最後まで外交を諦めてはならない。

● 「抑止」としても「対処」としても、必要な条件を満たさず、戦争拡大の契機ともなる敵基地攻撃を、政策として宣言するのは愚策である。

● 政治は、戦争を望まなくとも、戦争の被害を予測し、それを国民と共有するべきである。それは、防衛のための戦争であっても、戦争を決断する政治の最低限の説明責任であり、それなしに国民に政治の選択を支持させるのは、国民に対する欺罔行為である。

======================

■ 戦争の危機の時代における政治の課題
戦後日本は、70年以上にわたり、戦禍に巻き込まれることがなかった。その背景には、米ソ両大国間の安定的な相互抑止関係が存在したこと、および、日米同盟の下にありながらも日本国憲法のもとで抑制的な防衛姿勢を維持し、米軍の行動と一線を画してきたことがあった。結果として、ミサイルが日本に着弾することなく、また、海外に派遣された自衛隊が一発の弾を撃つこともなく、一人の戦死者もなく今日に至っている。

今日、米ロ、米中という大国の間に安定的な相互抑止関係があるとは言い難い。今年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻に加え、台湾海峡における軍事的緊張の高まり、北朝鮮によるたび重なるミサイル発射は、日本国民のなかに戦争の不安を増大させている。その状況を受け、政府は、日米同盟による抑止力の強化、敵基地攻撃能力の保有を含む防衛力の大幅な増強を目指すとともに、2015年の安全保障関連法に基づく日米の軍事的な一体化を加速させている。

一方、連日報道されるウクライナの状況は、始まった戦争を終結させることが困難であること、ミサイルから安全な場所はなく、民間人の犠牲を防げないことを示している。台湾有事が起きれば、沖縄を含む日本の各地域で同じことが起きる。戦争は回避しなければならない。これが、ウクライナ戦争の最大の教訓である。

防衛政策の目標は、何よりもまず、戦禍から国民を守ることである。抑止力強化一辺倒の政策で本当に戦争を防ぎ、国民を守ることができるのか。その代替策を含め、いかにして戦争を回避するかを活発に論じることこそ政治の使命であり、政治の対抗軸であるべきである。

同時に、国連安保理常任理事国であるロシアによる侵略行為は、戦後国際秩序をかろうじて支えてきた国連そのものの危機でもある。このままでは、世界は再びルールなき戦争の時代になってしまう。

国際社会は、戦争を契機としながら戦争を規制する国際システムを模索してきた。それを維持するために必要なのは、世界を滅亡に導きかねない戦争を避けることである。そのためには自国の利益より共通の秩序を優先する大国の自制が欠かせない。自制が失われたところに、ロシアのウクライナ侵攻があった。そして今、中国について、同じ懸念が生じている。

日本は二つの大きな課題に直面することになった。一つは、台湾有事という目前にある米中の戦争の危機をいかに防ぐかという課題であり、もう一つは、国連をはじめとする世界秩序をどう再構築するかという課題である。

日本の安全保障をめぐる論議は、もっぱら同盟と抑止力の強化に焦点を当てている。その背景には、日米の抑止によって、日本を脅かす戦争が防がれてきたという成功体験がある。だが、大国間の相互抑止が安定していない今日、軍事力だけでは戦争の恐怖から逃れることはできない。同盟国から見捨てられるか、同盟国の戦争に巻き込まれるかという「同盟のジレンマ」が顕在化する。

ロシアのウクライナ侵攻に際して、米国はウクライナへの米軍派遣を否定したが、それは、米国がロシアと直接衝突すれば、世界戦争になるという懸念があるからである。大国を抑止するためには大国間の戦争を覚悟しなければならず、また大国間の戦争を避けようとすれば大国の暴走を止められない。これが、ウクライナ戦争が突き付けた抑止の現実である。我々は、大国の武力行使も、世界戦争も、選択することはできない。

戦争回避が日本の安全保障政策の目標でなければならない。そのためには、抑止の論理にのみ拘泥する発想からの転換が求められる。

残念ながら国会やメディア報道における議論は、「敵基地攻撃の要件をどうするか」といった技術論に終始している。日本が内向きの理屈で自問自答しても、軍事的な能力には限界があり、米中の大国間戦争を止める力にはなり得ない。

