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◎【YouTube】 軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢(水陸機動団・陸自の南西諸島動員態勢編・13分・part5

【YouTube】軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢(沖縄本島編・10分・part4)
【YouTube】軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢(part3、奄美大島・馬毛島編16分)

【YouTube】軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢(宮古島編(part2・17分)

【YouTube】軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢与那国島・石垣島編(part1・10分
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2023/08/14

やんばる世界遺産米軍廃棄物周知行動、地元2紙が報道(8/11、12)

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やんばる世界自然遺産に登録された北部訓練場返還地の米軍廃棄物など、北部訓練場周辺の環境を調査しています。

・やんばる世界遺産米軍廃棄物周知行動、地元2紙が山の日大会とともに報道(2023年8月11日、12日)

 2023年8月11日、「山の日」に記念式典などのイベント会場前でやんばる世界自然遺産の米軍廃棄物を周知するためのスタンディングをおこないました。約30人の方がプラカードを持って集まってくれました。
以下15枚はお二人の方からの提供写真です。
(一部略)
・主催者の私
参加したみなさんのプラカード。

米軍廃棄物を一袋分持っていきました。
記念式典会場ののぼり

スタンディングの様子を翌日の地元2紙が報じました。どちらの紙面も「山の日」全国大会の記事とくっついて載せていました。

琉球新報
沖縄タイムスは山の日の琉球新報1面で報じられた内容も報じていました。
「山の日」全国大会の報道を意識していた方の多くがこれを目にしたでしょう。

やんばる世界自然遺産の、人にとって美味しい部分について報じる時、美味しくない部分も同時に報じないとやんばるの森の真実は隠されてしまいます。

今回はスタンディングによって負である米軍廃棄物残留が同時に報じられました。

記念式典会場前でスタンディングをおこなった際、大会関係者と思われる方(公人ではない)から「あなたの主張はわかるけど、今日はお祝いの場だからスタンディングはやめてほしい」と言われました。その後、その方が私の背後からカメラを向けたのに気付いたのでそちらを向いて私の姿とプラカードを撮影させました。あとで知ったのですが、スタンディング参加者も同じことを言われたそうです。聞いた特徴から同一人物と思われます。

やんばる世界自然遺産登録で利を得る人にとって、米軍廃棄物の残留は隠したい事実なのです。

米軍廃棄物に関するスタンディング、誰でもできることなのにほとんど誰もやらないので、すでに調査や抗議で手一杯の私が主催しました。

全国のみなさん、いつまで私に押し付けるつもりですか?

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2023/07/19

私たちも自治体も“平和外交”ができる

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私たちも自治体も“平和外交”ができる
      ~米中関係にからめ取られた日米同盟の呪縛から逃れるために~
                                                    
 若者の投票率が低いのは、若者が「何をしても変わらない」と社会を変えることを諦めているからと言われます。私も一時は安倍退陣に期待を持ったもののあとの菅政権―岸田政権は安倍政権とまったく変わらず、安倍政権が敷いたレールの上に立って原発推進や大軍拡などとんでもないことを実現させているので無力感さえ感じます。しかも、岸田政権は国民に説明をせず、アメリカ政府の言いなり。国民の生活や福祉をないがしろにし、災害復旧も放りなげて所得格差は広がるばかり。かつて「ジャパンアズナンバーワン」と誇示した日本の国際競争力は弱体化。このような中で若者が将来に期待を持てず、自暴自棄になる気持ちは十分に理解できます。
 しかし、戦争や気候変動、貧困など地球規模の問題はたくさんあります。私たちは政府やマスコミの情報操作に流されて社会の閉塞状態を「仕方がない」と受け入れがちですが、国際情勢を冷静にみつめ、本来あるべき姿を考えれば、いま何をするべきか見えてくるのではないでしょうか。

平和外交と対話によって相互の信頼関係を築く玉城知事の訪中

 玉城デニー沖縄県知事は今年7月3日に日本国際貿易促進協会の訪中団の一員として中国を訪問し、5日には河野洋平元衆院議長らとともに北京の人民大会堂で中国の李強首相と会談しました。これは沖縄県が掲げる平和構築と相互発展のための「地域外交」の一環で、知事は「確かな手応えがあった」と述べました。沖縄県は米軍基地の問題でアメリカ政府をはじめアメリカの政界や社会に対しても沖縄県の立場を説明し、基地負担軽減を訴えてきました。外交と軍事は国の専管事項と言われますが、民主主義社会では外交や軍事を含め国の方向性を決めるのは国民の権利です。民間や自治体が経済や文化面などで交流を深める外交は私たちの平和を守るためにも大変重要なことです。
 今回の知事訪中に関して、残念ながら日本のマスコミ報道からは平和外交の視点は感じませんでした。知事訪中に先立って中国の習主席が述べた「琉球と中国の交流」に関する発言を「中国政府の日本に対する揺さぶり」と捉え、知事訪中はそれに利用されるという疑問さえありました。Webには習主席の発言を「台湾有事に日本が介入すれば沖縄を取るという『恫喝』」「黒を白と言う国とは仲良くする必要無し」とするコメントもありました。これらの発言は何回も流されるニュースや解説を根拠にしています。たとえば昼休みにテレビ朝日「大下容子ワイド! スクランブル」を観るといつも中国や北朝鮮、韓国、ロシア・ウクライナの話題です。それが視聴者に“日本に対する脅威”と“外国不信”を植え付けます。玉城知事および沖縄県民の平和を求める立場を理解せず、世界をすべて対立構造(専制国家対民主国家など)で理解させようとするのです。
  私たちは政府の言論統制やマスコミの世論操作に洗脳されないように気をつけなければなりません。平和な社会を作るためにはどこの国とも「相互によく知り、認め合う」ことが大事で、国民同士が敬意を持ち、根気よく信頼を醸成する努力が必要です。平和な国際社会を維持するためには性悪説ではなく、性善説に立つべきだと考えます。そうすれば玉城知事が『環球時報』のインタビューで語った「平和外交と対話を通じて、緊張した情勢を緩和し、相互の信頼関係を築くことは、非常に重要なことだ」という姿勢を理解し、支持することができるでしょう。「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」はメルマガで「国同士の関係が冷え込む中で、中国との歴史・文化の関係が深い沖縄県知事が中国要人とエールを交換した意義は大きい」と知事訪中を高く評価しています。

アメリカの国益のために利用され続ける日本

 国際情勢を考えるとき、私たちはどのような視点を持てばいいでしょうか。日本の国会やメディアで語られる国際情勢はほとんどが主要先進国のパワーゲームに関係し、日米の同盟関係が日本の国益になるという前提に立っています。はたしてそうでしょうか。
 かつて日本の繊維製品や自動車、半導体、太陽パネルなどは世界を席巻するほどの技術力・生産力を持っていました。いまはどうでしょう。日米の貿易摩擦の歴史をひもといてみてください。アメリカは自国の産品を押しつけ、日本の輸出を抑える強引な“貿易戦争”をしかけました。その結果、日本の産業は衰退し、食糧自給力の低下を招きました。いま日本はアメリカの軍需産業のために兵器を爆買いさせられています。
 “世界の警察国家”を謳ったアメリカは東西冷戦後に国力を落としましたが情報産業を中心とした産業構造の転換によって回復、アメリカの後を追う中国と経済・軍事・政治の面で“世界覇権競争”を展開しています。その中で今後も日米同盟が続くならば、日本はアメリカの国力を支え、アメリカを守るために利用されるだけでしょう。日米同盟に固執する限りアメリカの属国としての運命しかないように思います。

中国を超える軍事力で戦争を回避することは可能か

 アメリカと台湾の関係を論じたアメリカにおける研究を見ると「米国が台湾防衛に乗り出すには、この地域の同盟国、とりわけ日本、オーストラリア、フィリピンからの支援が必要である」と書いてあります。しかし日本の関与は不確実で、それは「自衛以外のための武力行使を長年にわたって制限してきた日本の憲法によるところが大きい」ためとしていますが、「日本は、台湾防衛にとって最も重要な変数である」と言い、台湾防衛のためには日本に駐留する5万4千人の米軍部隊が日本国内から活動できる必要があるとしています。沖縄に本部を置く米国唯一の前方展開海兵遠征部隊やインド太平洋地域では米国最大の軍事施設である嘉手納基地の重要性も指摘。沖縄には戦闘機が無給油で台湾上空を飛行できる米空軍基地が2つあり「日本の基地を使わなければ、アメリカの戦闘機は効果的に戦闘に参加することができない」とも言います。そして、日米両国は情報・監視・偵察(ISR)能力、特に宇宙ベースの資産の統合を図るべきとし、日本が統合作戦本部の設置を決定したことを高く評価しています。
 一方「米国は当面は抑止力の強化に重点を置くべきである」とも言っています。習近平主席に「攻撃は成功せず、コストが潜在的な利益をはるかに上回る」と確信させ、同時にワシントンが「台湾を中国から永久に切り離そうとは考えていない」と安心させることの双方に重点を置くべきだというのです。すなわち、軍事力による威嚇で戦争を抑止し、一方で中国の主張にも一部理解を示すというやり方です。それは「台湾海峡で紛争が起これば、サプライチェーンが破壊され、生産ラインは停止を余儀なくされ、株式市場は急落し、世界の海運を脅かすことによって、世界経済は深刻な恐慌に陥るだろう」という事態を避けたいからです。しかし、経済恐慌を避けたいのは本心だとしても軍事力で戦争を抑えられると本気で思っているのでしょうか。
 アメリカは中国に強力な軍事力を見せつけるために琉球弧(南西諸島)を軍事基地と軍事訓練の島にすることを前提にしています。この研究は「日本の南西諸島で部隊をローテーションさせ、弾薬や重要物資の備蓄を行うべき」「日本国内の民間飛行場から作戦訓練を行うべき」などと提言しており、琉球弧を中心とする日本国内に犠牲を押しつけなければ戦争は避けられないという理屈になっています。

