************
「馬毛島」をめぐる市長と市民の苦悶――軍事基地建設で揺れる鹿児島県西之表市で《前編》
2023年1月12日 23:45 川端俊一
この地で今、起きていることをほとんどの国民が知らずにいるのは、どう考えてもおかしいと思う。「基地」をめぐり、沖縄同様のニッポンの現実が、ここから見えているのだ。「鉄砲伝来」で知られる鹿児島県・種子島。その沖合にある馬毛島――。その島がほぼ丸ごと、自衛隊とアメリカ軍が共同使用する巨大軍事基地にされようとしている。2023年1月12日、防衛省は基地の島での本体工事に着手した。一方、基地反対を掲げて当選した市長は計画への賛否を明確に表明せず、反対派の市民らは厳しく批判。昨年末には市民有志が「公約違反」としてリコール署名運動も行っている。「有事」の危機が煽られ、「防衛力強化」の名のもとに南西諸島で進む軍備増強は、島の人々と地域社会に何をもたらしているのか。
目次
1、賛否を問われ・・・
2、住民説明会で
3、「馬毛島基地」建設とは
4、「受忍限度を超える」騒音が
5、自然と文化の「原風景」
6、「所見」に込めた思い
1、賛否を問われ・・・
1月11日、種子島の西之表市役所と鹿児島市の県庁を防衛省の担当幹部らが訪れた。八板俊輔(やいた・しゅんすけ)・西之表市長と塩田康一知事に対し、12日に公告する馬毛島での基地建設や訓練実施に関する環境影響評価(アセスメント)の評価書の内容、基地建設の本体工事着手の日程などを伝えるためだ。
同省幹部との会談後、八板市長は記者団から改めて基地建設への賛否を問われたが、この日も明言はしなかった。
「申し上げている通り、まだそういう段階ではないと思っております」
「環境アセス以外にも市民の不安とか、あるいは期待とかいうものがありますけれども、それの(判断)材料というのはまだこれから引き出すべき余地が残っておりますので、そういうことを踏まえて申し上げたいと思います」
翌12日、防衛省は環境影響評価書を公告したうえで、すぐに馬毛島での本体工事に着手。同日午後、西之表市や東京の首相官邸前では、着工に抗議する市民らの集会が行われた。
馬毛島での基地建設問題が浮上して16年。事態は新たな段階を迎えた。全国的には大きなニュースにはならないが、この国の「民主主義」そのものが問われるような状況が南の島で続いている。
2か月ほど前にさかのぼろう。
2、住民説明会で (以下略)