岸田文雄首相は、2021年の自民党総裁選挙に当たって、「まずは外交努力をするが、有事となれば平和安全法制(安全保障関連法)に従って対応する。」旨述べた。そこには、「何としても有事にしない」という強い信念は見えない。

「外交には一定の力の裏付けが必要だ」という主張もある。この点、まずは、日本の自衛隊が、既に世界有数の軍事力をもつ存在となっていることを忘れてはならない。さらには、外交の目標とは何であるのか。相手を説得することであるなら、必要な力は強制手段としての軍事力だけではなく、国際世論と協調した道義的な説得力や、日本の善意と魅力を伝えるソフト・パワーが必要となるはずだが、今、外交の目標とそれに見合う力をどう調和させるかの議論は行われていない。

政治が考えるべきことは、米中の軍事衝突をどのように防ぐか、そして、安定した国際秩序をいかに構築するか、そのために日本に何ができるのかという問いかけに答えることである。我々は、まずこのことを、与野党を問わず、日本の政治に求めたい。

■ 台湾有事に巻き込まれるか、回避するか
戦争は、ウクライナ侵攻におけるロシアがそうであったように、楽観的見通しによって始まる。それゆえ、勝利を楽観視させないための防衛の意思と能力は必要である。同時に、戦争は、他の手段では目的を達成できないという「外交への悲観」によっても始まる。それゆえ、戦争を防ぐためには、外交による解決の余地を残す政治的柔軟性が必要となる。

抑止とは、戦争を企図する者に対して、戦争による利益を上回る損害、あるいは、耐え難い損害を被ることを認識させて、思いとどまらせることである。抑止のためには、相手がこちらの反撃の能力と意思を疑わず、手痛い損害を被ることを確信する必要がある。だが、そこには多くの誤算や認識の齟齬が生まれる。

相手は、こちらの意思を軽視するかもしれない。あるいは、損害を過小に見積もるかもしれない。さらに、「いかなる反撃を受けても断じて譲歩できない」と考えるかもしれない。これらは、ロシアがウクライナ侵攻で示した侵略する側の心理である。

反撃を図ろうとする側も、どの程度の武力を加えれば相手が侵攻を断念するか、正確には理解できない。そこで、反撃力が大きいほどよいと考える。その究極には、核兵器がある。一方、反撃が大きいほど、相手の再反撃も大きくなる。やがて武力によって抑止しようとする側も、大きな損害を覚悟しなければならなくなる。

大国を抑止するには世界戦争を覚悟しなければならない。それは、ロシアだけではなく中国についても同じである。

今日、台湾をめぐる米中の対立は、民主主義対専制主義というイデオロギー対立の焦点となっており、双方が判断を誤れば取り返しのつかない戦争に至るおそれがある。米軍の前線拠点である日本が米国に加担すれば、中国との戦争に巻き込まれる。一方、米国に加担せず、中立の姿勢をとれば日米同盟は崩壊する。台湾有事にいかに対処するかは、「安全保障関連法に従って対応すればよい」という単純な問題ではなく、戦争に巻き込まれるか、日米同盟を破綻させるかという究極の選択を迫る難題である。

それゆえ、戦争を回避し、戦争の危機があれば早期に収拾するために、今から、展望を持った外交を展開しておかなければならないのである。

軍事力による抑止は、相手の対抗策を招き、無限の軍拡競争をもたらすとともに、抑止が破たんすれば、増強した対抗手段によって、より破滅的結果をもたらすことになる。

戦争を確実に防ぐためには、「抑止(deterrence)」とともに、相手が「戦争してでも守るべき利益」を脅かさないことによって戦争の動機をなくす「安心供与(reassurance)」が不可欠である。しかし、日本においては、専ら抑止の観点からのみ安全保障を論じる傾向が強く、安心供与の概念はほとんど認識されていない。