独立国として自立した外交を持たない日本政府

 当然ながら中国を封じ込めるために琉球弧を軍事要塞化し、住民の自治と平和な生活を奪うことは許されません。「軍事抑止力論」は不信と欲望から成り立っているのでいつまで経っても真の平和は訪れず、戦争は偶発的に勃発する恐れがあります。本当の平和を実現するためにはアメリカの言いなりではなく、自立した政策を持つべきなのです。
 アメリカが頼りにする同盟国・フィリピンはかつて米軍基地を追い出しました。今の大統領は米軍基地を受け入れていますが、フィリピンの外務長官は、米国が台湾防衛のための作戦に使用する武器を米軍基地に備蓄することを認めず、米軍がこれらの基地で給油、修理、再装填することを認めないことを明らかにしています。一方、日本政府は沖縄県民の要望に沿った交渉をアメリカ政府としようともしません。日米地位協定の改定にも消極的で、米軍機は東京都心を含め日本国中を我が物顔で飛んでいます。これでは独立国とは言えません。せめてフィリピンを見習うべきです。

日米同盟の呪縛から抜け出てアジア・太平洋諸国の立場で外交を

 私たちは国際情勢を考えるとき、日本政府と同じように日米同盟が動かないものとして考えていないでしょうか。冷めた目で見ると、米中関係でアメリカ側にがっしりと組み込まれた日本の姿はあまりにも窮屈で滑稽です。世界はアメリカの思惑で動いているわけではありません。たとえばロシアのウクライナ侵攻にどう対処するかで「グローバルサウス(G77などを指す)」の動向が注目されていますが、これらの新興国や発展途上国は今後の国際情勢を占う上で重要な役割を持っています。日本政府はアメリカやEUの手先となってこれらの国々にウクライナ支持を働きかけていますが、第二次世界大戦の反省から平和憲法を持つ日本のあるべき立場は、日米同盟の呪縛から抜け出てグローバルサウスの国々を含む国際社会で停戦と平和の手段を模索することであるはずです。
 私は、日本が国際社会で取るべき道の一つとして、アジア・太平洋地域諸国の一員として太平洋島嶼国に呼びかけ、核兵器禁止条約批准国を増やし、それを足がかりにこの地域の軍縮を進め、非武装を目指す牽引役を果たすことを提案します。
 2020年10月発効の核兵器禁止条約はすでにパラオ、クック諸島、ニュージーランド、ニウエ、東ティモール、ツバル、ベトナムなどが批准しており、日本も早く署名・批准するべきです。アジア・太平洋地域の国としての立場から日本の平和戦略を再構築し、世界に示すことは日本の若者にも新しい希望を与えるはずです。

普天間基地の移転候補地となったグアムとテニアン、米海兵隊の移転も予定

 “太平洋戦争”という名の下に激戦が繰り広げられた太平洋の島々はいまは多くが独立し、島嶼国家となっています。ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国はアメリカと自由連合協定を結んでおり、独立国ではない島としてアメリカ自治領の北マリアナ諸島(サイパン島やテニアン島、ロタ島など)、アメリカ準州のグアム島、アメリカの州の一つであるハワイ諸島などがあります。マーシャルやグアム、ハワイには米軍基地があり、軍事的に複雑な国が多いですが、共通点として「海面上昇が進めば島が沈み、国がなくなる」という切実な危機感があり、国際会議で必死に気候変動対策を訴えています。
 グアムでは沖縄の米海兵隊約4千人(当初予定約8千人)が2024年以降に移転する基地「キャンプ・ブラズ」の発足式が今年1月にありました。ここの隊舎建設や敷地造成などの費用は日本政府負担です。北マリアナ諸島には米軍基地はありませんが、テニアン島の3分の2を占める中北部は米軍管理地になっており、沖縄の米海兵隊のグアム移転に伴って米軍の軍事演習地にすることが決まっています。
 民主党政権時代の2010年、普天間基地移転先としてグアム、テニアンが候補地になったことがありました。そのとき、グアム知事は受け入れに反対し、北マリアナ諸島連邦の知事は受け入れを表明、上院議会も誘致を決議しました。実現はしませんでしたが、テニアンの受け入れ意向は地元の貧困問題が背景にあるとも言われました。私は当時、国内であれ海外であれ島に基地を押しつけることに拒否感を覚えましたが、原発や軍事基地などの巨大迷惑施設を地方に押しつける社会構造はどこでも同じような要因があります。過去の戦争体験や現在のアメリカとの関係など太平洋の島々と沖縄は共通する問題を多く抱えています。日本政府に先行して民間や自治体の外交を重ねることも重要だと思います。そのとき、沖縄の平和に対するノウハウの蓄積は大きな力になるでしょう。沖縄県のアメリカや中国との外交実績も生きてきます。

気候変動対策、軍縮など人類共通の課題に取り組む外交ビジョンを

 今の世界は戦争や経済競争、覇権争いなどによって地球の資源・資産を食い潰しています。私は、日本がアジア・太平洋諸国の一員という立場で平和憲法を高々と掲げ、人類の生存と平和、地球環境のために必死に努力することが現在の日本が抱えるさまざまな問題を克服する近道だと思います。私たちが腹をくくって真剣に取り組めば「何をしても変わらない」という閉塞状況から脱出し、明るい未来のために歩き出すことができると思うのです。

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2023/06/24

電子書籍『軍事要塞列島・日本_拒否の論理』の案内

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「静岡・沖縄を語る会」会報などの掲載された軍拡批判の記事などをまとめた電子書籍『善意基盤社会のすすめⅡ:軍事要塞列島・日本_拒否の論理』が発刊されました。6月26日(月)までPDF版(6.91 MB)を下記から無料でダウンロードすることができます。(本文検索可能)。
https://dtbn.jp/2aPGQOlR
なお26日からはアマゾンkindleストアで販売します(300円)。

14:59 | 投票する | 投票数(0) | コメント(0) | 報告事項
2023/02/25

「安保3文書」が琉球弧で進める“戦争準備”

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※ブログ「やぽねしあのホクロ」より転載
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      「安保3文書」が琉球弧で進める“戦争準備”
-島々を戦場にするな!沖縄の平和発信を受け止めよう-
                                                                
 日本政府は昨年12月、安保関連3文書「国家安全保障戦略(NSS)」「国家防衛戦略(旧「防衛計画の大綱」)」「防衛力整備計画(旧「中期防衛力整備計画」)」を改定し、閣議決定した。
 メディアは「政策大転換」「戦後安保を転換」などと報道し、岸田文雄首相も記者会見で「戦後の安全保障政策を大きく転換するものだ」と説明した。同時に岸田首相は「憲法の範囲内であり、非核三原則、専守防衛の堅持、平和国家としての歩みは今後とも不変だ」と強調した。“転換”と“不変”というまったく逆の言葉を一つの政策に使ったのだ。これは明らかに矛盾する。どちらかがウソということになるが、誰でもわかるように後者がウソである。政府が本気で「専守防衛を堅持」「平和国家として歩む」という政策を推し進める姿勢は国会でも報道でも見たことも聞いたこともない。岸田首相は「ウソも言い続ければ真実になる」という安倍晋三元首相の姿勢を踏襲しているのだろう。
 実態を見ると、岸田自公政権は明らかに戦後日本政府が掲げてきた“専守防衛”の旗をかなぐり捨て、平和憲法を踏みにじって敵基地攻撃能力(「反撃能力」)を保有し、GDP比1%程度とした防衛費(軍事費)を2027年度にはGDP比2%に増やして世界第3位の軍事大国になろうとしている。沖縄の日本復帰の際に当時の佐藤栄作首相はアメリカとの間で「有事の際は沖縄に核兵器を持ち込むことを認める」という核密約を交わしていた。その証拠となる文書まで明らかになっているのに日本政府はいまだに認めないが、台湾有事で米軍が軍事行動を起こすときには密約に則って沖縄に核兵器が持ち込まれるだろう。日本政府の“ウソと隠蔽”の防衛政策は日本列島を戦場とし、日本国民を奈落の底に落とそうとしているように見える。

「琉球弧を戦場にするな」-要塞化の現地から悲痛な訴え相次ぐ

「戦争する国は美しい大義名分を掲げるが、戦争には悪しかない。爆弾で人間の命を奪うだけである。戦争は始まってしまったら手がつけられない。犠牲になるのは一般の人々だ。大勢の人の命が奪われ、双方の国に大きな被害を出す。戦争はしてはならない。命を何よりも大切にすること、平和が一番大切だという沖縄戦の教訓を守ってもらいたい。」
「今、日本政府がすべきことは、侵略戦争への反省と教訓を踏まえ、非戦の日本国憲法を前面に、近隣の国々や地域と直接対話し、外交で平和を築く努力である。」

