2023年03月05日八重山毎日新聞
有事の国民保護、念頭に
【与那国】糸数健一町長が与那国空港の滑走路拡張や比川地域への新港湾整備を昨年9月に国へ要請していたことが4日までの町への取材で分かった。2000㍍の滑走路を西へ500㍍拡張し2500㍍にするほか、祖納港に代わって新たに比川に港湾を整備するための支援を求める内容。台湾有事を見越した国民保護の観点から行った。
町内の港湾は県管理の祖納港があるものの、北側に面していることから北風などの影響を受けやすく通年の開港が困難な状況。工事のため長年にわたって定期船フェリーが久部良漁港を使用するなど先を見通せない状況となっている。
このため、町は港湾間口が南側に面する「比川港湾」の整備を要請。有事の際の島民避難など国民保護の観点からも必要性を強調している。
要請は昨年9月12日に自民党政務調査会長の萩生田光一氏、同26日に経済安全保障担当内閣府特命担当大臣の高市早苗氏にそれぞれ行った。
昨年12月16日に閣議決定された安全保障関連3文書では、南西地域の空港・港湾を整備・強化し、自衛隊の各種輸送アセット(船舶など)も利用して国民保護措置を行うとしている。
ただ、国際法上では「軍民分離の原則」から、武力衝突が始まった段階で自衛隊の船舶などを使う場合は、住民保護に専従することを示す「特殊標章」がない場合は違反となる可能性が高いとの指摘もある。
このため、自衛隊の装備を使用した住民避難を想定する場合、武力衝突が始まる前に避難を完了させられるかといった課題も残されている。(以下略)