2022年10月13日 1:00日本経済新聞
【ワシントン=坂口幸裕】米政府は12日、安全保障政策の指針となる「国家安全保障戦略」を発表した。ウクライナへの侵攻を続けるロシアについて「今日の国際社会の平和と安定に対する差し迫った持続的な脅威だ」と指摘。中国を米国主導の国際秩序を作り替えようとする「唯一の競争相手」と位置づけ「最も重大な地政学的な挑戦だ」と記した。
2021年1月に発足したバイデン政権が国家安保戦略をまとめるのは初めて。前回の公表はトランプ前政権下の17年12月。
バイデン米大統領は戦略で中ロを念頭に「独裁者は民主主義を弱体化させ、国内での抑圧と国外での強制による統治モデルを広げようとしている」と強調。「我々はルールに基づく秩序が世界の平和と繁栄の基礎であり続けなければならないという基本的な信念を共有するいかなる国とも協力する」とうたった。
戦略ではロシアを足元での直接的な脅威とする一方、中国を中長期的な競争相手と定める姿勢を明確にした。中国による挑戦が最も顕著なのはインド太平洋地域で「世界的に重要な側面がある」と記した。国際秩序を再構築する目標を進めるため「経済力、外交力、軍事力、技術力をますます高めている」と警戒感をあらわにした。
ロシアは「欧州の安全保障秩序への差し迫った脅威を与え、世界的な混乱と不安の要因になっている」としつつ「中国のような全般的な能力を備えていない」との認識を示した。ウクライナ侵攻で「中国やインド、日本といったアジアの大国へのロシアの地位を著しく低下させた」と言及した。
脅威に同盟国と対処する方針を掲げた。「大国間の紛争リスクは高まっている」との認識を示し「世界各地での同盟・パートナーシップは最も重要な戦略的資産であり、平和と安定に貢献する不可欠な要素だ」と提唱した。
北大西洋条約機構(NATO)、米英豪の安全保障の枠組み「オーカス」、日米豪印の「クアッド」に触れ「侵略抑止だけでなく、国際秩序を強化する互恵的な協力の基盤だ」と言明した。「米国や同盟・パートナー国への攻撃や侵略を抑止し、外交や抑止に失敗した場合に国家の戦争に勝利する準備をする」と掲げた。
日米安全保障条約に基づき沖縄県・尖閣諸島を含む日本の防衛への「揺るぎない約束」も明記した。(以下略)