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■2月21日 防衛省交渉報告―その1
「大軍拡と基地強化にNo!アクション2021」は22年度防衛予算について、防衛省交渉を行った。
事前提出した質問書に対して、防衛省はそれぞれの項目の担当者24人が交渉に出席した。多くは30代、40代がちらほら。あまりの人数の多さにちょっと驚いた。
「我が国を取り巻く安全保障環境の悪化」を枕詞のように繰り返すので、「昨年は10月に中国潜水艦の奄美大島の接続水域での潜没航行や、中露合同艦隊の日本列島一週などがあったが、これは10月2日3日の日米英、オランダ、カナダ、ニュージーランドなどの艦艇が沖縄西方海域で、大演習をやったことへの対抗措置と見るべきではないのか。こちらは、さらに軍事的対応をエスカレートさせていくのか」と質すと、苦笑いを浮かべるだけで、具体的な回答はなかった。いろいろとやり取りがあったが、質問項目すべてについて確認するには、交渉時間が足りなかった。
質問項目のほとんどについて、文書回答があった。その一部を紹介する。
写真2枚目は強襲揚陸艦アメリカの艦上でF-35B戦闘機に爆弾を搭載する乗組員。
●質問① 「いずも」と「かが」の空母への改修
「いずも」「かが」の改修工事に3年で295億円が計上されている。改修に必要な総額(貴省の見込み額を明らかにされたい。21年度予算に計上された203億円は、大半が「かが」の改修費と推測されるが、その契約金額を明らかにされたい。
「いずも」は2022年1月13日からジャパンマリンユナイテッド株式会社横浜事業所磯子工場に入っている。21年度予算での改修が行われているのであれば、その内容と契約金額を明らかにされたい。
■防衛省回答①
「いずも」型護衛艦の改修に必要な総額については、改修の細部について検討中であり、現時点では確定していません。
令和3年度予算に計上された203億円の契約金額につきましてき、令和4年1月末時点で約108億円です。
「いずも」が今般ジャパンマリンユナイテッド株式会社横浜事業所磯子工場に入っているのは、年次検査のためです。「いずも」型護衛艦の改修は、定期検査の機会を活用して段階的に実施していくこととしており、この期間において、改修の実施はありません。
注
年次検査―年1回の検査、定期検査―原則として5年に1度の検査
●質問② ステルス戦闘機F-35A,F-35Bについて
F35A、F35Bの取得費がもりこまれている。取得後の配備先、訓練予定地、どのような運用を考えているのか等、説明されたい。
■防衛省回答②
令和4年度予算案に取得経費を計上したF-35Aの配備先は航空自衛隊小松基地を、F-35Bの配備先は航空自衛隊新田原基地を予定しています
配備後の訓練については、F-35A、F-35Bともに、基本的には、これまで航空自衛隊が導入して来たほかの戦闘機と同様、配備先の飛行場を拠点として各種訓練を実施することになると考えています。
また、F-35Bについては、短距離離陸・垂直着陸が可能な戦闘機であることから、洋上において、いずも型護衛艦と連携した訓練や、馬毛島において模擬艦艇発着艦訓練を実施することも予定しています。
配備後のF-35AおよびF-35Bは防空の任務を担うことになります。
●質問③ 南西諸島(琉球弧)の自衛隊増強に関して
南西諸島(琉球弧)の自衛隊増強が続いている。最終的にどれだけのどのような部隊をどこに配備するつもりなのか。全体計画が確定しているのであれば、関連資料を開示されたい。見込まれる費用も明らかにされたい。
陸上自衛隊がミサイル部隊を配備された奄美大島、宮古島、さらに配備予定の石垣島を含む約40ヵ所が米海兵隊の攻撃用軍事拠点の候補地になっていると報じられている。候補予定地を開示するとともに、どこをどれだけの費用を投じるのか。見込み額を明らかにされたい。
■防衛省回答③
令和5年度以降の自衛隊の体制については、現在検討中であり、決まっておりません。
また、令和4年度には、石垣駐屯地(仮称)を開設し、普通科を中心とした警備部隊、中距離地対空誘導弾部隊及び地対艦誘導弾部隊等を配備する計画であり、その人員規模は約570名程度を想定しています。
●質問④ 馬毛島の施設整備について
空母艦載機の移駐等のための事業-馬毛島における滑走路、駐機場に係る施設整備等として、3,183億円が計上されている。馬毛島については現在、環境アセスメントの手続き中であり、その完了を待ち、アセスメントで指摘された事項を修正して、予算は編成されるべきものである。22年度予算に計上した理由を明らかにされたい。
2020年11月に貴省が作成し鹿児島県知事に提出した「ご説明資料」には、「いずも型護衛艦クラスの甲板及び艦橋を模擬した施設」とあるが、3,183億円にその費用が含まれているか。含まれている場合、その予算額を示されたい。
■防衛省回答④
厳しさを増す安全保障環境を踏まえれば、馬毛島における施設を早期に整備し、運用を開始する必要があります。そのため、令和4年度予算案に、滑走路や飛行場支援施設等の、環境影響評価書の公告後に着手する工事に必要な経費を計上しました。
F-35B模擬艦艇発着艦施設の経費は計上していません。
●質問⑤ 長距離ミサイルSM-6について
射程距離340kmのSM-6の購入費用として202億円が計上されている。運用実績がそれほどないと言われているSM-6を202億円も投じて購入する理由を明らかにされたい。
『世界の艦船』2022年1月号掲載の「海上自衛隊令和4年度業務計画案の概要」によれば、「5年国債で調達し、令和8年度に取得予定」となっている。これは事実か。事実であれば、「5年国債で調達」にした理由、「令和8年度に取得予定」とした理由を明らかにされたい。
■防衛省回答⑤
SM-6はイージス艦に搭載して運用する長距離対空ミサイルで、航空機や巡航ミサイルによる攻撃から防護を目的として導入するものです。
現在、イージス艦には対空ミサイルとしてSM-2を搭載し運用することとしていますが、我が国周辺国の軍事活動の活発化や航空戦力の近代化を踏まえれば、SM-2より射程が延伸するなど能力の向上したSM-6の配備による防空能力の向上は、重要であると考えています。
このため。令和4年度予算案として、「まや」型イージス艦用のSM-6取得経費として約202億円(初度費含む)を計上したところです。
(事実であると回答)SM-6の取得については、米国との調整等も踏まえ、5年国債での取得としております。(国債による購入は一般的にある、製造期間も考慮していると説明があった)
いずれにせよ、確実かつ早期に調達ができるよう、引き続き米国と協議を行ってまいります。
●質問⑥ 長距離対艦ミサイルLRASMの代替ミサイルについて
LRASMの代替としての12式地対艦誘導弾能力向上型(空発型―航空機発射型)の開発費用総額、並びにF-2に搭載するための改修費用の総額について、貴省の最終的な見込み額を明らかにされたい。
(LRASMはアメリカ海軍等が開発していて、最大射程800kmと言われる)
■防衛省回答⑥
12式地対艦誘導弾能力向上型(空発型)については、令和4年度予算案において、開発経費約154億円を計上しており、これを含めた現時点の総額としては、約534億円を見込んでおります。
また、12式地対艦誘導弾能力向上型(空発型)の搭載母機は、F-2能力向上機とする予定であり、F-2能力向上事業の中では、機体側にひつようとなる改修経費約4億円を計上しています。
なお、令和5年度以降に実施予定である量産改修に係る費用については、改修を実施す目機数により変動するため、現時点で総額をお答えすることは困難です。