馬毛島基地断念 国に要求 八板西之表市長 話し合いに期待も
2021年2月14日沖縄タイムス
1月の鹿児島県西之表市長選で、政府が計画する同市・馬毛島への自衛隊基地建設反対を訴えて再選した八板俊輔市長に、今後の展望を聞いた。
-144票差での辛勝。基地賛否が拮抗(きっこう)した。
「厳しい選挙の中、再び信任していただいて心強い。『基地建設は決まっている以上、条件闘争で有利に』という話を多く聞いたが、国も建設は決定事項ではないと明言している。賛成派の一部は、前提条件が正しくない部分もあった」
「基地経済への期待があるが、基地に頼らない解決策を探る。1次産業を支える施策を講じ、本来の島の力を生かす」
-民主主義において少数意見の尊重も重要だ。
「当然だ。市民との対話集会で話を聞き、私の考えも伝えたい。早速まちづくりへの協力を(相手候補を支援した)商工会などに求めた。よりよい西之表のために団結したい」
-国が馬毛島の大半を国有化し、首長の権限は限定的だ。
「国有化されても、施設建設に伴う影響が甚大であれば、ノーと言う権利はあるはずだ。地元住民が不安がり、納得する説明もないまま、無理やり造る権限はあるのか」
-差し止めなどの法的手段を講じる考えは。
「今のところは考えていない。話し合いのキャッチボールを通じて国に理解してもらいたい。そのルートへの期待もまだ持っている」
-市長選を注視していた鹿児島県の塩田康一知事の賛否表明も焦点だ。
「私が再選された意味を受け取ってほしい。地元に寄り添うと言っておられるので(自身と)正反対になるとは思っていない」
-沖縄や離島が防衛政策の負担を抱える構図が繰り返されている。
「領土保全の観点では(西之表市がある)種子島を含めて離島に人が住んでいること自体が重要で、武器は持たずとも国防に寄与しているはずだ。負担を求められる島民の不安を国民に共有してもらいたい」
-馬毛島問題に2期目で道筋を付けられるか。
「ここはだめなんだと諦めてもらうための時間をもらった。国は真摯(しんし)に向き合ってほしい」
やいた・しゅんすけ 早大卒。1977年、朝日新聞社に入社。社会部記者や熊本総局長を経て退社。2017年市長選で初当選。67歳。