 これは沖縄戦に動員された沖縄県内21校の旧制師範学校・中等学校の元学徒らでつくる「元全学徒の会」が今年の1月12日に出した「沖縄を戦場にすることに断固反対する声明」の一部である。
 さらに2月6日には「第32軍司令部壕の保存・公開を求める会」が、「いかなる形の戦争であれ、戦争は悪であり、勝者も敗者もない。我々は戦争への道を歩むことに対しては断乎として反対する」と戦争反対の声明を発表した。このように沖縄島をはじめ琉球弧(南西諸島)からは「戦争反対」「琉球弧を戦場にするな」という悲痛な声が次々に聞こえてくる。これは日本政府が際限のない軍拡政策を進め、琉球弧では住民の目の前で自衛隊基地が作られ、日米共同の軍事訓練が日常的に行われるようになったからだ。先島諸島や沖縄諸島が戦場になったとき日本列島全体に戦火が広がらないという保証はどこにもない。米軍基地や自衛隊基地は全国にあるからだ。私たちは琉球弧からの「国家間の対立は外交によって解決すべきであって、決して戦争の引き金となってはいけない」という声を真正面に受け止め、「同じ志を持つ県内外の多くの人々と連帯する」という呼びかけに主体的な活動で応えるべきだ。

軍事要塞化が急ピッチで進む琉球弧のいま

 日本政府は琉球弧の軍事要塞化を強引かつ性急に進めている。

[与那国島]与那国島では2016年3月に島を二分する議論の末、自衛隊与那国駐屯地が開設され、陸上自衛隊沿岸監視部隊が配備されたが、2022年には航空自衛隊移動警戒隊が追加配備され、2023年度には陸自電子戦部隊が、さらに2026年度までに空自警戒監視部隊や陸自地対空誘導弾(ミサイル)部隊が配備されるといわれる。軍民共用のため与那国空港滑走路の2500m延伸や港湾の整備・新設が計画され、2023年度予算案には基地拡張のための用地取得費用も計上された。
 昨年11月上旬からの日米共同統合演習「キーン・ソード23」では陸上自衛隊の戦闘車両を載せた輸送機が与那国空港に降り立ち、島の公道を初めて重火器を備えた機動戦闘車が走行した。駐屯地には米国海兵隊員約40人が陸自ヘリコプターで降り立ち、指揮所を設営する演習を行った。

 また11月30日には、弾道ミサイル攻撃を受けることを想定した国民保護法に基づく住民避難訓練が内閣官房・消防庁・沖縄県・与那国町の合同主催で実施され、町民22人が参加した。自衛隊基地建設が決まったときには米軍の訓練はないとされ、ミサイル基地も考えられていなかったのに戦争が間近に感じられ、戦闘車を目の前にした島民の間に衝撃が走ったという。町議会では有事の際、島外避難者への生活支援に充てるなどの基金を設置する条例が制定された。

[石垣島]石垣島では急ピッチで自衛隊基地建設が進んでおり、今年2月から物資の搬入を始め、3月初めには12式地対艦ミサイルの発射機を含む車両約100台などを運び込み、中旬にはミサイルを含む弾薬を搬入するといわれている。防衛省は3月16日に陸自自衛隊を発足させ、4月に駐屯地開設の記念式典を行う計画で、地元新聞には駐屯地の食堂従業員募集の広告も掲載された。

 日本政府が閣議決定した安保関連3文書では、敵基地攻撃能力(反撃能力)を持つ長射程ミサイルの配備が琉球弧で実施されるとあるが、石垣市の中山義隆市長は長射程ミサイルの石垣島への配備について「基本的には容認」とし、自衛隊・米軍が民間の空港や港湾を平時から使用することにも「異を唱えず」、自衛隊と米軍との共同訓練も容認する姿勢を示している。しかし、中山市長はかつては「他国の国土を攻撃するミサイル基地なら私が反対する」「実際に米軍が上陸して訓練を行うことには反対する」などと述べたことからその変貌に批判が浴びせられている。石垣市議会は昨年12月、「自ら戦争状態を引き起こすような反撃能力をもつ長射程ミサイルを石垣島に配備することを到底容認することはできない」と訴える意見書を可決し、今年1月に日本政府に提出した。中山市長は慎重な対応を求める声を無視して1月末に尖閣諸島周辺海域で2回目の海洋調査を行うなど危機を煽り基地建設を進める強硬姿勢を崩していない。

[宮古島]2019年3月26日に宮古警備隊を配して陸上自衛隊宮古島駐屯地が開庁され、当初から地対艦ミサイル・地対空ミサイル部隊の配備が発表されていたが、2020年3月26日に長崎県の竹松駐屯地から高射特科群本部および1個中隊が移駐するとともに地対艦ミサイル中隊が新しく編成された。2023年度予算には駐屯地施設整備に約100億円が計上され、2024年以降の完成を目指して保良訓練場の覆道射場や火薬庫などが新設される。なお保良地区では2021年4月までに弾薬庫など一部施設の供用が開始されたが、弾薬類の一部搬入および本格的なミサイル搬入の際には住民の激しい抵抗運動が展開された。

[沖縄島]1月21日に沖縄県と国の共催により那覇市で106人の市民が参加して、飛来する弾道ミサイルを避けて住民が地下駐車場に避難する国民保護訓練と那覇市役所での初動対処訓練が行われた。
 さらに3月中旬には中国の侵攻を想定し、沖縄の離島住民の避難方法を検証する初の大規模な図上訓練が計画されており、与那国町・石垣市・宮古島市・多良間村・竹富町の5市町村が参加する。訓練では観光客を含めた約12万人が九州に避難することを想定している。
 前者の国民保護訓練に対しては、突然の発表にも拘わらず訓練に反対する市民が5日前から市役所前に集まり「危機を煽るミサイル避難訓練は即刻中止を」と訴えた。
 高射特科連隊中隊などが駐屯する陸上自衛隊勝連分屯地(うるま市)には2023年度中に「第7地対艦ミサイル連隊(仮称)」の本部を新設し、指揮下にミサイル中隊を配備する計画がある。これに対し、「ミサイル配備から命を守るうるま市民の会」はミサイル配備に反対する運動を展開している。また、辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議は3月中旬まで「辺野古新基地建設の断念を求める国会請願署名活動」を行っており、2月12日には「台湾有事」を起こさせない・沖縄対話プロジェクトの第一回沖縄・台湾対話シンポジウムが開催された。2月26日には戦争に反対する全県組織の立ち上げをめざして、<争うよりも愛しなさい「島々を戦場にするな! 沖縄を平和発信の場に!」 2・26緊急集会>が開かれる。

[奄美大島]奄美駐屯地・瀬戸内駐屯地は宮古島駐屯地と同日に開庁したが、警備部隊、中距離地対空誘導ミサイル(中SAM)運用部隊(奄美駐屯地)、地対艦誘導ミサイル(SSM)運用部隊(瀬戸内駐屯地)が配備されている。

[馬毛島]大きな山場を迎えているのが馬毛島(鹿児島県西之表市)である。米軍の空母艦載機着艦訓練(FCLP)を行い、琉球弧に展開する自衛隊・米軍基地の大規模な兵站・後方支援拠点として日本政府は馬毛島に目を付け、周辺自治体や住民の反対を押し切って島を丸ごと買い上げ、今年1月12日、反対派市民が抗議集会を開く中、自衛隊基地建設の本体工事に着手。8年かかる工事を4年で終わらせ、米軍の要請に応えて2025年度にはFCLP運用をするという。
 反対派だった西之表市長は態度を鮮明にしない実質容認に転じ、市議会は昨年9月に馬毛島小中学校跡地売却・馬毛島市道廃止・隊員宿舎用地(種子島内)売却の3議案を可決した。400人を超える市民からの差し止めを求める住民監査請求に対して西之表市は不受理とし、市民の意思は踏みにじられた。昨年12月から反対派市民の市長リコール運動が展開されたが、請求は不成立に終わっている。地元の種子島漁協は、3分の2以上の組合員の同意を得て防衛省が提示した総額22億円の漁業補償金受け入れを決めた。1日10~15隻の漁船が日給9万円で動員され、自衛隊基地建設作業員の送迎や周辺海域の警戒に当たっている。

