海上自衛隊 訓練に潜水艦の追加派遣 事前公表は異例の対応
2020年9月15日 19時17分NHK
海上自衛隊は南シナ海からインド洋にかけての海域で行っている訓練に、潜水艦を追加で参加させると発表しました。中国が海洋進出を強めるこの海域への潜水艦の派遣を事前に公表するのは異例の対応で、専門家は中国海軍の出方を伺うねらいがあると指摘しています。
海上自衛隊は今月7日から1か月余りの日程で、最大の護衛艦「かが」などを南シナ海からインド洋にかけての海域に派遣し、各国の海軍などと共同訓練を行うことにしています。
海上自衛隊は15日、この訓練に潜水艦1隻を追加で参加させると発表しました。
訓練の詳しい内容は明らかにされていませんが、防衛省関係者によりますと、海中に潜って航行する潜水艦を相手に見立てて追尾する、「対潜水艦」の訓練などを南シナ海で行う予定だということです。
潜水艦は相手に居場所を知られず警戒監視を行うのが任務で、中国が海洋進出を強めるこの海域への派遣を、事前に公表するのは異例の対応です。
軍事専門家「中国海軍の出方をうかがうねらい」
海上自衛隊の元海将で潜水艦の艦長も務めた、金沢工業大学虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授は、今回、潜水艦の派遣を事前に公表したねらいについて「アメリカや日本と比べると、海中を探索する技術のレベルがまだ低い中国にとって、近くにいても見つけることができない潜水艦は、最もいやな存在だ。訓練への参加を事前に公表することで、中国海軍がこれまでとは異なる動きをして戦術の一部が見える可能性があり、海上自衛隊としてはどんな出方をするのかをうかがうねらいがあると思う」と話しています。
そのうえで「南シナ海では軍事拠点化を進める中国に対し、日本やアメリカだけでなく、イギリスやフランスなども軍艦を派遣し、互いにけん制しあうことで、力の均衡が保たれて平和が維持されている。ただ、こうした状態が続けば、南シナ海の平和を保つための海上自衛隊の負担は、今後も増えるのではないか」と指摘しています