社説[辺野古 米議会が懸念]全面検証し見直す時だ
2020年6月26日 06:55沖縄タイムス
米下院軍事委員会の即応力小委員会は、国防予算の大枠を示す2021会計年度(20年10月~21年9月)国防権限法案を可決した。
注目されるのは、名護市辺野古の新基地建設に伴う軟弱地盤対策について、議会が強い懸念を示したことだ。
法案は「大浦湾の海底での地震の可能性および不安定性に対する懸念が高まってきた」と指摘し、具体的に懸念材料を挙げる。
「2本の活断層と50メートルの深海が建設予定地の近くに存在することに注意を促したい」 いわば議会側が国防総省に対し、こんな海上に軍事施設を造って本当に大丈夫なのか-と懸念を突き付けたようなものだ。
法案は12月1日までに報告書を提出するよう国防長官に義務づけている。
海底の詳細な状況、軟弱地盤の改善策、海洋哺乳類(ジュゴン)やサンゴなどへの影響、海底地震の危険性の評価-法案が報告書に盛り込むよう求めているこれらの項目は、県民が以前から知りたかったことばかりだ。
大浦湾海域には、陸上部から延びる二つの断層が交わり、50メートル以上落ち込んでいる海底地形がある。
これまで複数の地質学者が、この落ち込みを活断層だと断言し、海溝型の地震や津波の危険性を指摘してきた。
政府は長い間、「海底地盤の安全性は問題ない」と主張し、説明責任を果たすことを怠ってきた。
この際、工事を中止し、根本に立ち返って安全性や環境問題を検証すべきである。
■ ■
この先、軍事委員会や本会議での採決が控えており、法律が成立するまでのハードルは高い。
上院軍事委員会の国防権限法案には辺野古絡みの文言は盛り込まれておらず、辺野古の扱いがどうなるかは、正直なところ、不透明である。
ただ、忘れてならないのは、下院軍事委員会の即応力小委員会が懸念を表明したのは、県をはじめ国会議員や県内の自治体議員、市民団体、米国のNGOや労働組合などが波状的に要請行動やロビー活動を繰り返した結果、だという点だ。
米議会などへの要請活動を行ってきたプログレッシブ議員連盟事務局長の屋良朝博衆院議員は強調する。
「問題の実相がアメリカ議会の中でも認識されつつある意義は大きい」
報告書をまとめるため国防総省から問い合わせがあった場合、防衛省はどう対応するのだろうか。
■ ■
辺野古に固執すれば、今後最低でも12年にわたって普天間飛行場が固定化され、最低でも9千億円以上の国費が、コロナ禍のこのご時世に、投入されることになる。
配備計画を取りやめた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」同様、新基地建設計画も全面的に検証し、見直す時だ。
これほど問題が山積しているにもかかわらず、沖縄の民意に反して、二重基準のまま建設を強行し続ければ、辺野古は政府主導の「差別政策」に堕することになるだろう。