~報告:「沖縄写真展」での竹内康人さん学習会(7月2日静岡市)
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7月2日、静岡・沖縄を語る会主催による沖縄写真展(静岡市市民ギャラリー)の最終日、午後2時から浜松の竹内康人さんを招き、「戦争否定と戦争準備 沖縄を戦場にするな」と題した学習会が開催されました。約15名の参加があり、最初に詩の朗読がありました。
■沖縄の歴史と戦争動員
竹内さんははじめに、2022年の沼津市今沢海岸と東富士での日米合同軍事訓練が中国を仮想敵としたものであったことを指摘しました。
つづいて沖縄の歴史を示し、15世紀の琉球王国、19世紀の琉球併合による琉球の植民地支配、その果ての沖縄戦について話しました。アジア太平洋戦争末期の沖縄戦での防衛隊の召集は全体で2万5千人ほどでした。とくに14歳から17歳の若者が動員されましたが、男子学徒隊(約1500人)は「鉄血勤皇隊」として陸軍に編入され、女性は看護隊などで500人が強制動員されました。徴兵での沖縄人の兵士動員では、沖縄人への差別、暴力による管理などもありました。
沖縄戦は、沖縄の土地と民がどうなっても構わないというものであり、皇民化政策により、強制集団死や学徒隊など、若者の死を招きました。戦死者と認定された人は靖国神社に合祀されています。「平和の礎」での沖縄人の戦争死者は約15万人です。
集団自害や無法な学徒の戦争動員について、政府は一度も謝罪していません。沖縄戦を描いた「月桃の花」や「沖縄スパイ戦史」などの映画紹介もありました。
沖縄戦後、アメリカが支配し、銃剣とブルドーザーにより、沖縄各地に基地を建設しました。基地はアメリカによる朝鮮戦争、ベトナム戦争で一層強化されました。米ソ冷戦が終っても、沖縄には平和は訪れず、アメリカの地域紛争に対応するという軍事戦略により、さらに強化されました。基地による事件・事故が絶えないなかで、沖縄では1995年に少女暴行事件が起きました。2000年には嘉手納基地包囲行動がありました。
2001年9・11事件以降、アメリカは、アフガニスタン攻撃、イラク攻撃などの戦争にあけくれ、日本の自衛隊もイラクに派兵されました。しかし、市民の反戦の闘いは2008年に空自のイラクでの活動を違憲とする判決を勝ちとりました。
■過去の戦争の正当化と歴史否定
2007年沖縄では、政府が教科書で「集団自決」での軍による強制を削除させることが問題になりました。それは政府による歴史否定であり、大きな抗議行動が起きたのです。
最近の朝鮮人強制労働をめぐる日韓の動きも強制労働の歴史否定によるものです。2018年の朝鮮人強制動員に関する韓国大法院の判決は、戦時の強制動員を反人道的不法行為とし、被害者の損害賠償権を認め、尊厳の回復をすすめるものでした。それは現代の国際人権法、人道法をふまえた判決でしたが、日本政府は無視しました。そして、強制労働の用語を適切ではないと閣議決定し、教科書から消してしまいました。
歴史否定の動きは、過去の戦争を正当化することによるものです。それは東アジアでの戦争準備の一環です。
■南西諸島へのミサイル配備
近年の戦争の特徴は、宇宙の軍事化、予防先制攻撃、シームレス(平時と軍事の連続性)です。
日米同盟の強化の中で、2014年、安倍政権は集団的自衛権の行使を認め、2015年には戦争法を制定しました。存立危機事態で日本は集団的自衛権を行使し、重要影響事態では米軍を後方支援します。自衛隊をグローバルに派兵できるようになりました。
日米同盟下で、日本の軍事力の強化がねらわれています。2022年12月、安保3文書が閣議決定されました。3文書は国家安産保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画ですが、それは、戦争の方針、兵力、どう使うかを示したものです。
国家安全保障戦略の特徴は「敵基地攻撃能力」(「反撃能力」)の保有です。ミサイル部隊を強化し、中国との戦争を想定するものです。反撃能力とは、先制攻撃をするということです。ミサイル配備・開発がすすみ、「継戦能力」が重視され、司令部の地下化もすすめられます。航空自衛隊は航空宇宙自衛隊に名称変更します。
このなかで、今回の展示にもあるように、南西諸島へのミサイル配備が始まっているわけです。
■非軍事の平和を
沖縄には独自の琉球文化があり、沖縄語も存在します。沖縄での、沖縄人・琉球人の先住民族としての権利の確立をすすめるべきです。国連も2008年に勧告を出し、先住民族として認めています。
19世紀以後の植民地支配の実態を直視し、戦争での強制動員を謝罪・賠償させるべきでしょう。そして沖縄での自治権を確立し、非軍事地帯とすべきでしょう。
現在、沖縄は日米の軍事植民地となっています。植民地主義は克服されていません。日本では沖縄植民地支配の歴史認識が弱く、日本政府は沖縄人・琉球人の先住民族としての権利、自己決定権を認めていません。
それに対し、植民地支配の歴史をとらえ直し、いまも続く植民地主義の問題を直視すべきです。そして沖縄民衆の自己決定権を基礎とした非軍事の枠組みを追及すべきと思います。
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話を聞き、日本は韓国や沖縄を植民地とし、皇民化政策を強要したが、その謝罪も賠償もなされないまま、現在まで引き継がれ、負の遺産として残っている、と感じました。 (佐野)