安心供与は、一方的に譲歩することではない。和解が困難な相手であればあるほど、互いに譲れない最低限の要求を認識し、それを両立させる道筋を見出すことである。それは、過大な要求を相互に排除し、利害対立の緩衝領域を確保する外交のアートである。そこには、抑止と同様、誤算や齟齬が存在する余地があり、長引く不快な交渉も余儀なくされるだろう。それを支えるものは、戦争を回避する強固な意志である。

70年を超えて日本が戦争に巻き込まれなかった時代の条件が大きく変化している今日、外交本来の力が試されている。政治は、軍事力に頼った抑止にのみ目を奪われることなく、戦争を回避するための外交を展開しなければならない。

■ 台湾を次のウクライナにしないために
米国は、ウクライナに大規模な武器支援を行い、ロシアの戦争プランを誤算に導いている。仮にロシアがこれを予測していれば、2月の侵攻はなかったかもしれない。だがそれは後になって初めてわかる予測困難な産物である。一方、中国は、これを予測できる。それゆえ、台湾への武力行使には慎重になるとともに、米国の武器支援に対抗する手段を周到に準備するだろう。本年8月の台湾を包囲する軍事演習は、米国からの支援を阻止する能力を示すものであった。

安心供与の観点から言えば、NATOの拡大や兵力配備について交渉の余地はあったとしても、ウクライナの全土又は一部を支配下に置くというロシアの主張は、国家主権の原則に反し、安心供与を読み取る余地はまったくない。

他方、「台湾が中国の一部である」という中国の主張は、米中・日中の国交樹立時の共同声明にも示され、これまで、国際的に否定されたことはなかった。問題は、中国が武力による統一に踏み切るかどうかということにある。

中国は、「外国の干渉や台湾独立勢力に対する武力行使を放棄しない」と言っている。米国は、「中国の武力行使を容認せず、台湾防衛を支援する」との立場である。台湾の立場は、「中国本土との統一を望まないが、戦争につながる独立宣言をしようとは思わない」というところに集約できるだろう。三者は、それぞれ異なった思惑を持ちつつも、「現状維持」を最低限の目標としている。同時に、いずれの当事者も、戦争を望んでいない。

他方、2019年の中国による香港弾圧を経た結果、台湾では「一国二制度」への共感が失われ、分離を志向する傾向が強まっている。米国も、「一つの中国」政策を維持すると言いつつ、「台湾関係法」による台湾防衛を重視する傾向を強め、かつてのように台湾の分離思考をいさめることはしない。こうした米台の姿勢が、中国の不満を煽っている。こうして、中台の思惑の違いが明白となり、そこにイデオロギーによる米中の覇権争いが重なって、政治的な妥協を難しくし、戦争の要因を高めている。

ロシアのウクライナ侵攻では、日本は当事者になっていないが、地理的に近い台湾有事は別である。まず、日本は戦争となれば最も影響を受ける国であり、そして、日本は米中双方と緊密な関係があり、双方と対話できる立場にあるからである。その日本が、台湾有事の回避のために何もしないという選択肢はない。だが、そのための日本独自の外交戦略が見えないことが問題である。

例えば、米国に対しては、過度の対立姿勢をいさめるべく、米軍の日本からの直接出撃が事前協議の対象であることを梃子として、台湾有事には必ずしも「YES」ではないことを伝えることができる。台湾に対しては、民間レベルの交流を維持しながら、過度な分離独立の姿勢をとらないよう説得することができる。中国に対しては、台湾への安易な武力行使に対しては国際的な反発が中国を窮地に追い込むことを諭し、軍事面では米国を支援せざるを得ない立場にあることを伝えながら、他方で台湾の一方的な独立の動きは支持しないことを明確に示すことで、自制を求めることができる。これらは、日本の率直な立場の表明であり、それなりの信憑性をもって受け止められるだろう。その立場は、韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)を含む多くの東アジア諸国の立場と共通している。日本は、これらの諸国と連携して、戦争を避けなければならないという国際世論を強固にすることができる。

台湾有事は、避けられない定められた運命ではない。日本有事に発展するかどうかも、日本の選択にかかっている。回避する道のりがいかに困難であっても、耐えがたい戦争を受け入れる困難さは外交による問題解決の困難を上回る。政治は、最後まで外交を諦めてはならない。

