*今回のメルマガは当会事務局長の新垣邦雄さんからです。1月2日の羽田空港事故は5人の海保機の乗員が犠牲となった痛ましい事故でした。日航機の焼けた残骸の状況を見ると乗員、乗客の犠牲がなかったことが奇跡のようで、誘導を迅速に行った客室乗務員への賛辞など、当時の様子が明らかになってきました。しかし、この事故は偶発的に起きた事故として見過ごすことができるのでしょうか。これまで実際に那覇空港でも民間機と自衛隊機が接触した事故が起きており、他人事ではありません。今回の事故から、現在すすめられようとしている民間空港の「軍民共用」がもたらす危険性について、小西誠さんの指摘などをふまえ、本稿で鋭く指摘しています。ぜひお読みください。
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「軍民共用」で事故起きやすく 空港・港湾の軍事化許されない
*羽田空港事故と那覇空港自衛隊機事故* *
1月2日、羽田空港の日航機と海上保安庁航空機の衝突炎上事故が衝撃を与えました。空港は旅客機の安全な離発着が最優先されねばなりません。政府防衛省は全国の空港の軍事使用や整備に着手し、自衛隊が「軍民共用」する那覇空港も2つの滑走路をつなぐ連絡誘導路を現在の1本から2本に増やす計画です。昨年11月、奄美・徳之島空港、大分空港、岡山空港では市民の反対を押し切り、初の自衛隊戦闘機の離発着訓練が強行されました。沖縄でも昨年、久米島、石垣空港に米軍、自衛隊のオスプレイが初飛来しました。空港の軍事使用・訓練は平時でも民間機の安全な航行に危険を及ぼし、有事ともなれば米軍の使用も予想され、極めて危険な状況となることは火を見るより明らかです。
実際、那覇空港では自衛隊機と民間機の接触事故が起きています。1月4日、琉球新報社説。「1985年5月、着陸後に滑走路を走行していた全日空機と自衛隊機が接触する事故。乗客204人にけがはなかった。管制官が離陸許可を出していないにもかかわらず指示を誤認し、周囲の安全確認をしないまま滑走路上に自衛隊機を進めたことが事故の原因」。自衛隊機と海上保安庁機の違いはありますが、状況は羽田空港の事故に酷似しています。
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空港は過密、軍民共用で危険増す* *
軍事ジャーナリストの小西誠さんは羽田空港の事故について、筆者の問いに答えて「ただでさえ羽田空港は過密化している上に、海保のパイロットの未熟さや、能登救援のあせりがあったのではないか」と見ます。「最大の問題は、民間空港がどこも超過密になっているところへ、自衛隊・自衛隊機が割り込んできていること」と指摘、「那覇空港の場合、過密な上に空自がスクランブルを頻繁に行なって、民間飛行に割り込んでいるので、全体的に事故が起きやすくなっていると思う」との見方を示しました。
小西さんはさらに、「特定重要拠点空港による自衛隊機との軍民共用が始まれば、重大事故がますます起こりやすくなる」「この問題は、沖縄ー琉球列島ー九州に至る全ての地域の空港・港湾が軍事化され、市民が直接、軍事的危険にさらされる重大な問題。反対の声を上げるべきだ」と強く警鐘を鳴らしました。
* *誘導路を2本に増設* *
那覇空港は「2つの滑走路を結ぶ連絡誘導路を2つに増やす」計画です。那覇空港は国管理空港だけに沖縄県は否応ないのかもしれません。普段でも那覇空港は自衛隊機のスクランブル発進が多く、沖縄県、地元紙も危険性を指摘し、「軍民共用廃止」を主張してきました。それなのに「防衛強化」を理由に誘導路を増設するというのです。誘導路の増設は、自衛隊機の離発着の利便を図る軍事目的が明らかです。85年の事故や今回の羽田空港事故のように、管制官の指示を誤り自衛隊機が滑走路に侵入し旅客機と接触する事故のリスクは確実に高まります。
国際線も入るただでさえ過密な那覇空港で、「軍民共用」の危険性をさらに高める「誘導路増設」を受け入れるわけにはいきません。県経済を支えるのは国内外からの観光客です。危険な「軍民共用空港」のイメージは、台湾有事が現実味を帯びるに連れ、沖縄観光に深刻なダメージを与えかねません。沖縄県、玉城知事は防衛強化を目的とする「誘導路増設」に対し、県民や観光客の安全確保、観光産業に及ぼす悪影響の観点から反対を表明すべきです。何より県民は大きな反対の声を上げなければなりません。