問われるメディアの姿勢 使命は「国家権力に戦争をさせないこと」

 琉球弧の軍備増強を際限なく進め、戦争の危機を煽る根拠になっているのが12月16日に日本政府が閣議で決めた「安保関連3文書」である。ここには那覇市に司令部がある陸上自衛隊第15旅団を「師団」に格上げすることや司令部の地下化、宮古島や石垣島に敵基地攻撃能力を持つミサイルを配備することなどが盛り込まれており、防衛費(軍事費)の増額分の多くは琉球弧につぎ込まれるだろう。
  閣議決定翌日の新聞各紙1面トップはすべて安保3文書のことだったが、沖縄県2紙と中央紙には大きな温度差があった。琉球新報の見出しは「安保大転換 沖縄最前線 首相『南西部隊を倍増』」で、沖縄タイムスを含め紙面には「沖縄 戦略拠点に」「命の危険増す県民」「南西地域の防衛強化」「有事に標的懸念」など沖縄が戦場になる危機感が現れた言葉が踊った。両社の社説は「[安保大変容:3文書閣議決定]選挙で信を問うべきだ」(沖縄タイムス)、「安保関連3文書決定 『戦争する国』を拒否する」(琉球新報)と主張した。
 それに比べて中央各紙は「戦後日本の安保 転換」(朝日新聞)、「反撃能力保有 閣議決定」(毎日新聞)、「専守防衛 形骸化」(東京新聞)、「『反撃能力』保有明記」(読売新聞)、「反撃能力保有 歴史的転換」(産経新聞)などサラッと報じた。社説では琉球弧の軍事要塞化には触れず、国の大転換なのに議論がなかったことを指摘する社が多かった。ただし読売・産経2紙は「国力を結集し防衛態勢強めよ」(読売新聞社説)のように安保3文書を評価し、「中国の脅威」を煽った。読売新聞の村尾新一政治部長は一面で、<反対派は、「周辺国との緊張をあおって軍拡競争を招く」と反撃能力などを批判する。だが、一方的に軍拡を進めて緊張をあおっているのは中朝露の方ではないか。あたかも日本が戦争に積極的に参加するかのように、「戦争の足音が聞こえる」といった論調が出始めたのも筋違いだ>と軍拡に反対する運動への批判までしている。
 メディアの大事な使命は権力のチェックであり、政府に戦争をさせないことだ。第二次世界大戦でメディアが戦争推進側に立ったことを反省するならいま、第一次安倍政権以降の政府が着々と準備してきた“戦争への道”がいまどの段階なのかチェックするのがメディアの役割だろう。米国の世界戦略の中にがんじがらめにされた日本政府を批判し、戦争準備が目の前に見える琉球弧の現実から「戦争反対」を体を張って叫ぶべきだ。メディアの存亡を決めるのは販売部数ではなく、「権力側に立つか、民衆側に立つか」なのだから。

防衛費増額は福祉・医療・教育などを削り、税外収入・増税で財政が破綻

 安保3文書によると、2023年度から5年間の防衛関連費(海保分を含む)をそれ以前の5年間の約1.6倍に当たる約43兆円とし、2027年度には現在の約2倍のGDP比2%程度にしたいとする。しかし、財源にあてがあるわけではなく、新型コロナ対策の予備費の残りや東日本大震災復興特別所得税を流用し、福祉・医療・教育などに使うべき予算を削った上に足りない分は増税で賄うという。2月3日には「防衛力強化資金」を新設し、本来なら借金返済に充てるべき税外収入(国有資産の売却や特別会計からの繰入など)を組み入れて防衛費の財源とする「財源確保法案」を閣議決定し、国会に提出した。誰が考えても無理なやり方で、なけなしの金を生産性のない兵器や基地、軍隊に流し込むということだ。
 「軍事費GDP2%以上」は米国・トランプ政権が2020年から同盟国に求めてきた内容で、これを受けて自民党が衆院選の公約に「防衛費2%」を掲げたものだ。下から積み上げた額ではないので軍事専門家からも自衛隊の身の丈に合わないと指摘されている。いま、自衛隊は24万7154人の定員に対して隊員は23万2509人(2021年3月末現在)しかおらず、1万4645人の欠員がある。これでは部隊の増強はできない。増額される防衛予算の大部分は装備費や研究開発費に回すしかないだろう。米国軍事産業界が喜びそうな話だ。そのミサイルや戦闘機、戦車、弾薬などは琉球弧に持ち込まれる。
 日本の2022年度予算に占める防衛費は6兆1744億円(補正予算を含む)。仮にGDPの2%を防衛費にすると約11兆3千億円となり、約5兆1千億円の増額となる。2021年の世界の軍事費ランキングで9位の日本は、GDP比2%になると米国、中国に次ぐ世界第3位の軍事大国に躍り出る。しかし、それでも金額は遠く中国に及ばない。すなわち、福祉・医療・教育などがおろそかになり、税金が高くなって国民が窮乏生活を堪え忍び、国が膨大な借金を抱えて防衛費を増大させても中国に“脅し”をかけるほどの「抑止力」は持てないのだ。戦争になる前に日本の国は亡びるかもしれない。「欲しがりません 勝つまでは」の精神で戦争を回避し、平和な社会を作ることはできない。

「戦争をしない・させない」沖縄の心を受け止めて活動を

 日本政府の憲法を無視した防衛政策の大転換・大軍拡に対して平和外交を求める政策提言も相次いでいる。
 日米や東アジアの外交の多様化を図る民間シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」は昨年11月28日、「戦争を回避せよ」とする政策提言を発表した。
◎政策提言「戦争を回避せよ」 https://www.nd-initiative.org/research/11342/
 提言は「安全保障政策の目標は、何よりもまず、戦禍から国民を守ること」であり、「いかにして戦争を回避するかを活発に論じることこそ政治の使命」と主張する。日本政府は日米同盟と抑止力の強化を掲げるが、日本は同盟国から見捨てられるか、同盟国の戦争に巻き込まれるかという「同盟のジレンマ」に直面。台湾有事に際しては、日本が米国に加担すれば中国との戦争に巻き込まれ、中立の姿勢をとれば日米同盟は崩壊するということだ。提言は、日本独自の外交戦略が必要で、例えば、米国に対しては、米軍の日本からの直接出撃が事前協議で必ずしも「YES」ではないことを伝えて過度の対立姿勢をいさめ、台湾に対しては、交流を維持しながら過度な分離独立の姿勢をとらないよう説得し、中国に対しては、台湾への安易な武力行使に対しては国際的な反発が中国を窮地に追い込むことを諭し、日本の軍事面での米国支援を伝えながらも台湾の一方的な独立の動きは支持しないことを明確に示すことで自制を求めることができるという。いかに困難であっても戦争を避けなければならないという国際世論を強固にするため、政治は最後まで外交を諦めてはならないと主張している。

 研究者、ジャーナリスト、NGO活動者らによって昨年10月に発足した「平和構想提言会議」は12月15日、政府による「国家安全保障戦略」に対置する「平和構想」を提言した。
◎戦争ではなく平和の準備を ―“抑止力”で戦争は防げない―
 提言は、「日本は平和主義の道を歩みつづけるのか、それともアジア近隣諸国との対立と紛争への道に進むのか、その分岐点に立っている」とし、「日本国憲法の平和主義の原則に基づき、軍拡ではなく軍縮を進めること、緊張緩和と信頼醸成のための平和外交の展開こそが、アジア地域の平和を実現する」と主張する。そして、日本政府の戦争に繋がる政策を批判したあと、「平和のために何をすべきか――今後の課題」を具体的に提示し、議論の深化と行動を呼びかけている。また、国境を越えた市民社会の連携のためにこの提言を東アジア諸国および米国、ロシアの市民社会にも示すという。
 今年2月12日、那覇市で 「『台湾有事』を起こさせない!沖縄対話プロジェクト 第一回沖縄・台湾対話シンポジウム」が開催され、台湾側、沖縄側双方からコーディネーターが参加して意見交換が行われた。今後もさまざまなところで具体的な平和構築の活動が続くことを期待したい。
 私たちは「戦争放棄・戦力の不保持・交戦権の否認」を宣言し、全世界の国民の平和的生存権を謳う憲法を持っている。日本政府が民主主義を踏みにじる形で戦争への道を進むことが憲法の平和精神からも軍事論からも国民生活からも間違っていることを訴え、沖縄の心をしっかりと受け止めながら活動していかなければならない。

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2023/01/16

次の大戦の最初の戦い――中国による台湾侵攻を想定したウォーゲーム

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2023年1月13日 15:00 小西 誠

2023年1月 CSIS国際安全保障プログラムの報告書
マーク・F・カン、シアン マシュー・カンシアン、エリック・ヘギンボサム

編集者註 
米国シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)による「台湾有事のウォーゲーム」は、2026年に「台湾有事」事態が発生したことを想定したもので、約1カ月間の中国軍対日米台軍の戦争をシュミレーションしたものである。
本文に見るように、このシュミレーションは、24回にわたり、いくつもの想定を替えて実施されたとされるが、最も可能性が高いとされる基本シナリオでは、米軍の潜水艦や爆撃機、戦闘機は、自衛隊の支援も得て中国の強襲揚陸艦隊を無力化したが、米軍は空母2隻ほか多数の艦艇、航空機を270機を失うとされ、日本もまた、多数の艦艇、航空機を失うと想定された(本文参照)。
また、米軍兵士は、最大で約1万人の死傷者が生じるとされているが、自衛隊の死傷者は明記されていないが、ほぼ同数の死傷者が生じると思われる。
そして、このいずれの想定でも、中国軍が台湾へ強襲上陸作戦を行った場合、ほとんど壊滅状態だったことが示されている。

つまり、これは中国側からする、「台湾武力解放」=台湾占領が、実際上からも不可能であることの示唆である。
このCSISの軍事的結論は重要である。
昨年から、自衛隊制服組を中心にしながら、「台湾有事」の様々なシナリオが唱えられつつあるが、いずれの「台湾有事シナリオ」なるものも、荒唐無稽の類いである。
日本の軍事費2倍化――その核心は、琉球列島のミサイル攻撃基地化であり、「台湾有事」態勢であるが、この事態が急ピッチで進むなか、「台湾有事」の本当の実態(その荒唐無稽さを含む)を知り、そのもたらす凄まじい結果を予測することも必要である。

