電子戦部隊新設へ 21年度末、奄美駐屯地に 防衛省概算要求
2020年10月2日南海日日新聞
防衛省は30日、2021年度予算の概算要求で、奄美大島に昨年3月開設した陸上自衛隊奄美駐屯地(奄美市名瀬大熊)に、有事に敵の電波利用などを無力化する「電子戦」の専門部隊を新設する関連経費を計上した。奄美を含む北海道から沖縄まで全国の陸自駐屯地など6カ所に設置する。また現在整備が行われている奄美駐屯地の覆道射場(射撃場)の外構整備や、陸自瀬戸内分屯地の火薬庫などの施設整備費として約49億円を計上した。
電子戦の専門部隊が新設されるのは奄美のほか、留萌(北海道)、朝霞(東京)、相浦(長崎)、那覇(沖縄)、知念(同)の各駐屯地や分屯地。朝霞に設けられる「電子作戦隊(仮称)」が部隊管理や隊員の訓練・教育などの本部機能を担う。
防衛省・自衛隊は宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域における能力の獲得、強化を進めており、奄美などへの電子戦部隊新設もその一環。今年度末、健軍駐屯地(熊本)にも80人規模の部隊を置く。
統合幕僚監部によると、奄美への電子戦部隊の新設時期は21年度末を予定。電波の収集・分析や、敵の通信電子活動を妨害する機能などを備えた、車載型ネットワーク電子戦システム(NEWS)を装備した部隊という。概算要求ではこの電子戦システム一式の取得費として88億円が計上された。
電子戦部隊の具体的な役割として平時は必要な電波の収集・分析を行い、有事には電磁波で敵の電波の利用を無力化して味方の火力発揮を支援、陸上での戦闘をはじめ各種戦闘を有利にする。
統幕監部は奄美駐屯地に新設する部隊の規模などは「検討中」としたが、数十人規模とみられており、現在の駐屯地の隊員約350人から「さらに少し増える」(関係者)見込み。
概算要求ではその他、陸自瀬戸内分屯地内の敷地造成工事に27億円、火薬庫新設に12億円を計上。同分屯地の体育館整備や、奄美駐屯地の覆道射場の外構工事などに計10億円を盛り込んだ。
また航空警戒監視に必要な基盤整備として、本土と奄美群島を含む沖縄間を結ぶ、航空警戒管制多重通信網(固定OH)の複ルート化を進めるため、器材取得と施設整備などにかかる経費約10億4000万円を計上。奄美大島の湯湾岳周辺(大和村名音)での固定OHの整備を進めており、工事は22年度に完了予定。