一昨年末に閣議決定した安保3文書、昨年1月の日米2プラス(防衛・外務閣僚協議)では、台湾有事を抑止・対処する日米軍事(防衛)強化のため「日米施設の共同使用の拡大」を確認しています。自衛隊による那覇空港の有事対処訓練、誘導路など施設整備が強化されていく中で、米軍の「共同使用」も目論まれてはいないか。
* *自衛隊戦闘機の離発着訓練* *
「軍民共用」ではなかった徳之島、大分、岡山空港でも、県民による是非の議論もなく自衛隊戦闘機による離発着訓練が強行されたことは前記しました。自衛隊、米軍基地だけでなく、全国の民間空港で自衛隊機の訓練、その後には米軍機の共同使用も強行されていくのではないのか。懸念は深まります。民間港の軍事化も懸念されます。与那国では「与那国新港」が軍事「特定重要拠点整備」に急浮上しました。与那国町長は町議会にも諮らず、独断で政府に要請しました。予定地には国内、世界有数の優良な生物多様性に富む湿地帯があり、自然保全と与那国空港の滑走路延長も併せた「全島要塞化」の懸念の両面から反対の声が上がっています。
与那国町長の国への要請、石垣市長は地域振興を名目に「石垣空港の滑走路延長」を防衛省に要請しました。本来、沖縄予算要請の要となる沖縄県を頭越しにする政府要請です。「地域振興」に名を借りた「防衛強化」にならないか。板挟みになる沖縄県幹部の苦悩を地元2紙は報道しています。
* *沖縄県、予算要請見送る* *
昨年12月、地元2紙が注目すべき記事を載せました。「総合的な防衛体制の強化に向けた公共インフラ整備を巡り、予算や自衛隊の使用などで不明な点があるため、来年度予算での整備を要望できないと政府へ回答した」(12月16日沖縄タイムス)。その前段として「政府は、県内の空港や港湾を『特定重要拠点空港・港湾』として整備する方針を示している」。「政府は11月に2度、県に説明した」。政府は強く沖縄県に圧力をかけ、「県が来年度予算での整備を要請する場合、12月の早い時期に連絡するよう求められた」。しかし沖縄県は空港・港湾の予算要請を見合わせました。その結果、「政府は公共インフラ整備費の来年度予算計上を見送る見通し」ということです。
重要な点が2点あります。沖縄県が水面下での「予算要請」圧力に抗し、「予算要請を見送った」こと。その結果、現時点で、政府が県内の空港・港湾の「防衛強化インフラ整備の新年度予算計上を見送った」ことです。
その後の地元2紙報道によると、政府は諦めることなく「年度末までに」と固執し、沖縄県に対する「予算要請」の圧力を強め続けています。来年度予算に、是が非でも県内空港・港湾の「防衛強化インフラ」予算を組み込みたいという異常なまでの政府側の執念が伝わります。
* *空港・港湾の軍事化* *
政府はそこまでして沖縄の空港・港湾の軍事化を早急に進めたいということでしょう。県内にも配備する地対艦ミサイルの長射程化の「1年前倒し」も報道されました。中国に届く敵基地攻撃用の米トマホーク購入は、防衛省が進めてきた「日本版トマホーク」の開発が、「間に合わないから」という理由でした。「戦争に間に合わない」ということでしょう。中国との「戦争準備」にのめり込む政府の姿勢が浮き彫りです。
政府、防衛省の来年度予算編成のこの時期、沖縄と同様の交渉、攻めぎあいが全国各地で起きていると想像します。政府から台湾有事に向けた空港、港湾の防衛強化整備の予算要請圧力が都道府県、市町村自治体に強まっていることでしょう。地方振興に名を借りた「公共インフラの軍事化」、戦争をする国づくり、が急速に進みつつあります。
* *「県管理」の権限行使* *
沖縄県が政府の「予算要請」圧力をはねのけたことは意義の大きい英断です。「県管理」の空港、港湾に関する県の権限を実践、証明しました。この間、ノーモア沖縄戦の会と県の知事公室長(基地担当)との交渉でも、公室長は「県管理の空港、港湾は、政府が思うがままの軍事使用を認めない」と強調していました。市町村管理の港湾、公共インフラも首長が同様の権限を持っていることが重要です。
玉城デニー知事、県政には「空港、港湾を軍事利用させない」「軍事目的の整備は認めない」姿勢を貫いていただきたい。県内、全国の自治体首長も政府の圧力に屈せず、「軍事使用の公共インフラ整備は認められない」との姿勢を堅持してほしい。政府の軍事化圧力に地方首長が立ち向かうには、市民が反対の声を上げ、後押しすることが重要です。
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*新垣邦雄(当会事務局長)
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