1兆円防衛利権馬毛島の「怪」<下>
種子島にも自衛隊施設建設の蠢き…土地買い占めの噂が
2021/01/24 日刊ゲンダイDIGITAL
馬毛島(鹿児島県西之表市)への自衛隊基地建設と米軍の訓練移転により、数千億円に及ぶ基地経済の“恩恵”がもたらされると複数の地元西之表市民は話す。皮算用の根拠は不明だが、自衛隊施設建設工事、基地交付金に米軍再編交付金、漁業補償などだろう。
あとは地権者・立石勲氏の民事紛争が解決すれば、「防衛省はすぐにでも残りの約102億円を支払う」と、買収交渉に関わった原田義昭前環境大臣は話す。逆に言えば、防衛省はまだ完全に所有権を有していないわけだ。
しかし防衛省は、昨年3月時点で主要施設の設計図についてJVと約35億円で契約していたことが先月発覚。環境アセスメントも始まる前だった。鹿児島県の塩田康一知事も「地元への説明が不十分」と遺憾の意を表明。防衛省による説明不足に地元はいら立ちを見せている。
ところが話は既成事実のように進んでいる。今年に入り「馬毛島の工事はゼネコンはK、マリコンはGで決まり。そこから調整していく」と都内のブローカーが囁き始めた。そのような中、立石勲氏の資金繰りに関わってきた人物からにわかに信じられない話を聞いた。
「種子島に武器庫を造るという話が出回っている。種子島空港を自衛隊で使用できるようにし、近くの武器庫と地下でつなぐと。防衛省は難しいと言っているそうだが、土地の買い占めが起きていると。地元の藤田建設興業や東京のオリエンタル商事の原幸一社長が買ったと聞いた」
馬毛島基地に勤務する150人以上の自衛隊員は種子島の居住施設から定期船で通勤する計画。そこで中種子町議会は昨年10月に自衛隊誘致推進協議会を結成したが、種子島を基地化してしまうような計画は存在しない。与太話と思いつつも見過ごせない点も出てきた。
名前が出た藤田建設興業は西之表市の建設会社。社長の藤田護氏は鹿児島県建設業協会会長という要職に就く。31日投開票の西之表市長選で基地賛成派候補を支援する中心にいる。「馬毛島の工事は藤田さんが関わるだろう」と、馬毛島基地建設で藤田建設興業とのJVを持ちかけられたという建設会社関係者は話す。
一方のオリエンタル商事(東京都千代田区)の原社長は、東京電力の核廃棄物処分場誘致のために鹿児島で動いていたと報じられた人物。実は両社はきわめて密接な関係にあった。原氏は藤田建設興業の現取締役。また藤田建設興業の支店は以前、オリエンタル商事の本社と同住所にあり、護氏は過去に同社取締役だった。藤田建設興業の元社員によれば「会社が成長したのは東京にいる原氏の尽力による」と話す。
そこで両社に土地売買の真偽、役員・支店の関係性について質問した。しかし「社長が出張していて話ができていない」(藤田建設興業)、「原はすべてのマスコミ取材をお断りしています」(オリエンタル商事)と、いずれも期日までに回答を得られなかった。
立石勲氏の情熱で息を吹き返した島は、新たな共生者たちを誘っている。(おわり)