また、こうした外交のプロセスは、その成否にかかわらず、大国の戦争を規制する新たな国際的ルール作りのモデルとして、歴史的な意義を持つことになるだろう。

■ 「敵基地攻撃論」における政治の役割
日本政府は、抑止力と対処力の強化のため「敵基地攻撃能力」を始めとする防衛力の抜本的強化の方針を打ち出している。それにより戦争を抑止し、場合によっては軍事力を行使する、という論理である。

敵基地攻撃が抑止として機能するためには、相手が攻撃による目的を達成できないと認識するほどの損害を与える必要がある。相手が中国であれば、沿岸部の数か所の基地を攻撃するだけでは不十分で、内陸部にある基地や堅固に防護された司令部を含め、致命的なダメージを与えなければならない。日本がそれだけの能力を持てると考えるのは、現実的ではない。

そこで、足らざるところは米国が補ってくれるという前提で、日本の反撃能力が限定的でも抑止に役立つ、という論理がある。だが、米国が参戦すれば、世界戦争になるリスクは否定できない。

飛来するミサイルから防御する観点で言えば、ミサイル基地を破壊すれば、発射されるはずであったミサイルを防ぐ効果はあるだろう。だが、すべてのミサイル施設を破壊することは不可能であり、必ずミサイルによる報復がある。最も重要なことは、自衛隊や在日米軍基地と基地周辺の民間人を相手の再反撃から守ることである。だが、被害局限や住民保護については語られていない。

また、敵基地攻撃とは、敵基地がある相手国本土を攻撃することである。相手もこちらの本土に報復して戦争が拡大する。こちらの被害も拡大し、早期終結を困難にする。

軍事技術の進展を考えれば、自衛隊がスタンドオフ防衛能力を持つことを否定するのは困難だろう。だからこそ、その運用には慎重でなければならない。「抑止」としても「対処」としても、必要な条件を満たさず、戦争拡大の契機ともなる敵基地攻撃を、政策として宣言するのは愚策である。こうした政策を持つことで防御を楽観視し、かえって戦争回避のための外交がなおざりになることが懸念される。

政治は、独りよがりの抑止論に終始すべきではない。自国の政策がかえって相手との対話を困難にすることがないよう、外交戦略のなかでの防衛の役割を考えなければならない。

■ 日本に欠けている戦争のリアリティー
台湾周辺の軍事的緊張の高まりは、沖縄に強い危機感をもたらしている。武力衝突があれば、最前線になる沖縄が耐えがたい犠牲を被ることになる。

戦争においては、前線のミサイル部隊などが優先的な標的となる。自衛隊がミサイル部隊を配備する石垣島などの離島では、有事に住民を避難させるシェルター建設が取り沙汰されている。だが、米軍や自衛隊の拠点という意味では、嘉手納や普天間基地がある沖縄本島も同様であり、戦争が拡大すれば、三沢、横田、横須賀、岩国、佐世保などの基地がある本土も例外ではない。基地が真っ先に攻撃されるのは戦争の常識であり、ミサイルの標的となるリスクは、沖縄だけの問題ではないのである。

戦争に備えるのであれば、日本中にシェルターを作らなければならない。それは、現実的な施策と言えるのだろうか。今日のミサイル技術の趨勢を踏まえれば、発射の兆候はもとより、飛翔経路を把握することも困難である。どの地域を対象に、いつ避難するかを正しく決定することは不可能に近い。長期にわたって住民を避難させれば、経済は崩壊する。

問題の本質は、こうした弥縫策で国民の命を守れるのか、ということである。国民の命を守るためには、戦争そのものを回避しなければならない。

戦争となれば、海外に資源を依存する日本において、国民生活が成り立たなくなることは自明である。まして最大の貿易相手国の中国であれば、戦争前から、日本の交易路を妨害する能力があり、レア・アースなどの輸出禁止や日米企業の資産を凍結するなど、多彩な強制手段を持っている。こうした経済的影響が論じられることがないのは、政治の怠慢というほかない。

