2022年10月18日(火) 19:40 RBC
ことし8月に県知事選挙の演説中、候補者に向けて複数の空包を投げつけたとして、書類送検されたチョウ類研究家の宮城秋乃さん。10月18日には初公判が行われました。
「犯罪者でいい」と語る宮城さんを何がそこまで追い詰めたのか。その胸中に迫ります。
チョウ類研究家 宮城秋乃さん
「羽化後初めてのおしっこですね。この瞬間見るのがすごい楽しみで、いつも羽化を待ってるんですよ」
愛おしそうに蝶々を見つめるこちらの女性。チョウ類研究家の宮城秋乃さんです。
チョウ類研究家 宮城秋乃さん
「リュウキュウウラボシシジミっていう蝶々なんですけど、この蝶がたくさんいるっていうだけで、他の何を調べなくてもこの場所の自然度は高いということが証明できる蝶々です」
宮城さんは、やんばるに生息するチョウや生き物たちを研究する傍ら、アメリカ軍から返還された森の中に残る、空包や照明弾などの廃棄物の回収を続けてきました。
廃棄物の存在を訴える秋乃さんに対して、国は…
チョウ類研究家 宮城秋乃さん
「(国は)根拠も示さずに支障除去は適切に終わりましたって言い続けるので、最初のうちは論理的にやれば向こうも論理的に対応してくれるかなって思っていたんですけど、そうじゃないというのが分かり、これをこのままこの先、何年も続けるわけにはいかないので、実力行使をするように直接行動をするようになりました」
その言葉通り秋乃さんは、去年、回収した廃棄物を北部訓練場のメインゲート前に置き、威力業務妨害の罪で起訴されました。更に県知事選挙の演説中、候補者の陣営に向けて複数の空包を投げつけたとして、先月、公職選挙法違反の疑いで書類送検されています。
チョウ類研究家 宮城秋乃さん
「こちらがあるって言うもの(米軍廃棄物)を向こうは無いって言うので、全然議論にならないわけですよ。それならば向こうが無いって言っているものをぶつけて、『銃弾危ないじゃないか』って言わせたら、その銃弾はどうしてここにあるのか、なんで一般市民がたくさん持っているのかという話にはなっていくと思います。私が何かしら警察にお世話になることで話題になるのであれば、喜んで私は犯罪者になろうじゃないかと」
県知事選挙で選対の事務局長を務めていた、自民党の新垣淑豊県議。宮城さんが投げた空包が左手に当たりました。
新垣淑豊 県議会議員
「その女性の方が我々の撮影をしながらスルスルっと前に出てきて、いきなりポケットかカバンから物を取り出して投げつけるわけですよ。安倍元総理が銃弾で倒れられたということがあったものですから、正直なんてことしてくれるんだと」
秋乃さんの主張は、どう受け止めているのでしょうか。
新垣淑豊 県議会議員
「なぜ彼女がそのような行為に至ったのかということは、彼女のSNSやブログを見ているとわかります。私はまだ現場を見たことが無いので、現場を見に行く必要があると思っています。その上でないとその後の話は出来ないのかなと思っています」
現場を見た後でないと、米軍廃棄物の問題に言及することは出来ないと話す新垣県議。その現場で、実際に宮城さんが廃棄物を回収するところに同行しました。
チョウ類研究家 宮城秋乃さん
「あ、出てきていますね。1発、2発、もっとありますね。たくさん出てくる。きょうで終わらないはず。一番多い時で1日で580発出たことがあります。今は数分で8発です。
一緒に作業を行うのは、『沖縄の米軍基地を東京へ引き取る党』の代表で、宮城さんの活動をまとめた本を書いている、中村之菊さんです。
中村之菊さん
「何度も秋乃さんがウェブ上にアップしたりしているのを見ているんだけど、本当に落ちてるんだなみたいな、こんな簡単に。やっぱり協力したいですよね、何か出来るかなと思って」
この日、およそ2時間で見つかった空包は30発。空包は実弾ではないものの、火薬が使われているため、一般人が所持した場合火薬類取締法違反に問われる可能性があります。そのため、宮城さんたちは警察に通報しました。
中村之菊さん
「未使用の空包を30発見つけたんですけども」
警察
「不発弾みたいな弾丸を見つけたということですね」
中村之菊さん
「そうです」
およそ20分後、警察が現場に駆けつけました。空包を発見したという通報にどう対応するのか、その様子を撮影しようとすると…
警察
「ちょっとこれ、取材、受けないでいいって言われているので」
記者
「インタビューはしないですけど、秋乃さんの取材をさせてください」
警察
「だったらもう僕らは…、カメラが回っているなら目の前で対応するなと言われているので」
カメラの前では対応しないという警察官。一部始終を中村乃菊さんが撮影していました。
警察
「軍の返還した跡地については警察ではなくて防衛局が不発弾とかも担当しているということなので。防衛局を呼んでもらうか」
中村さん
「発見者としての義務を果たそうと思って、おまわりさんに連絡するしかないじゃないですか」
警察
「防衛局が処理することになっていて警察もノータッチなので。一応参考までに僕らからも通報するので」
宮城さん
「通報内容と通報者の連絡先を伝えてもらって、そこから連絡が来たこと一回も無いんですよ」
30発の空包を目の前にして、防衛局が担当なので手を出せないと話す警察官。その後、空包を置いて立ち去りました。
数日後、秋乃さんは書類送検された事案について取り調べを受けるため、那覇地検に向かっていました。
Q今から検察に入っていくのは嫌な気持ちではないですか
宮城さん
「いや、淡々と前に進んでいると思っています。動物たちは誰かが代わりに声を上げないと無視されてしまう存在なので。矢を受けてでも動物たちが今遭っている状況を訴えたいと思います」
Qやったことに対する後悔はありますか
宮城さん
「これが罪になることは分かっていてやっているので、当然私は裁かれても良いと思っているんですけど、立場の弱い市民だけを裁いて、本来であれば強く監視されるべき権力側が無法状態というのはおかしいと思います」
目的のために、空包を人に投げつけるという犯罪行為さえ正当化する宮城さん。自然を愛するひとりの女性を、何がここまで追い詰めたのか、宮城さんの訴えを重く受け止める必要があります。
世界自然遺産の中で空包を見つけても、警察と防衛局の間で放置されてしまう現状は、今後も続くのでしょうか。また、宮城さんの裁判の結果にも注目が集まります。