原告団が控訴 弁護団、一審に「論理破綻」
2020年09月10日八重山毎日新聞
住民投票義務付け訴訟
石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票の義務付け訴訟で那覇地裁の却下判決を受け、石垣市住民投票を求める会の金城龍太郎代表ら原告団は9日、これを不服として8日付で控訴したと発表した。市自治基本条例第28条に基づく市長に対する実施の義務付けを求めた原告側の訴えは、那覇地裁で門前払いの判決を受けており、福岡高裁が中身に踏み込んだ判断をするかどうかが注目される。
同訴訟で原告側は、住民投票の請求・発議を規定する自治基本条例第28条「有権者の4分の1以上の署名で請求することができ、市長は所定の手続きを経て実施しなければならない」を根拠に市長には実施義務があると主張。住民投票条例案が議会で否決された場合でも、投票の形式や投票の成立要件などは規則で定めることができるとしている。
これに対し、那覇地裁は義務付け訴訟の対象となる「処分」を最高裁判例から▽個々の国民の権利義務の範囲を確定することが認められること―と定義。今訴訟では、投票資格者名簿が作成されていない段階では有権者という法的地位自体が不確定となっているため処分の対象にならないと、原告側の訴えを入り口で退ける判決を言い渡した。
原告側弁護団長の大井琢弁護士は控訴について「一審判決は論理的に破綻している。市長に実施義務があることは自治基本条例上明白であるにもかかわらず実態判断をすることから逃げた。結論が先にあって論理を組み立てたが、破綻したまま判決日を迎えた。控訴審では破綻した論理を漏れなく指摘したい」と述べた。
中村昌樹弁護士も「判決は、こちらが挙げた(条例に関して処分性を肯定した)最高裁判例を無視して都合のよい論理で進めた。結論が先にあるため、よく分からない判決文となっている」と指摘。
判決が「仮に住民投票が実施されないことが違法であると解される場合でも、その救済は実施の義務付け以外の方法により図られるべきものと言うほかない」としたことについて「裁判所にも逡巡(しゅんじゅん)があったと思う。そうでなければ、違法の可能性がないのにその可能性に触れる必要はない」と推測した。
一方、中山義隆市長が判決を受け「市の主張が全面的に認められた」と発言したことに「完全な誤り。判決は、ただ行政訴訟の枠組みにこの事案は載らないと言っているだけ。市がやったことが正しかった、とはひと言も言っていない」と強調した。