総じて言えば、日本の安全保障論議は、戦争のリアリティーに基づいていない。戦争は、彼我の相互作用であり、犠牲のない戦争はあり得ない。様々な戦争シミュレーションも行われているが、軍事的な作戦を主なテーマとし、外交的な危機管理をテーマとしていない。また、その取り組みがまじめであればあるほど、「国民保護の壁」にぶつかっている。

政治は、戦争を望まなくとも戦争の被害を予測し、それを国民と共有するべきである。それは、防衛のための戦争であっても、戦争を決断する政治の最低限の説明責任であり、それなしに国民に政治の選択を支持させるのは、国民に対する欺罔行為である。

防衛政策の目標は、何よりもまず、戦禍から国民を守ることである。大国間の抗争が世界を不安定化させるなかで、1発のミサイルの着弾もなく、一人の戦死者もなかった状態を維持することは、容易ではない。大国間の戦争を防がなければ、国民の安全を維持することはできないからである。

「大国間戦争の回避」というテーマは、日本が一貫して考えてこなかった課題であり、「大国に依存する抑止」という思考の枠のなかでは、答えがない課題でもある。その意味で、日本の安全保障は大きな転換点にある。

政治の使命である「国民を守る」という原点に立ち返り、戦争を回避するため日本が何をすべきか、してはならないかを論じなければならない。

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2023/01/04

玉城デニー知事に聞いた 自衛隊増強をどう見る? 辺野古の新基地...

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   2023年1月1日 10:24沖縄タイムス

 玉城デニー知事は1日までに、報道各社のインタビューに応じた。台湾有事を念頭に、南西諸島で進められている自衛隊の防衛力強化に「県民の不安が募っている」と懸念を示した。一方、東アジアの緊張緩和に向け、知事が台湾や中国などを訪問する「自治体外交」へも意欲を示し、経済振興のために引き続きアジアのダイナミズムを取り込む政策に取り組む考えを強調した。

 -米軍基地に加え、台湾有事を念頭に南西諸島で自衛隊強化が進んでいる。

 「日米安保体制は東アジアの平和と安定の維持に一定寄与してきた。ただ、戦後77年、日本復帰50年を経ても依然として沖縄に国内の米軍専用施設の約70%が存在する状況は異常としか言えない。大多数の国民が日本の安全保障が大切と考えるなら、当然、負担も全国で分担するのが筋だ」

 「自衛隊に関しては、多くの県民は離島の急患搬送や不発弾処理などの活動に理解を示している。しかし、米軍基地の整理・縮小が進まない中、自衛隊の配備増強が重なることには多くの県民が不安を抱かざるを得ない。さらに自衛隊を増強するのであれば、まずは国政の場でしっかり議論することが重要だ」

 -アジア諸国と歴史的に関係を築いてきた沖縄が取り得る衝突回避に向けた動きは。

 「沖縄県は琉球王国時代から600年以上にわたり地域間交流を続けてきた。沖縄から交流を促進し地域間の信頼醸成や緊張緩和に貢献したい。新型コロナの感染状況を注視しながら中国や台湾、韓国をぜひ訪問したい。(以下略)


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2022/12/30

【動画】ミサイルを買っても日本の安全性は高まらない/田岡俊次さん

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ゲストの田岡俊次さんは、「トマホークを買えば日本は安全になる」と思っているとしたら大きな間違いだと指摘。中国に対する安全保障という意味では、中国のほうが軍事力でも経済力でも上なのだから長期戦で勝ち目はないうえ、そもそも核保有国に対してトマホークが抑止力になると思うのは「砲撃戦にピストル持って参加するようなもの」であり、話にならないと解説しました。


