●米陸軍教範「マルチドメイン作戦における米軍2028」の解説と要約
――米陸軍の琉球列島へのミサイル配備計画を阻む!
アメリカ陸軍司令官のスティーブン・J・タウンゼントが、上記の陸軍教範を策定(2018年11月27日)した。この教範は、米海兵隊の「遠征前方基地作戦」(EABO)に対応した、米陸軍の琉球列島へのミサイル配備計画である。
周知のように、米海兵隊のEABOに基づく、琉球列島へのミサイル配備計画は、よく知られているが、米陸軍のそれは、ほとんど知られていない。
この先行する米陸軍の琉球列島配備の実態を以下、拙著『ミサイル攻撃基地化する琉球列島』から引用するとともに(拙著、第3章「米海兵隊・陸軍の第1列島線へのミサイル配備」から引用)、米陸軍教範による、その作戦・戦術の要旨を記述したい(DeepL翻訳)。
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【ワシントン=中村亮】米陸軍がミサイルや電子、サイバーといった能力を一体的に扱う作戦部隊をアジアに配置する案を検討していることが分かった。電子やサイバー領域の能力を生かし、効果的な作戦を迅速に実行する。台湾海峡や南シナ海をめぐり中国の抑止を目指す。 アジア配置を検討しているのは「マルチドメイン・タスクフォース(多領域部隊)」と呼ばれる陸軍部隊。 2017年に創設され、一般的に①ミサイル②防空③電磁波・サイバー・情報収集④後方支援――の能力を持つ4つのグループで編成する。合計で数千人で構成し、現在は米西部ワシントン州とドイツの基地にそれぞれ配置している。 陸軍は23年以降に正式に立ち上げる3つ目の多領域部隊をハワイにまず置く見通しを示している。 日本経済新聞の取材に応じた、チャールズ・フリン太平洋陸軍司令官は日本やフィリピンなど、より中国に近いインド太平洋地域の同盟国に配置する可能性について、「選択肢として議論の俎上(そじょう)にある」と検討を認めた。 多領域部隊は平時に電子やサイバー、宇宙能力を使って情報収集を実施。敵国の行動パターンや弱点を把握して有事に備える。 戦闘が始まった場合には電子やサイバー攻撃で通信網を無力化して敵国の指揮統制をかく乱。事前に得た情報も使い、敵の艦船や施設をミサイルで攻撃する。多彩な攻撃を同時に実施して敵国を追い詰めていく。 米陸軍は複数のミサイル開発を進めるが射程は数千キロメートルとみられ、ハワイからは中国や中国近海に届かない。米軍は沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線にミサイル地上部隊を分散配置する構想を掲げており、その一部に多領域部隊をあてる考えだ。 地上部隊は小回りがきき、中国のミサイル攻撃を回避しやすい。米軍の艦船や戦闘機が第1列島線に近づく環境を整える役割を担う。 焦点はアジア諸国が多領域部隊の配置を受け入れるかどうかだ。部隊が配置される地域は中国軍の標的になるリスクが高まる。中国が配置を認めた国や自治体が攻撃対象になると警告し、各国に部隊を受け入れないように強く促す可能性がある。 米軍との実動訓練を行う陸自の水陸機動団(2020年2月、沖縄県金武町の米軍ブルービーチ訓練場)=共同 陸上自衛隊は8月中旬から9月上旬に、九州で米陸軍との実動訓練「オリエント・シールド22」を2100人規模で実施する。目玉は米本土から第1多領域部隊が初参加することだ。 奄美大島(鹿児島県)で同部隊と陸自が連携して電子戦を展開し、日米の他の砲兵部隊とともに対処する対艦戦闘訓練を開く。陸海空だけでなくサイバーや電磁波などへの戦闘領域の広がりに対応し、日米の島しょ防衛能力を磨く。 妨害電波を発して敵の指揮系統を混乱させ、陸自の「12式地対艦誘導弾」や米軍の高機動ロケット砲システム「ハイマース」などで直接的な攻撃を加えるといった想定がある。今回の訓練で実弾は発射しないが、作戦の手順などを確かめる。 中国への対処が念頭にある。岸信夫防衛相は2022年版防衛白書の巻頭で中国が台湾統一に武力行使も辞さない構えを見せ「地域の緊張が高まりつつある」と指摘した。 多領域部隊は中東での対テロ戦から中国との競争にシフトする米軍を象徴する。米軍はテロ組織との戦いで陸海空の全領域で圧倒的に優位だったが、中国とは戦力が拮抗する。西太平洋ではサイバーや電子、宇宙の新領域の能力を組み合わせて情報収集から作戦実行を迅速に進め、中国による作戦目標の早期達成を防ぐ必要がある。 多領域作戦を最初に実践したのはロシアとされる。14年以降のウクライナとの戦闘では電子戦能力を使ってウクライナ軍による全地球測位システム(GPS)の通信を遮断したり、サイバー部隊はインフラをまひさせたりしたとされる。地上侵攻に合わせて新領域での能力を発揮し、戦闘を優位に運んだとの見方が多い。