鹿児島県の西之表市・馬毛島への自衛隊基地整備と、アメリカ軍の訓練移転を巡り、先月30日の市議会で、島の市所有地を防衛省に売却する議案などが可決されました。
すでに馬毛島のほとんどが国有化される中、反対派が「最後のとりで」としていたのが島に残る市有地、馬毛島小中学校跡地です。そもそも八板俊輔市長は計画反対を掲げて市長に当選した一方で、今回の売却議案を提案。そして、可決されたわけですが、地元では市長の対応に疑問の声が上がっています。
3日朝、西之表市役所では反対派の市民グループが申し入れ書を提出しました。市民グループは売買契約の手続きをする前に再度、市民説明会を開くことを強く求めるとしています。
(申し立て書を提出した馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会 山内光典会長)
「市民が全く無視された状態で進められている。わずか1票の差、僅差で可決された。簡単に決める問題ではないと意識してほしい」
先月30日の市議会・最終本会議。焦点となったのは、馬毛島の小中学校跡地と西之表市街地の隊員宿舎予定地を売却する議案でしたが、特に学校跡地は、馬毛島の中で国有化されていない数少ない土地のひとつ。反対派の市議らは計画に対抗する「最後のとりで」としてきました。
(反対派市議)「(市長から)『その時点でとり得る最大限の対処をしている』と説明受けた。しかし(市有地売却は)誰にとっての幸福の追求になるのか」
(賛成派市議)「馬毛島小中学校は経年劣化により損傷が著しいなど、そのままの状態は非常に危険。現実的な対応をしている」
午後8時すぎまで続いた審議。そして採決の結果。市有地の売却案などは、賛成7・反対6で可決。防衛省の希望通りとなりました。
これに対し、反対派の市議らは、八板市長が計画反対を掲げて当選していたことなどから反発。市長の問責決議案を提出しましたが、賛成6、反対7で否決されました。
しかし、この問責決議案には、計画賛成派の議員1人も賛同。このため、反対派の6人と合わせ、賛成7、反対6で可決されるはずでしたが、問責決議案を提案した反対派の議員1人が間違えて「反対」のボタンを押したため、反対多数になったということです。
議会終了後、八板市長は計画を容認したわけではないと、あらためて強調しました。
(八板市長)「国の動きにあわせてより現実的な対応を考え最善の選択を考えている」
Q.計画容認、基地建設へ取り組み進めると聞こえるが?
(八板市長)「そうは言ってない。(計画反対の)公約は常に私の頭の中にある」
このやりとりにしびれを切らした反対派の市民は。
「辞表を出しなさい、もう。これ私の判断。辞めろ!裏切り者」
八板市長は、ふり返ることなく、市長室のほうへと去っていきました。
議会後、反対派の市議は。
(反対派 宇野裕未市議)「こんなにも拙速な審議はあり得るのか。もう一度国に差し戻してほしい」
また、計画賛成の一方で問責決議案に賛同した市議は。
(計画賛成派で問責決議案に賛成 杉為昭市議)「市長が同意・不同意を言わない中、市民への説明も十分でなかった」
八板市長の姿勢に反対派だけでなく賛成派の中からも疑問の声が上がる中、市民は。
(60代サービス業)「いくら反対しても(基地計画は)決まっているからしょうがない。ちゃんとはっきり説明をしてほしい」
(70代)「(市長は)言葉が少ないので悩んでいるのかなと、ちょっとかわいそう」
(60代自営業)「交付金をもらって自衛隊に協力しないのは身勝手すぎるので仕方がない。最初から仕方がないから賛成と言えばいい。どっちみち賛成するなら」
様々な意見で割れる中、馬毛島の基地整備に向けた動きは加速しつつあります。
馬毛島に残る市の道路を廃止する議案も同様に可決されました。これらの結果について、浜田防衛大臣は3日の会見で次のように話しています。
(浜田防衛大臣)
「西之表市市議会において可決されました。これは安定的に機能する馬毛島基地の実現に必要なものであり、西之表市が一体となって実現させてくださったことは大変ありがたいものであると受け止めております。
西之表市とより緊密に意思疎通を図りながら、施設整備を進めていきたいと考えております」
八板市長が計画の賛否を明確に示さない一方で、浜田防衛大臣は市有地の売却などについて「西之表市が一体となって実現させてくれた」との認識を示しました。
賛成派、反対派、市民の様々な受け止め方、そして、もやもやとした思いなどが渦巻く中、先週は西之表市など種子島の1市2町が米軍再編交付金の支給対象となるなど、基地整備に向けた様々な手続きや動きは前に進んでいます。