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安保3文書の閣議決定について新聞のインタビューを受けた。安保法制の時は海外の現場の立場から批判したが、今回は沖縄の立場から批判をした。話したことは全部載らないので、ここに書いておきたい。
まず、国家安全保障戦略を読んで異様に感じるのは、
「Ⅵ 我が国が優先する戦略的なアプローチ
2 戦略的なアプローチとそれを構成する主な方策
2) 我が国の防衛体制の強化」
に3ページも費やしているのに、「 国民保護のための体制の強化」の項目は数行しかない。敵基地攻撃能力の保有を何としてでも盛り込みたいことの現れである。戦争をするための戦略であり国民を守るための戦略ではないということだ。
敵基地攻撃能力の行使は、「我が国と密接な関係にある他国」すなわちアメリカが攻撃されたときも適用される。攻撃の着手が認められた時に敵基地を「先制的」に叩くわけだが、どうやって「着手」の情報を得るのか。日本にそのような情報収集能力があるとは思えない。アメリカからの情報提供と指示を仰ぐことになる。国家安全保障戦略では、「我が国が反撃能力を保有することに伴い、弾道ミサイル等の対処と同様に、日米が協力して対処していくこととする」「我が国の反撃能力の行使を含む日米間の運用の調整、相互運用性の向上」を図る、とある。
すなわちアメリカの戦争の前線を担う国になってしまったということである。そして想定されている最前線の戦場は南西諸島、沖縄だ。日本は戦争を仕掛ける国になりかねないということでもある。
また、民間の港や空港を有事の際に活用するルールを作ると言う。沖縄では軍事演習で民間施設や空港が使われている。沖縄の自治体からの批判の声に対し、有識者会議では自治体の「意識改革」を促す意見が出された。国家総動員の思考の現れだ。
防衛費の倍増を前提にして戦略が作られているが、現実的にはもはや日本の国力を越える防衛費だと言わざるを得ない。防衛産業を育成し、そのための武器輸出の制限を取り払うとも言う。これは憲法と専守防衛の縛りをかなぐり捨てるどころか、国家総動員体制を
作るということに他ならない。
全てが無理筋の内容だ。無理筋の内容を強硬に推し進めようとするというのは必ず裏に理由がある。それは昨年の菅元首相とバイデン米大統領との首脳会談、今年の岸田首相とバイデンの首脳会談で約束してしまった、させられたことが前提にある。防衛費をGDP2%に拡大するシナリオありきの出来レースなのだ。
そもそも日本が直面する危機とか脅威とかいうが、実態は何なのか。8月の中国軍の大演習も北朝鮮の度重なるミサイル発射も、前段にアメリカの中国に対する政治的挑発や北朝鮮を想定した米韓軍事演習がある。リアクションとして示された示威という性質のものである。つまり、中国や北朝鮮が脅威を感じてこその反応である。今回の安保3文書は相手にさらなる脅威を与えるであろう。日本の後ろにアメリカがいることを知っているから、脅威は半端なものではないはずである。戦争は作られるものだ。決して私たちの側から戦争を作ってはいけない。
閣議決定はされてしまったが、膨大な防衛費を確保するためには増税をせざるを得ない。しかし軍拡のための増税に批判は大きい。来年の通常国会での予算員会が軍拡を止める最大の山となるはずである。