繰り返すが、このシュミレーションは、中国軍対米日台貴軍の戦闘の「約1カ月」の結果である。もしも、実際の戦闘が始まれば、この「第1会戦」の後(双方の勝敗なし)、数年後には戦力回復後の「第2会戦」が始まるだろうし、その戦争はいずれにしろ、アジア太平洋全域での戦争へ、そして世界核戦争へ広がっていくことは不可避だ。
(CSISの結論も、「最後に、戦争はこの初期段階を経た後も終結せず、数ヶ月あるいは数年間引きずるかもしれない。紛争は、定期的な停戦を伴うエピソード風なものになるかもしれない。このプロジェクトが「次の戦争の最初の戦い」と呼ばれているのには理由がある」としている)。
本来、CSISのシュミレーションは、この戦争の最終的結果までもシナリオを書いておくべきであった。

私たちは、今現在、日本の防衛費2倍化――日米の南西シフト発動(2023/1/12、日米安全保障協議委員会(2+2))の中、アジア太平洋――琉球列島の島々で何が起こっているのかを把握するためにも、この戦争の「予測される実態」を把握すべきである。

なお、このCSISの「台湾有事」の予測は、軍隊の被害予測は行っても、その戦争に渦中にたたき込まれる、沖縄(日本)・台湾の市民の犠牲については全く触れてもいないし、考慮してもいない。この予測をしない現代戦争のシュミレーションは、重大な欠陥をもっていると言わねばならない。
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目次
●全体の要約
●成功の条件
●政治と戦略
●理念
●兵器とプラットフォーム
●中国の経済と軍事台頭
●台湾は最も危険な米中間の一触即発の場所
●ウクライナの戦争との類似点と相違点
●機密扱いのウォーゲームの透明性の欠如
●運用成果を検証するウォーゲームの必要性

●全体の要約
・もし、中国が台湾への水陸両用侵攻を試みたらどうなるのか? 
CSISは、中国が台湾に水陸両用で侵攻した場合のウォーゲームを開発し、24回実行した。ほとんどのシナリオで、米国・台湾・日本は、中国による通常の水陸両用侵攻を撃退した。

・この防衛には大きな犠牲が伴った。
米国とその同盟国は、数十隻の艦船、数百機の航空機、数万人の軍人を失った。台湾は経済的な打撃を受けた。
さらに、この大きな損失は、長年にわたって米国の世界的な地位を損なった。中国も大きな損失を被り、台湾の占領に失敗すれば、中国共産党の支配が不安定になる。

・米国の高官や民間の専門家も、中国が台湾を統一することに懸念を表明している。中国の意図は不明だが、軍事侵攻はあり得ない話ではなく、中国にとって「台湾問題」の最も危険な解決策となるため、米国の国家安全保障論で注目されるのは当然である。米軍にとって「台湾有事はペーシングシナリオ」であるため、非常に重要。

・このCSISプロジェクトでは、2026年に中国が台湾に水陸両用で侵攻した場合を想定し、歴史データとオペレーションズ・リサーチを用いてウォーゲームを設計した。いくつかのルールは、中国軍とのアナロジーを用いて設計。

・基本的シナリオは、全部で 24 回の繰り返しにより、紛争の輪郭が描かれ、米国が直面する主要な脅威について首尾一貫した厳密な図を作成。

●結果はー
中国は、開戦直後の砲撃で台湾の海軍と空軍の大半を破壊する。中国海軍は強力なロケット部隊で台湾を包囲し、包囲された台湾への船や航空機の輸送を妨害する。何万人もの中国兵が軍の水陸両用船と民間のロールオン、ロールオフ船で海峡を渡り、空襲と空挺部隊がビーチヘッド(橋頭堡)の後ろに上陸した。

・しかし、最も可能性の高い「基本シナリオ」では、中国軍の侵攻はすぐに判明する。
・中国の大規模な砲撃にもかかわらず、台湾の地上軍は海岸線に待ち構え、侵略者は物資の補給と内陸部への移動に苦心する。
・一方、米軍の潜水艦、爆撃機、戦闘機、攻撃機は、しばしば日本の自衛隊によって強化され、中国の水陸両用艦隊を急速に麻痺させる。
・中国が日本の基地や米軍の水上艦船を攻撃しても、この結果を変えることはできない。台湾の自治は維持される。
・ここには一つの大きな前提がある。台湾は抵抗しなければならず、降伏してはならない。米軍を投入する前に台湾が降伏してしまえば、あとは無益なことになる。

・この防衛には、高いコストがかかる。
・日米両国は、何十隻もの艦船、何百機もの航空機、そして何千人もの軍人を失う。
・このような損失は、何年にもわたって米国の世界的地位を損ねることになる。
・台湾の軍隊は壊れていないものの、著しく劣化しており、防衛のために放置されているのは電気も基本的なサービスもない島で、経済がダメージを受ける。中国も大きな被害を受けている。
・中国海軍は壊滅状態、水陸両用部隊の中核は崩壊し、何万人もの兵士が捕虜となっている。

●成功の条件
24回のゲームの繰り返しを分析した結果、中国の侵略に打ち勝つための4つの必要条件が示された。

1. 台湾軍は戦線を維持しなければならない。
台湾の地上軍を強化する。中国軍の一部は常に台湾に上陸するため、台湾の陸上部隊はいかなる上陸地点も封じ込め、中国の兵站が弱まったところで強力に反撃できる能力が必要である。しかし、台湾の地上軍には大きな弱点がある。そのため、台湾は隊員を補充し、厳しい統合訓練を行わなければならない。陸上部隊は台湾の防衛努力の中心とならなければならない。

2. 台湾に「ウクライナモデル」は存在しない。
平時には、米国と台湾が協力して台湾に必要な兵器を提供しなければならない。戦時には、米国が台湾防衛を決定した場合、米軍は速やかに直接戦闘に従事しなければならない。
ウクライナ戦争では、米国と北大西洋条約機構(NATO)は、直接戦闘に部隊を派遣していないが、大量のの機材や物資をウクライナに供給している。ロシアはこの陸路の流れを阻止することができない。
しかし、中国は台湾を数週間あるいは数ヶ月間孤立させることができるため、「ウクライナモデル」を台湾で再現することはできない。台湾は必要なものをすべて持って戦争を始めなければならない。さらに、米国による遅延や中途半端な措置は、防衛を困難にし、米国の犠牲者を増やし、中国がより強力な拠点を作ることを許し、エスカレートのリスクを高めることになる。

3. 米国は日本国内の基地を戦闘行為に使用できるようにする必要がある。
日本との外交的・軍事的関係を深める。他の同盟国(オーストラリアや韓国など)も中国との広範な競争において重要であり、台湾の防衛において何らかの役割を果たすかもしれないが、日本が要となる。在日米軍基地の使用なしには、米国の戦闘機・攻撃機は効果的に戦争に参加できない。

米国は、中国の防御圏外から中国艦隊を迅速かつ大量に攻撃できるようにしなければならない。長距離対艦巡航ミサイルの兵器を増産する。スタンドオフ対艦ミサイルを発射できる爆撃機は、米国の損失を最小限に抑えながら侵攻を撃退する最短の方法である。このようなミサイルを調達し、既存のミサイルをこの対艦能力で改良することが、調達の最優先事項である必要がある。

●政治と戦略
▪ 戦争計画の前提を明確にする。戦前の台湾や中立国への派兵を前提とした戦争計画と、政治的現実の間には、一見したところギャップがある。

▪ 中国本土を攻撃する計画を立ててはならない。核保有国とのエスカレーションの重大なリスクのため、国家司令部が許可を留保する可能性がある。

▪ 多くの死傷者を出しても作戦を継続する必要性を認識すること。3週間後には、米国はイラクとアフガニスタンでの20年間の戦争の約半分の死傷者を被ることになる。

▪ 台湾の空軍と海軍の戦力を非対称化する。「ヤマアラシ戦略」の採用が叫ばれているにもかかわらず、台湾はいまだに国防予算の大半を、中国がすぐに破壊してしまうような高価な艦船や航空機に費やしている。

●理念
▪ 日本とグアムの航空基地を強化・拡充する。分散・強化でミサイル攻撃の効果を薄める。
▪ 米空軍のドクトリンを改訂し、地上での航空機の生存能力を高めるための調達を再構築する。航空機の損失の9割は地上で発生した。
▪ 中国大陸の上空を飛行する計画を立ててはならない。中国の防空は強力すぎるし、目標が作戦結果を出すのに時間がかかるし、台湾周辺の航空任務が優先される。
▪ 海兵隊沿岸連隊と陸軍の多領域任務部隊の限界を認識し、その数を制限すること。これらの部隊は中国に対抗するために設計され、ある程度の価値を提供しているが、政治的、作戦的な困難から、その有用性には限界がある。
▪ 脆弱性を生むような危機的な配備は避ける。軍事ドクトリンでは、危機の際に抑止力を高めるために前方展開することになっているが、こうした部隊は魅力的なターゲットとなる。

●兵器とプラットフォーム
▪ より小型で生存性の高い艦船にシフトし、不具合のある艦船や多重沈没に対処するための救助メカニズムを開発する。水上艦は極めて脆弱であり、米国はゲームの繰り返しで、通常2隻の空母と10~20隻の大型水上戦闘機を失う。
・ 潜水艦をはじめとする海底プラットフォームを優先的に投入。潜水艦は中国の守備範囲に入り、中国艦隊を大混乱させることができたが、数は不十分であった。
▪ 極超音速兵器の開発と配備を継続するが、ニッチな兵器であることを認識する。コストが高いため在庫が限られ、膨大な数の中国の航空・海軍プラットフォームに対抗するのに必要な数量に達しない。
▪ 戦闘機よりも爆撃機部隊の維持を優先させる。爆撃機の航続距離、ミサイルのスタンドオフ距離、高い搭載能力は、人民解放軍に困難な課題を突きつけた。
▪ より安価な戦闘機を生産し、ステルス機の取得と非ステルス機の生産を両立させる。紛争初期に多くの航空機が失われたため、空軍は戦闘機・攻撃機が不足し、損失を維持できるだけの大規模な部隊を持たない限り、紛争の二の舞になる危険性がある。

・最後に、このプロジェクトとその提言には、いくつかの注意点がある。侵略のモデル化は、それが不可避である、あるいは可能性が高いということを意味するものではない。
中国指導部は、台湾に対し、外交的孤立、グレーゾーンでの圧力、経済的強制といった戦略を取るかもしれない。仮に中国が軍事力を選択したとしても、それは完全な侵略ではなく、封鎖の形を取るかもしれない。しかし、侵略のリスクは十分に現実的であり、破壊的な可能性があるため、分析する価値はある。(以下略)

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2023/01/16

「馬毛島」をめぐる市長と市民の苦悶―軍事基地建設で揺れる...

