※木元茂夫さん(反戦平和のための軍事問題研究)のfacebookより転載
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深まる米中対立-台湾海峡、南シナ海、空母クイーン・エリザベスの来航も横須賀を母港とするイージス艦マスティン(DDG89)が12月19日、台湾海峡を通過した。翌20日には中国海軍の空母山東(全長315m、満載排水量67,000トン、艦載機約36機)が台湾海峡を通過して、南シナ海に入った。中国国防部は「空母遼寧と山東が通常訓練と海上試験を完了した」と9月25日に発表しており、今後、海上で米中両国の軍艦が睨み合う可能性が出て来た。また、12月8日には台湾への軍事通信施設(2億8000万ドル)の売却に抗議すると発表。
横須賀のイージス艦ジョン・S・マケイン(DDG56)は、日米仏の共同訓練を終えると、22日には南シナ海で「航行の自由作戦」を開始した。31日には、マケインと、カーチスウィルバー(DDG54)が相次いで台湾海峡を通過した。アメリカ海軍は「太平洋における過度の要求を押し返すための任務」と位置付けている。
また、12月5日、イギリス軍は空母クイーン・エリザベス(全長284m、満載排水量67,699トン、F-35Bステルス戦闘機30機程度など艦載機約40機)を、南西諸島を含む日本近海に派遣すると発表した。日英共同訓練は2018年4月に関東沖でフリゲート艦サザーランドと、護衛艦「すずなみ」、補給艦「ときわ」が訓練、8月には揚陸艦アルビオンが晴海埠頭と横須賀に入港、9月には海自のインド太平洋方面派遣訓練の一環として、インドネシアのスマトラ島周辺海域でフリゲート艦アーガイルとヘリ空母「かが」、護衛艦「いなづま」との訓練が、9月から10月にかけて山梨県の北富士演習場と宮城県の王城寺原演習場で日英陸軍の共同訓練も行われた。
アメリカ海軍の一連の台湾海峡通過に先立って、12月15日から17日までの3日間、日米仏の共同訓練が行わた。海自はNATO諸国との共同訓練にも力を入れている。空母クイーン・エリザベスが来航すれば、海自との大規模な訓練、横須賀への入港も予想され、要注意である。
原子力空母レーガンは12月後半から原子炉周りを含む定期修理に入った。4月初旬までは動けない。その間、空母クイーン・エリザベスが替わりに日本周辺から東シナ海、南シナ海で作戦行動をするということだろうか。「遼寧」と「山東」が稼働状態にあるいま、佐世保に配備した強襲揚陸艦アメリカ(全長257m、満載排水量45,570トン、F-35B 20機程度)だけでは、充分に対抗できないと米英政府は判断したのだろうか。
なお、中国艦艇の宮古海峡通過は、9月23日(南下)-26日(北上)の東海艦隊のフリゲート艦「安陽」(全長134m、満載排水量3,963トン、2018年就役)1隻のみで、以降統幕の発表はない。日本周辺でも、12月21日から23日にかけて、同「舟山」(同、2008年就役)が下対馬から日本海を航行したのみである。
2020年1年間、アメリカ海軍は毎月のように台湾海峡から南シナ海にイージス艦を投入し、台湾に武器を売却した。そして、12月にはダメ押しのように、3隻ものイージス艦に台湾海峡を通過させた。同地域の緊張を高めているのはアメリカ軍の側である。安倍政権に続いて菅政権も掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」とはこうしたアメリカ軍の軍事行動に無批判に追随するものである。
12月15日~17日 日米仏共同訓練 沖ノ鳥島周辺(フィリピン東方海域)
米海軍 イージス艦ジョン・S・マケイン(DDG56)、P-8A哨戒機
海上自衛隊 ヘリ空母「ひゅうが」(DDH181)
フランス海軍 原子力潜水艦エメロード(S-604)
19日 イージス艦マスティン(DDG89)、台湾海峡通過。
19日~30日 イージス艦ジョン・S・マケイン(DDG56)、南シナ海に展開
20日 中国海軍空母山東、台湾海峡通過
22日 マケイン(DDG56)、「航行の自由作戦」
26日頃 マスティン(DDG89)、横須賀に帰港。
31日 マケイン(DDG56)、カーチスウィルバー(DDG54)、台湾海峡を通過。
写真1 英空母クイーンエリザベス 10月4日北海でのNATOの多国間演習ジョイント・ウォーリアー
写真2 フランス海軍の潜水艦と共同訓練する海自ヘリ空母ひゅうが
写真3 イージス艦ジョン・S・マケインに着艦する「ひゆうが」のヘリSH60 12月17日
以上、アメリカ海軍HPより。
写真4 台湾海峡を通過して、横須賀にもどってきたイージス艦マスティン(DDG89)
写真5 定期修理に入った原子力空母レーガン