1兆円防衛利権馬毛島の「怪」<中>
5億円の塩漬け離島購入を官邸につないだキーマン激白
2021/01/23 06:00日刊ゲンダイDIGITAL
立石建設(立石勲社長=東京都)が、1995年に約5億円で買った馬毛島(鹿児島県西之表市)。子会社のタストン・エアポート社に所有権を移し長年、塩漬けになっていた離島だが、2019年12月、菅義偉官房長官(当時)は防衛省が160億円で購入すると突如発表。「スガ案件だ」「加藤勝信(現官房長官)の口利きだ」と取り沙汰された。実は売買合意までの約2年間、立石氏、防衛省、官邸をつないだ人物が存在した。自民党の衆院議員、原田義昭前環境大臣だ。
原田は2年前、九州の知人から紹介され、立石勲氏と議員会館の事務所で初めて会ったという。
「当時は立石さんと防衛省はお互いににらみ合って行き詰まっていました。それで防衛省と連絡をとれないかと相談されました。馬毛島のゴタゴタは知っていましたし、地政学的にとても重要なポイント。安全保障上、きちっとやらないといけないと思いました」
その後、勲氏の会社にも訪問し週一で相談する関係に。勲氏は借金まみれで民事裁判を複数抱え、馬毛島にも抵当権が。原田は法律事務所を経営する弁護士でもあり、法に明るかった。
「民事関係が複雑で大変でした。家族間の訴訟もあった。勲さんに何回聞いても説明能力がないんです」
■「米国務省がとても喜んだ」
原田は大臣の仕事の合間を縫い、勲氏の家族や民事関係者に会い、政府との調整をしていった。
「当初は防衛省と調整しましたが、すぐにこれは全体の問題と考え、菅さんと時々連絡しながら進めました。菅さんは和泉(洋人・首相補佐官)が長く(馬毛島を)担当しているからということで、事務的な面は和泉さんとやりとりしました」
防衛省は19年1月にはタストン社代表の勲氏の息子と160億円で売買仮契約を締結したが、勲氏は納得せず代表を自身に戻す。
「勲さんの評価額は450億円以上だから不満だった。島には採石場があり、石は辺野古の埋め立てに使えて、すごい価値があるとこだわっていました」
7月末には勲氏のもとに中国から4、5人の弁護士集団も買い付けにきたという。11月末に大きな借金の返済を控える勲氏は早く売りたいと原田氏に相談した。
「官邸も中国の動きは把握していました。和泉さんに200億円を超えないとだめと伝えた。しかし、いったん160億円という数字が出たら1円でも動かせないと。そこで160億円プラスアルファで立石氏に合意してもらいました。この説得が一番難しかった。馬毛島購入は防衛省よりも米国務省がとても喜んだことをその後に知りました」