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川端俊一さんのブログを紹介します。全文は直接アクセスしてください。
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「馬毛島」をめぐる市長と市民の苦悶――軍事基地建設で揺れる鹿児島県西之表市で《前編》
2023年1月12日 23:45 川端俊一

 この地で今、起きていることをほとんどの国民が知らずにいるのは、どう考えてもおかしいと思う。「基地」をめぐり、沖縄同様のニッポンの現実が、ここから見えているのだ。「鉄砲伝来」で知られる鹿児島県・種子島。その沖合にある馬毛島――。その島がほぼ丸ごと、自衛隊とアメリカ軍が共同使用する巨大軍事基地にされようとしている。2023年1月12日、防衛省は基地の島での本体工事に着手した。一方、基地反対を掲げて当選した市長は計画への賛否を明確に表明せず、反対派の市民らは厳しく批判。昨年末には市民有志が「公約違反」としてリコール署名運動も行っている。「有事」の危機が煽られ、「防衛力強化」の名のもとに南西諸島で進む軍備増強は、島の人々と地域社会に何をもたらしているのか。 

目次
 1、賛否を問われ・・・
 2、住民説明会で
 3、「馬毛島基地」建設とは
 4、「受忍限度を超える」騒音が
 5、自然と文化の「原風景」
 6、「所見」に込めた思い

1、賛否を問われ・・・
 1月11日、種子島の西之表市役所と鹿児島市の県庁を防衛省の担当幹部らが訪れた。八板俊輔(やいた・しゅんすけ)・西之表市長と塩田康一知事に対し、12日に公告する馬毛島での基地建設や訓練実施に関する環境影響評価(アセスメント)の評価書の内容、基地建設の本体工事着手の日程などを伝えるためだ。

 同省幹部との会談後、八板市長は記者団から改めて基地建設への賛否を問われたが、この日も明言はしなかった。

 「申し上げている通り、まだそういう段階ではないと思っております」  

 「環境アセス以外にも市民の不安とか、あるいは期待とかいうものがありますけれども、それの(判断)材料というのはまだこれから引き出すべき余地が残っておりますので、そういうことを踏まえて申し上げたいと思います」

 翌12日、防衛省は環境影響評価書を公告したうえで、すぐに馬毛島での本体工事に着手。同日午後、西之表市や東京の首相官邸前では、着工に抗議する市民らの集会が行われた。

 馬毛島での基地建設問題が浮上して16年。事態は新たな段階を迎えた。全国的には大きなニュースにはならないが、この国の「民主主義」そのものが問われるような状況が南の島で続いている。 

 2か月ほど前にさかのぼろう。

2、住民説明会で (以下略)

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2022/12/30

コラム@市民連合ひろば:「敵基地攻撃能力の保有」は「政治の堕落」

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    半田滋(防衛ジャーナリスト、元東京新聞論説兼編集委員)
    
岸田文雄政権は安全保障関連3文書を改定し、安全保障政策を大転換させた。「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言い換えて保有を明記した。反撃と言いながら、実際には「先制攻撃」を容認したものだ。

こうした言い換えは「全滅」を「玉砕」、「敗走」を「転進」と呼んできた旧日本軍と変わりなく、国民をミスリードする詐欺的手法である。政府は「専守防衛は堅持」「先制攻撃はしない」と強調するが、詭弁にすぎない。

なぜ、敵基地攻撃能力の保有が「先制攻撃」になるのか。

それは安倍政権で制定された平和安全法制(安全保障関連法)により、これまで「行使できない」とされてきた集団的自衛権を存立危機事態であれば「行使できる」と変えたからだ。

存立危機事態は「密接な関係にある他国」に対する武力攻撃が発生して日本の存立が脅かされる事態を指し、政府は米国を「密接な関係にある他国」とみているから、米国への攻撃があれば、日本は米国を守るために戦うことができる。

米国という「国」が攻められた時に限らない。政府は米軍の損耗は存立危機事態にあたり得るとの見解を示しているので、日本は米国や米軍を守るために集団的自衛権を行使することが合法化された。

なぜ米国や米軍が攻撃されると日本の存立危機事態になるのか、日本は独立国家であって米国の付属物ではない。米国の戦争に参戦するか否か独自に判断できるはずだが、思考停止して米国とともにあることを決めたのが安全保障関連法なのだ。

海外における武力行使を意味する集団的自衛権行使を解禁したことから、元内閣法制局長官や多くの憲法学者が「違憲」と批判する「天下の悪法」である。

今回、改定された国家防衛戦略(旧防衛計画の大綱)には重要な一文がある。

「この政府見解は、2015年の平和安全法制に際して示された武力の行使の3要件の下で行われる自衛の措置にもそのまま当てはまるものであり、今般保有することとする(※筆者注・敵基地攻撃)能力は、この考え方の下で上記3要件を満たす場合に行使し得るものである」

「この政府見解」とは敵基地攻撃の合憲性を条件付きで示した鳩山一郎元首相の見解(1956年2月29日衆院内閣委員会)を指し、「武力の行使の3要件」とは、安倍政権で定めた武力行使ができる要件のことで「日本への武力攻撃が発生した場合」と「存立危機事態が認定された場合」の二つが記されている。

この一文の根幹をわかりやすくいえば、「存立危機事態における敵基地攻撃は可能」となる。日本が攻撃されていないにもかかわらず、日本は米国の交戦相手を攻撃できるというのだ。これこそが先制攻撃である。

この結果、国内法の安全保障関連法で認められた集団的自衛権行使が国際法では許されない先制攻撃に該当することがあるという矛盾を抱えることになった。

とはいえ、自衛隊は「専守防衛」の制約から攻めてくる敵を撃退する訓練しかしていない。攻撃は想定しておらず、他国のどこに基地があるのか正確な地点を知る術さえない。偵察衛星を導入したり、ヒューミントと呼ばれるスパイを養成したりするには巨額の費用と長い時間がかかる。

では、どのようにして攻撃を仕掛けるのか。

国家防衛戦略は「我が国の反撃能力については、情報収集を含め、日米共同でその能力を効果的に発揮する協力体制を構築する」とした。解決策は日米一体化だというのだ。

米軍は偵察衛星、各種レーダー、ヒューミントなどを組み合わせた高い情報収集能力を持ち、自衛隊の情報不足を補うことができる。その性能を熟知する米軍からの命令で、米政府から購入する巡航ミサイル「トマホーク」を自衛隊が発射する日がいずれ来るのだろう。(以下略)

11:24 | 投票する | 投票数(0) | コメント(0) | ニュース
2022/12/17

この国を大軍拡・大増税の「軍事優先国家」にしていいのか

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        この国を大軍拡・大増税の「軍事優先国家」にしていいのか
              -岸田政権の「安保関連3文書」改定を許さない-

 一体この国はどうなってしまったんだろう。国民は77年前の“非戦の誓い”を忘れてしまったのだろうか。国の最高規範である憲法は「戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認」を高らかに謳っているのに、安倍政権は戦争法制(“平和安全法制”)を成立させて「戦争ができる国」の体制を作り、岸田政権も中国の脅威を煽ってミサイルの配備や兵器開発、軍事演習の展開など大軍拡を進め、“専守防衛”の旗を降ろす敵基地攻撃能力の保持まで決定しようとしている。
 国に煽られて最近の世論調査では「防衛費の増額」に賛成が55%(NHK)、日本の「反撃能力(敵基地攻撃能力)」保有に賛成が64%(紀尾井町戦略研究所)となっており、世論の右傾化を感じるが、後者の同じ調査では「日本が武力攻撃されても戦闘に参加しない」とする人は65%に達しており、過去の調査でも「国のために戦う」とした日本国民は13.2%(World Values Survey2021)と世界最低。自衛隊増強については内閣府調査(2018年)で「今のままでよい」が60.1%ともっとも高くなっている。これらのデータは国民に大軍拡の実態が知らされず、国会での議論も少なく国民の意識が混乱したまま日本が“戦争への道”を進んでいることを示している。
 折しもサッカー・ワールドカップの試合で日本チームは軍隊を持たない国・コスタリカのチームに敗北した。スポーツと軍事は関係ないが、地球幸福度世界第一位の国・コスタリカの姿が日本が本来目指していた国の形ではなかったか、という感慨を抱いたのは私だけだろうか。

