2022/01/12 09:31
政府は、米軍辺野古基地建造に向け、沖縄県名護市で埋め立て工事を続けている。
大浦湾には軟弱な地層が存在し、地盤改良が必要になる。国は設計変更を申請するも、県は昨年11月、これを不承認とした。
いま埋め立てているのは、設計変更にかからない区域だ。政府が無理押しするほど、基地完成の見通しは怪しくなってくる。
辺野古への土砂投入は2018年12月に始まった。当時の安倍政権は翌1月末になり、初めて地盤改良の必要を認めた。工期は9年3カ月に、工費は当初の3倍近い9300億円に膨らんだ。
ところが、防衛省は15年4~9月の段階で、海底調査に当たった業者から「軟弱地盤が広く分布する可能性がある」との報告を受けていた。業者は、地盤沈下の恐れにも言及していた。
3年余の間、この報告を沖縄県にも伝えず、県民の強い反対を顧みないまま、埋め立てに踏み切っていたことになる。不都合な情報は隠し、基地建造を既成事実化したかったのだろう。
広範囲の軟弱地盤の中でも、滑走路の端に近い「B27」地点は軟らかい地層が深くまで達しているという。市民団体は海面下90メートルに及ぶと分析し、土砂投入の前から警鐘を鳴らしていた。
防衛省は「77メートルより下は非常に固い粘土層だ」と言い張った。根拠は、離れた3地点のデータからの「推定」にすぎず、B27を直接調べてはいない。3地点とB27を連続した地層とする見立てを、専門家は疑問視する。
90メートルの深さまで杭(くい)を打ち込む工事には類例がない。仮に「完成」しても、地盤が不均一に沈み、何度も再整備を余儀なくされるとも指摘されている。
巨額の税金を投じることになるだろう。工期が延びれば、国が辺野古基地と引き換えにする、米軍普天間飛行場の沖縄への返還時期はさらにずれ込む。
県の不承認を受け、防衛省は行政不服審査制度を乱用し、不服審査を国土交通相に申し立てた。国が国を擁護する“茶番”を繰り返すのではなく、最低限の責務としてB27の地層を調べるべきだ。
そもそも、1996年の普天間返還の日米合意は、沖縄の基地負担軽減を目的とした。数十キロ先の辺野古に代替基地を設けるのでは大義名分すら欠いている。
調査から得たデータ、工期中に予測される事態を全て開示し、原点に立ち戻って、現行計画を一から見直さなくてはならない。