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2022/12/29

<報告>中国のシンクタンクとのズーム会議

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中国のシンクタンクとのズーム会議で、発議者を務めました。
 現在の国際情勢を念頭に軍事外交を使った緊張緩和策を提案しました。米国を中心に中国軍も積極参加している多国間訓練で、人道支援、災害救援訓練の分野でさらに軍事交流を拡充していくこと。そしてその連絡調整機関(国連機関でも)を沖縄に置こう、と提案しました。
 すると日中双方の識者から「平和主義者」「理想主義者」と指摘されました。
 現状はあまりにも厳しいので、”理想主義”であることをむしろ誉め言葉と受け止めます、と伝えて、「現実主義的な解決策はどのようなものか教えてください」と返したのですが、具体的な答えはありませんでした。
 私は、ペロシ米下院議長の訪台は品がなく、中国側のミサイル発射もまた品がない、見られ方も大事だ、と指摘しました。しかし、中国の識者から、台湾問題で強く主張することは正しい、とミサイル発射を正当化する意見が出たのは驚きでした。
 おそらくこれから米議員らの訪台は増えるだろうし、日本の政治家も流行を追いかけるかのように台湾へ向かうかもしれません。どうなることやら。
 感情論を排除した現実的な対応は、あなたは戦争できると思いますか、という問い掛けの中からひねり出せるのではないでしょうか。すべてを失う戦争なんてできっこないし、回避するための知恵を出し合うしかない、というのが唯一の答えのはずです。
 敵基地攻撃能力のチキンレースに日本国民は増税で付き合わされます。この物価高で増税です。ミサイルの足を長くすることがどのような効果を生むのでしょうか。中国にもタカ派がおり、反発を招きます。
 ミサイル配備先の沖縄はたまったもんじゃない。こんな現実なんてうんざりです。

10:37 | 投票する | 投票数(0) | コメント(0) | 報告事項
2022/12/21

<琉球新報社説>安保関連3文書決定 「戦争する国」を拒否する

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  2022年12月17日 05:00琉球新報

 政府は外交・安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」など新たな安保関連3文書を閣議決定した。

 戦後堅持してきた憲法9条に基づく専守防衛から逸脱し、日本が自ら戦争をする国に変貌する決定である。戦後の安保政策を大転換させるにもかかわらず、国会での議論を経ずして閣議決定という手法で決定することは断じて容認できない。
 3文書は、他国領域のミサイル基地などを破壊する敵基地攻撃能力の保有や、長射程ミサイルの増強を明記した。
 政府答弁書(2020年10月)によると「専守防衛」とは「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうもの」と説明し、政府として、「我が国の防衛の基本的な方針である『専守防衛』を維持することに変わりはない」としている。この答弁書からすると敵基地攻撃能力の保持は「専守防衛」を根本から覆す。
 外交・安全保障に関する自民党の提言には、敵基地攻撃能力の保有を求めた上で、攻撃目標として「指揮統制機能等」が含まれている。
 1956年に船田中防衛庁長官は鳩山一郎首相の答弁を代読し「他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれる」との見解を示した。
 しばしばこの部分が取り上げられるが、後段で「侵略国の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らないだろう」と答弁している。「指揮統制機能」への攻撃などは政府答弁の「防衛上便宜である」との考え方であり、政府が説明する「自衛の範囲に入らない」と解釈すべきではないか。
 さらに「他に手段がない」という政府答弁も重要だ。これまで米軍は「矛」で自衛隊は「盾」という役割分担があった。日米同盟を強化している今、「他に手段がない」状態とは言えないだろう。
 3文書では、防衛費とそれを補完する取り組みを合わせた予算水準について、国内総生産(GDP)比2%を目指すと掲げた。財源として法人、所得、たばこ税を増税して防衛費を確保していく方針だ。加えて建設国債の発行による借金で将来世代に負担を先送りまでして軍備を拡大することは許されない。
 台湾有事を口実にして、国会審議も地元自治体・住民への説明もほとんどないまま、南西諸島の軍事要塞化がどんどん進んでいる。米中対立で偶発的な衝突が起きれば、沖縄が再び戦場になりかねない。
 繰り返し主張してきたように、武力に頼らず外交努力で緊張を緩和すべきだ。