岸田政権は年内に「安保関連3文書」を改定(閣議決定)の方針

 岸田首相は今年の12月中に閣議決定によって安保関連3文書「国家安全保障戦略(NSS)」「防衛計画の大綱(防衛大綱)」「中期防衛力整備計画(中期防)」を同時に改定する方針を明らかにしており、その内容を検討する「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は11月22日、報告書を岸田首相に提出した。国家安全保障戦略と防衛大綱は10年程度、中期防は5年間の計画で、現在の国家安全保障戦略は2013年、防衛大綱は2018年に改定され、中期防は2018年 12月に策定されているが、3文書の同時改定は安倍政権時代から進められてきた「戦争ができる国=軍事優先国家体制」作りの一つの到達点とも言える。

国民に「防衛力強化前提の国防意識」を強制する有識者会議報告書

 有識者会議は今後約10年間の国家安全保障の羅針盤となる国家安全保障戦略を含む「3文書」策定に向け、外交・防衛、経済安全保障、技術など多岐にわたる分野において「安全保障分野の知識・経験豊富な有識者の方々から幅広い知見」を集約して提言するとしているが、運営は事務局主導で進み、報告書の内容は政府方針通りとなっている。政府は防衛大綱を「国家防衛戦略」、中期防を「防衛力整備計画」と改称し、3文書をアメリカの文書と整合性がとれるように整理する方針という。日米の軍事体制一体化(自衛隊が米軍の統制下に)がここにも現れている。
 有識者会議の報告書でまず私が気になることは、「<国民一丸>となって戦時体制を構築しよう」という誘導である。国民に「自分の国は自分たちで守るとの当たり前の考えを改めて明確にする」ことを求め、「防衛力強化の目的を国民に『我が事』として受け止め、理解して頂けるよう政府は国民に対して丁寧に説明していく必要がある」「自らの国は自ら守るとの国民全体の当事者意識を多くの国民に共有して頂くことが大切である」「防衛力の抜本的強化のための財源は、今を生きる世代全体で分かち合っていくべきである」など、<防衛力強化=日本の軍事大国化>を大前提に国民の防衛意識の昂揚を煽っている。

宇宙・サイバー・電磁波などにも広がる戦闘と科学技術の軍事利用

 報告書は、我が国周辺の「安全保障環境の厳しさ」に加えて宇宙・サイバー・電磁波などにも広がる「戦闘領域の拡大」を挙げ、「何ができるかだけではなく、何をなすべきかという発想で、5年以内に防衛力を抜本的に強化しなければならない」とした。<「何をなすべきか」=防衛力強化>の押しつけがここでも見られるが、「戦闘領域の拡大」は「宇宙、サイバー、AI、量子コンピューティング、半導体など最先端の科学技術は経済発展の基盤と同時に防衛力の基盤にもなっている」とも指摘しているように、中国とアメリカの先端技術分野における激しい覇権争いを反映している。アメリカと中国にとって軍事と経済は先端技術によって固く結ばれており、報告書でも「先端的な技術は、ほとんどが民生でも安全保障でも、いずれにも活用できるマルチユースである。言い換えれば、民生用基礎技術、安全保障用の基礎技術といった区別は、実際には不可能になってきている」として「政府と大学、民間が一体となって、防衛力の強化にもつながる研究開発を進めるための仕組み作り」が早急の課題としている。日本政府はすでに大学などの自由な研究資金を締め付け、日本学術会議会員の任命拒否問題に現れたように学術研究の統制を図っている。
 防衛産業の振興も掲げており、報告書は「防衛装備移転三原則及び同運用指針等による制約をできる限り取り除き、我が国の優れた装備品等を積極的に他国に移転できるようにするなど、防衛産業が行う投資を回収できるようにする」と提言している。つまり、日本の兵器を輸出して利益を上げるということだ。ちなみに「防衛装備移転三原則」は「武器輸出三原則」を撤廃して武器輸出ができるようにしたもの。このような誤魔化しの表現で大軍拡が進んできたことを私たちは知らなければならない。

“専守防衛”を踏みにじる「敵基地攻撃能力(反撃能力)」保有へ

 今回の最大の問題は<反撃能力・継戦能力>である。報告書は「周辺国等が特に変則軌道や極超音速のミサイルを配備している」ので「反撃能力の保有と増強が抑止力の維持・向上のために不可欠」とする。“反撃能力”と言うとミサイル攻撃を受けてから反撃する、と思われがちだが、この場合の反撃能力は「敵基地攻撃能力」の姑息な言い換えで、実際はミサイルで攻撃されても全てを迎撃することはできないので敵がミサイルを撃つ前に攻撃する、ということを含む。政府は「“自衛”のための反撃能力」と言うが納得できる説明はない。“能力”を持つことが“抑止力”になる、と繰り返すだけである。
 先制攻撃は国際法違反である。従って敵基地を攻撃するには確実に敵がミサイルを発射するという情報が必要だが、自衛隊がそんな能力を持っているとは思えない。しかも、車や列車、潜水艦など移動する発射台を破壊するのは難しく、軍事論的にも破綻している。報告書は「反撃能力の発動については、事柄の重大性にかんがみ、政治レベルの関与の在り方についての議論が必要である」と言うのだからとことん議論してもらいたいものである。
 ところが、報告書は議論が深まらないまま「国産のスタンド・オフミサイルの改良等や外国製のミサイルの購入により、今後5年を念頭にできる限り早期に十分な数のミサイルを装備すべきである」と結論を出している。これを裏付けるように、11月30日の読売新聞は「トマホーク最大500発購入へ、反撃能力の準備加速」と報じた。防衛省が反撃能力保有のために2027年度までに米国製の巡航ミサイル「トマホーク」500発を購入することを検討しているというのだ。2026年度以降は国産の12式地対艦誘導弾の配備も計画されている。軍拡の実態は議論より先に進んでいるのだ。記事には「12月中に改定する国家安全保障戦略に(反撃能力)保有が明記される方向」とある。
 これらの動きは日本の国是である“専守防衛”を捨て去るものである。日本国憲法の平和主義も民主主義も踏みにじるこの大きな転換は、なぜ国会で大きな騒ぎにならないのだろうか。なぜメディアは戦争への道に警鐘を鳴らさないのだろうか。日本がすでに“大政翼賛”時代に入っているように見える。

国民に広く増税を求め、軍事費世界第3位の軍事大国に

 大軍拡には多額の費用が必要である。報告書は「防衛力の抜本的強化のための財源は、今を生きる世代全体で分かち合っていくべき」として国債発行を前提とせず、「幅広い税目による負担」を打ち出した。11月28日、岸田文雄首相は、総合的な防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)の2%程度に増額するよう財務大臣と防衛大臣に指示した。これまで防衛費は概ねGDPの1%以内とされ、2022年度は5兆4000億円ほどだが2%になると約11兆円に達し、世界第3位のレベルの軍事費になる。岸田首相は年末に、中期防衛力整備計画(2023~27年度)の規模および2027年度に向けての歳出・歳入両面での財源確保について一体的に決定するとしている。

大軍拡が先行する琉球弧

 岸田政権は12月中に閣議決定で安保関連3文書を改定し、防衛政策の大転換と大軍拡を明文化しようとしている。しかし、自衛隊は大量に武器を購入し、米軍などと頻繁に大規模の共同軍事演習を繰り返し、大軍拡は着実に進んでいるのが現実だ。琉球弧(南西諸島)においては石垣島・宮古島・奄美大島にミサイル基地が建設され、日米共同作戦計画によると有事には琉球弧の40島に米軍海兵隊を分散展開し、ミサイルを配置するという。11月10~19日には全国で自衛隊と米軍による日米共同統合演習「キーン・ソード23」が実施され、全体で日米合わせて航空機約370機、空母を含む艦艇約30隻、自衛隊約2万6千人、米軍約1万人が参加した。与那国島では初めて公道を自衛隊の戦闘車が走り、米海兵隊員が初めて与那国駐屯地に入った。沖縄島の中城湾港などの民間施設も使用され、徳之島では初めての離島奪還訓練が行われた。琉球弧では戦争の恐怖を身近に感じる日常が続いているのだ。
 安保関連3文書の改定は閣議決定というレベルだからか、大きな話題にはなっていない。しかし、大軍拡・大増税が具体的な政策として明文化されるという点では大きな転換点である。私たちは戦争への道を進んでいることを覚悟しなければならない。政治家・メディアを巻き込んでもっと大騒ぎしなければならないのではないか。

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2022/11/24

「反撃能力不可欠のため、増税などの国民の負担」が必要か

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Yasushi Takeuchiさんのfacebookより
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反撃能力不可欠のため、増税などの国民の負担必要と政府は言っています。
 これでもまだ「他より良さそう」で国民は自公についていくのでしょうか?「他」にそんなことがしたくてもできますか?
 反撃能力不可欠ということは、他国と開戦があり得るのが前提ですね?今の日本で「対話で開戦を避けよう」と言えば「ノー天気」だの「お花畑」だの「平和ボケ」だのの「現実主義者」の方々の声が聞こえてきそうですが、そんな方々は、食料自給率4割以下の国が、外からの6割の供給ルートを武力でガード可能という前提が「現実」とお考えなのでしょうか?
 「現実主義者」の方々は「世の中には必要条件と十分条件を考ねばならぬ時がある」「食料自給率4割以下の国はハト派路線が国を守る必要条件。それを達成しても十分条件の達成は容易ではないが、タカ派路線は必要条件も破壊する道」という私のような考えは現実無視の平和ボケとお考えなのでしょうか?

