ブログ「やぽねしあのホクロ」からの転載です。
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日本政府は、鹿児島県・種子島の北西に浮かぶ馬毛島に自衛隊基地・米軍FCLP訓練基地を作ろうとしていますが、馬毛島は決して“不毛な無人島”ではありません。自然豊かで、長い歴史も持っています。
防衛省は馬毛島基地(仮称)建設事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書を募集しているので以下の内容で提出しました。
意 見 書
■意見書の提出の対象である方法書の名称
・馬毛島基地(仮称)建設事業に係る環境影響評価方法書
■方法書について環境の保全の見地からの意見
意見は日本語により、意見の理由を含めて記載
・(略)以下の理由により基地建設を即刻断念することを求めます。また、調査についても実施しないよう強く訴えるものです。
1)自然破壊について
馬毛島にはかつてマゲシカが約1万頭群棲したといわれており、1922年(大正11年)に調査した北海道帝国大学の鹿博士・八田三郎教授は「金華山、奈良、厳島のごとき神鹿の三名所に比しても遜色の無い鹿の楽園」と高い評価を与えました。しかし、さまざまな環境変化により2000年(平成12年)には約570 頭と推計され、2000年以降は10年でほぼ半減したという報告もあります。2012年(平成24年)の環境省の哺乳類レッドリストでは「絶滅のおそれのある地域個体群」となっています。
マゲシカは角の枝が3本あるヤクシカと4本あるホンシュウジカの中間に位置する亜種とされ、進化の過程を研究する上でも大変貴重な動物です。すでに絶滅が危惧される状態の中で、軍事基地が建設され、頻繁に軍事訓練が繰り返されれば絶滅が現実のものになってしまいます。
また、馬毛島の植生は種子島同様、南限・北限とされる種が多いのが特徴で、ソナレシバ、ハマガラシの北限地、ヒメハリイ、ハイネズの南限地といわれます。固有種のタネガシマアリノトウグサ、絶滅危惧種のイワタイゲキ、ヒメノボタンなど希少な植物も多いのです。北東部には高さ2m以上の大ソテツ群落があると聞いています。動物では、シカと共存する糞虫クロツヤマグソコガネの南限地、星砂の北限地でもあります。エリグロアジサシの繁殖地があり、国指定天然記念物のオカヤドカリも生息します。海域ではサンゴ群落やさまざまな魚類、豊富な海藻類・岩礁生物群がみられ、アカウミガメやタイマイが産卵に上陸します。
このような貴重な自然が基地建設・軍事訓練によって破壊されることは目に見えています。今回の環境影響評価そのものが自然破壊行為につながります。自然環境や漁業資源などを守るため、調査そのものも中止するべきです。
2)文化破壊について
島の南西部には椎ノ木遺跡(馬毛島埋葬址遺跡)があり、弥生時代終末期の人骨が副葬品や土器とともに出土しました。また、2018年(平成30年)には北西部の馬毛島葉山王籠遺跡から古墳時代の約80点の土器片や室町時代~江戸時代後期とみられる人骨がみつかっています。考古学的調査はまだまだ不十分です。基地建設がこれらの文化財を破壊する可能性が高いと思います。この点からも基地建設は即時断念するべきです。
3)地元重視・社会正義について
ご存知のように、馬毛島は昔から原子力船「むつ」の母港や国家石油備蓄基地、日本版スペースシャトルHOPE着陸場、使用済み核燃料の中間貯蔵施設、海外貨物専用空港、米軍普天間飛行場の移設候補地、レジャーランド、米軍FCLP施設、自衛隊基地などの候補地とされ、そのたびに国策に振り回され、欲深い政治家や実業家たちが暗躍しました。1986年(昭和61年)に発覚し、平和相互銀行が消滅することにまでなった汚職事件(「馬毛島事件」)では平和相銀の不正経理だけでなく巨額の資金が政界に流れたといわれました。一方、西之表市は現在、馬毛島の貴重な自然を守り、市民のための馬毛島の平和的・恒久的利活用を計画しています。地方自治体と国は上下の関係ではなく、それぞれが独立した権限を有します。これまでの歴史を鑑み、反省するならば地元自治体が進める活用計画を尊重するべきです。その観点からも今回の馬毛島基地建設に反対し、環境影響調査そのものの中止を求めます。
以上