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2022/12/16

「相手を脅して抑止するのは幻想だ」 遠藤乾・東大大学院教授

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    2022年12月15日 06時00分東京新聞

<安保政策大転換 私はこう考える>
 日本は隣接する中国、ロシア、北朝鮮が核保有国で非友好的な関係にある上に、独裁国家で現状に不満を持っている点も共通し、厳しい安保環境に直面している。今後10年ほどは日本も軍備拡張をしなければならない局面だ。だが、日本政府が検討する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有は不要だと思う。相手に攻撃を思いとどまらせる抑止として機能するか、怪しいからだ。
 抑止はもともと核兵器とともに練り上げられた概念で、基本的に耐え難い苦痛を与える能力を持ち脅し、相手がそれを脅威と認識しないと成り立たない。相手基地の滑走路に撃っても1日で修復されるような被害しか与えられない通常弾頭のミサイルを仮に1000発持っても、中国のような核保有国が脅しと感じるだろうか。移動式ミサイルを正確に破壊するのも難しい。抑止ではなく制空権の確保の時間稼ぎになる程度だろう。
 逆効果を生む恐れもある。いくら日本が反撃専用で先制攻撃をしないと言っても、相手は信用しない。攻撃力を持てば、相手はそれを上回る攻撃力を持つエスカレーション(事態の深刻化)の階段を上り、際限のない軍拡を誘発する。相手を脅して抑止するというのは幻想だ。
 限られた資源は反撃能力より、抑止が破られて攻撃されてもはね返す能力の強化に充てるべきだ。中国が尖閣諸島(沖縄県)などに侵略してきても、手痛い打撃を与え、拒否できる体制を整えたい。陸上自衛隊などを大幅に再編して水陸両用部隊などを拡充し、最前線で迎え撃つ米海兵隊との連動性を高めて南西方面の防衛強化を図るべきだ。核シェルターなど人命を救える整備も一案だ。
 ロシアの侵略に抵抗しているウクライナが世界的に同情されて武器供与などを受けているのは、おおむね自国領土内で防衛しているからだ。日本も戦後、他国を攻撃しないという専守防衛で培った世界的な信用資源がある。その延長線上で防衛体制を強化する方策があるのに、反撃能力を持って自らその信用資源をかなぐり捨てる必要はない。 
(聞き手・川田篤志)
 えんどう・けん 専門は国際政治、安全保障、欧州連合(EU)。2022年より現職。北海道大教授などを歴任。今年7月、国家安保戦略などの改定に向けた政府の有識者会合に出席。東京都出身。オックスフォード大政治学博士号取得。56歳。

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2022/12/03

(朝日新聞社説)「敵基地攻撃」合意へ 専守防衛の空洞化は許せぬ

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   2022年12月2日 5時00分朝日新聞

 他国の領土に届く「敵基地攻撃能力」を持つことは、専守防衛を旨としてきた日本の防衛政策の大転換である。

 相手に攻撃を思いとどまらせる「抑止力」になる確かな保証はなく、軍事力による対抗措置を招いて、かえって地域の緊張を高めるリスクもある。

 先の戦争への反省を踏まえ、日本自身が脅威にはならないと堅持してきた方針を空洞化させることが、賢明だとは思えない。国民への説明も決定的に不足しており、このまま拙速に結論を出すことは許されない。

 ■歯止め策は示されず

 自民、公明両党がきょう、敵基地攻撃能力の保有について、正式に合意する。政府が年内に改定する安保関連3文書に明記される。

 名称は「反撃能力」だが、攻撃を受けた際の反攻に使われるだけではない。敵が攻撃に「着手」したと認定すれば使用可能だとされる。ただ、その見極めは難しく、国際法違反の先制攻撃になりかねない。

 与党合意では、着手とみなす基準は示されず、「個別具体的に判断する」という。攻撃対象も「個別具体的に判断する」。自民党が政府に提言した「指揮統制機能」は挙げられなかったものの、軍事目標に限る考えも示されていない。これではとても歯止めにはならない。

 日本に対するものだけでなく、日本と密接な関係にある他国への攻撃も、反撃対象となりうる。安倍政権下で成立した安保法制に基づき、日本の存立が脅かされる「存立危機事態」と認定された場合だ。安保条約を結ぶ米国が想定される。

 そもそも日米同盟は、守りに徹する自衛隊が「盾」、打撃力を持つ米軍が「矛」という役割分担できた。自衛隊が矛の一端を担うことで、その関係に変化はないのか。日本が攻撃的な役割を強めることは、専守防衛から一層遠ざかることになる。(以下略)


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