2021年11月12日 05:00琉球新報
自衛隊は19日から始まる自衛隊統合演習の一環で、沖縄本島や先島の民間港、民間地などを使用した訓練を実施する。同演習で県内の民間港を使用するのは初めてだ。
離島県の沖縄にとって港湾や空港は住民の移動や物資の流通を支えるライフラインだ。軍事訓練を目的にした民間施設の使用は住民感情への配慮を欠くだけでなく、生活や経済を圧迫する。南西諸島での演習拡大が周辺国を刺激し、沖縄の民間施設が攻撃対象となる事態は何より避けなければいけない。民間地の訓練使用は中止すべきだ。
陸・海・空自衛隊が一体で展開する統合演習は、隔年で実施する大規模な訓練だ。
自衛隊は今回の演習で石垣港に艦船を寄港させ、与那国島の祖納港との間で人員や物資の輸送訓練を実施する。本部町の八重岳山頂付近では、電磁波を利用する「電子戦」を想定した訓練や通信訓練を展開するという。
艦船を寄港させる石垣島は陸自配備を巡り住民の賛否が割れている。陸自配備を先取りする港湾使用は、地域に分断を持ち込みかねない。
八重岳での訓練は、戦前の日本軍駐屯を想起させる。八重岳を中心に日本軍が軍事要塞(ようさい)化した結果、沖縄戦で本部半島は米軍の艦砲射撃の標的となった。
現在進められる自衛隊の「南西シフト」は、南西諸島の新たな要塞化である。
防衛省は「防衛の空白地帯」を埋めるとして、2016年3月に与那国島に陸自駐屯地と沿岸監視隊を創設、19年3月には宮古島と鹿児島県の奄美大島に駐屯地を開設した。今後も石垣島で整備中の陸自駐屯地を22年度に開設し、23年度をめどにうるま市の勝連分屯地に地対艦ミサイル部隊を配備する計画だ。(以下略)