144票差、民意再び「馬毛島基地ノー」 西之表市長選 再選八板氏「信任された」
2021/02/01 10:00南日本新聞
西之表市馬毛島への米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)を含む自衛隊基地整備計画の受け入れ是非が最大の争点となった31日の市長選は、計画に反対の現職八板俊輔さん(67)が、容認の新人福井清信さん(71)との一騎打ちを144票差で制した。4年前に続き、「基地ノー」の民意が再び示された。八板さんは、市役所近くの公民館で支持者と喜び合い「住民投票のような形で信任された。国の計画にノーだ」と強調した。
午後10時すぎ、当選の報が入ると、緊張感に包まれた公民館が一気に沸いた。コロナ下を考慮し、集まったのは陣営幹部ら少人数。花束を贈られた八板さんは「厳しい戦いだった。責任を感じる」と表情を引き締めた。
街宣を中心に思いを届けた選挙戦。人口減にあえぐ市民が、基地の経済効果に期待する声も理解しつつ「基地建設は西之表、種子島にとって失うものの方が大きい」と訴えた。1次産業に磨きをかけ、移住者らを呼び込むなどして「基地経済に頼らない街づくり」の必要性も唱えた。
組織力で追い上げを図る相手陣営とは対照的に、同級生らが中心となった草の根で支持を広げた。政策協定を結んだ市民団体「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」も全面支援した。
計画を着々と進める国にいかに「反対」を訴えていくのか。八板さんは「国はなし崩しにいろんなことを進めている。真摯(しんし)な態度じゃない。一つ一つ整理し、きちんと対応するよう話し合う」と述べた。
■福井さん「容認の声忘れないで」
基地計画を容認した新人福井清信さん(71)は、あと一歩及ばなかった。西之表市東町の公民館に集まった支持者らに「私の力不足により、こういう結果になり、おわび申し上げる」と頭を下げた。
午後10時すぎ、姿を見せた福井さんは「負けは負け。申し訳ない気持ちでいっぱい」と肩を落とした。
馬毛島はほとんどが国有地化され、防衛省は海上ボーリング調査に着手するなど計画を着々と進める。市の将来のために「現実を受け入れ、国と交渉に着くことが必要」と訴えたが、基地反対の民意を翻すに至らなかった。
地元商工業や建設業の団体は「交付金や宿舎建設などの“恩恵”が他自治体に奪われる」と危機感から支援。組織戦を展開し追い上げたが及ばなかった。
144票という僅差での敗戦。福井さんは「心配なのは反対をして、どのように市の発展につなげていくか。容認する市民がいることも忘れないでほしい」と懸念を示した。