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2022/11/18

岸田政権の悪政に反撃する大きな運動を―大軍拡予算にストップを

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※ピープルズ・プラン研究所の論説サイトより転載させていただきます。
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    2022.10.31 白川真澄

 岸田政権の悪政ぶりは、安倍政権の暴政に引けを取らないものになるかもしれない。この政権は、人びとの強い反対の声を「聞く力」を持たず安倍「国葬」を強行し、旧統一教会による自民党の権力維持の構造を覆い隠そうとして、一挙に支持率を下げた。時事通信の10月7~8日の世論調査では内閣支持率は27.4%と、危険水域とされる30%を切った。にもかからず、岸田政権は、思いつくかぎりの悪事を企んでいる。「台湾有事」を口実にした大軍拡をはじめ、原発の再稼働のみならず新増設への前のめり、健康保険証廃止によるマイナンバーカード取得の実質的義務化、「全世代型社会保障」の名による介護保険や医療保険の改悪(自己負担の増大)。

 物価高騰対策として29.1兆円もの大型補正予算を組んで支持率回復に躍起となっているが、ここでは、年末の23年度予算案編成に向けて大軍拡の防衛予算が計上されている状況について簡単に見てみよう。

■先制攻撃能力をもつ自衛隊ミサイル部隊の南西諸島への配備

ウクライナ戦争をきっかけにして、‟軍事力を強化しなければ安全は守れない”という主張が声高に叫ばれるようになった。自民党は、参院選で「防衛費を5年以内にGDPの2%以上に」すると公約した。岸田首相も、「防衛力の5年以内の抜本的強化」「反撃能力(敵基地攻撃能力)という選択肢を排除しない」と明言している(所信表明演説、10月3日)。年内には、「国家安全保障戦略」(2013年制定)・「防衛大綱」(2018年決定)・「中期防衛力整備計画」(同)の3文書が大幅に改定される。そして、年末の来年度予算案の編成に向けて大軍拡の防衛予算が組まれようとしている。これにお墨付きを与えるために、防衛費増額に関する有識者会議(「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」)が設置され、12月までに提言を出す予定になっている。

 いま進められている軍拡の最大の焦点は、「台湾有事」を煽り立てて米軍支援(日米共同作戦)のための自衛隊ミサイル基地を南西諸島に設けることである。すでに宮古島と奄美大島には19年からミサイル部隊が配置されたが、来年に石垣島、さらに沖縄本島にも置く予定だ。台湾とは111キロしか離れていない与那国島には沿岸警備隊がいるが、電子戦部隊が新しく配置される計画である。また、種子島の隣にある馬毛島にも、自衛隊の訓練基地(米軍空母艦載機の離着陸訓練も移転)を設ける計画を進めている。

 これらのミサイル部隊は地対空・地対艦ミサイルによって、中国の空軍や艦隊と戦火を交えることが想定されている。現在の「12式地対艦ミサイル」は射程200キロだが、これを相手の射程圏外から攻撃できる長射程(「スタンドオフ」)ミサイルに置き換えることが急がれている。例えば「12式地対艦ミサイル能力向上型」は射程1000キロとなり、地上発射型に加えて艦船発射型や空中発射型も開発される。この長射程ミサイルの配備(1500発以上を予定)は、中国沿岸部を標的にした「敵基地攻撃能力」、つまり先制攻撃能力をもつことにほかならない。露骨な挑発行為ではないか。

防衛省は、23年度予算編成に向けて過去最大の5兆5947億円の概算要求を計上したが、その目玉の一つが「12式能力向上型」ミサイルの開発と実用化によるスタンドオフ防衛能力の強化である(zakzak9月1日)。272億円が計上されているが、防衛費は金額を示さずに上限のない「事項要求」が認められているから、青天井で増えるだろう。また南西諸島での「継戦」に必要な弾薬は、2か月程度で「弾切れ」になってしまうと試算されている。この弾薬不足を解消するために火薬の量産工場を建設し、23年から稼働する(日経新聞9月18日)。

 麻生自民党副総裁は「台湾でドンパチが始まれば、沖縄は戦闘区域になる」(8月31日)と公言した。台湾をめぐって米中が衝突する場合、米軍はいったん空母などの主戦力をグアムに退避させ、沖縄の海兵隊などで台湾を支援するが、自衛隊のミサイル部隊は中国の攻撃に耐える戦いを強いられるという「過酷シナリオ」も語られている(週刊ダイヤモンド8月27日号)。南西諸島の軍事要塞化は、住民に悲惨な犠牲を強いた沖縄を再び「捨て石」にする危険な企てである。

■急増する5兆円――軍事力増強か社会保障拡充か

 今年度の防衛費は、当初予算で5兆3687億円、GDP比0.95%である。ただし、毎年のように補正予算にも防衛費が組まれるために、21年度では当初5兆3422億円に補正7655億円を加えて6兆1077億円と、GDP比は1%を超えて1.09%になっている。なお、海上保安庁の予算などを含めてNATO基準で見ると、6兆9000億円、GDP比1.24%になる。防衛費の増大は、防衛省の所管する予算だけにとどまらない。海上保安庁の装備の強化(国土交通省)、自衛隊が「有事」の際に使う空港や港湾など公共インフラの整備(同)、軍事関連の科学技術研究開発費の増額(文部科学省)など、省庁横断的な取り組みで増額されようとしている。

防衛費を5年以内にGDP比2%以上にする、つまり2倍に増やすということは、一挙に5~6兆円増やすことを意味する。この金額は、公共事業費6兆円や文教・科学振興費5.3兆円(22年)に匹敵する。急速な高齢化に伴う社会保障関係費の伸びを年5千億円に抑え込み、医療保険や介護保険の自己負担分を引き上げる一方で、軍事費だけを突出して毎年1兆円以上増やす。

生活の安心を犠牲にして軍事力による「国の安全」を優先させるのは、本末転倒以外の何ものでもない。防衛費増額分の5兆円を使えば、医療保険の自己負担分をゼロにできる。あるいは年金受給者全員に年12万円を上乗せできる。大学授業料の無償化には1.8兆円で済む(東京新聞6月3日)。また、円安が加速するインフレは3%に達したが、1ドル=150円が続けば家計(2人以上世帯)の負担を平均で年8万6462円増やすと試算されている(朝日新聞10月21日)。物価高騰手当てとして、全体の87%を占める所得1000万円以下の4532万世帯に一律10万円を給付しても4.5兆円である。この給付こそ、急がれねばならない。

しかも、防衛費の倍増には新たに巨額の財源が必要になる。安倍元首相は死ぬ前に「国債で対応していけばいい」と言い放っていたが、かつて侵略戦争を戦時国債で賄い敗戦後に超インフレを招いた歴史を反省しない暴言だ。国債累積残高は、すでに1千兆円を超えている(22年度末には1026兆円になる見込み)。国債増発に頼る財政は、異次元金融緩和による超低金利(ゼロ金利)政策によって利払いを低く抑えて、何とか維持されてきた。

しかし、近い将来、円安(日米金利差の拡大)による物価高を加速する金融緩和からの転換は(黒田日銀総裁が退陣することもあり)、避けられないだろう。借金財政は、金利上昇による利払いの急増の前に行き詰まる。財務省の試算でも、金利1%の上昇で国債費は25年度には3.7兆円も増える。そこで、まず国債発行で防衛費増大の財源を確保したうえで、将来の増税など返済財源の確保を法律で定める「つなぎ国債」という方法も検討されている(朝日新聞9月27日)。いずれにしても、所得税や法人税(場合によれば消費税)などの増税に行き着くか、社会保障費の削減に走ることになる。

これからの日本では、減税ではなく増税が必要不可欠である。だが、それは社会保障の拡充、とくに医療・介護・子育て・教育のサービスの無償提供(ベーシックサービス)のための財源なのである。けっして軍事費を倍増するための財源であってはならない。

■逆風を切り裂き、反撃へ

世論調査では、「敵基地攻撃能力の保有」に賛成53.5%:反対38.4%、「防衛費」について増やすべき56.3%:いまのままでいい31.0%:減らすべき9.8%(共同通信10月8~9日)と、多数派は軍拡支持に転じつつある。この逆風を切り裂いて、大軍拡を阻むのは簡単なことではない。原理・原則の確固さと創意・工夫に溢れた説得力が求められる。市民とリベラル・左派は7月参院選の惨敗で意気消沈したが、安倍「国葬」反対の行動が全国各地で起こり、運動は息を吹き返しはじめた。とはいえ、岸田政権の悪政全体に対する力強い反撃の運動はまだ組まれていない。

  「台湾有事」を煽り立て先制攻撃能力を備える大軍拡にストップを! 軍事費を減らし、医療・介護・子育て・教育の予算を増やそう! 声を大にし、さまざまな戦線と分野の運動が共同して岸田政権の悪政に対する怒りの大きな反撃の運動をつくろう。

(2022年10月28日記)

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